[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.25 早慶定期戦 早稲田大 4-0 慶應義塾大 国立]
早稲田大のゴールラッシュを締め括ったのは、「そんな意識してなかった」というDF林奏太朗(1年=鳥栖U-18)のバースデー弾だった。3-0で迎えた後半38分、カウンターからゴールネットを揺らして早慶戦のスコアを4-0とした。
1年生ながら早稲田大で主力を務める林はこの日が19歳の誕生日。「周りの人からは『バースデーゴールを待っている』という期待とかはあった」というが、本人の中ではあまり優先度は高くなかったようだ。というのも、林はCBとして先発出場。4月のリーグ戦で4失点を喫した相手を封じるべく試合に臨んでいた。
そうした中、後半途中にDF神橋良汰(4年=川崎F U-18/川崎F内定)が投入されたことに伴ってボランチへとポジションを移した。ただ一列前でプレーすることになったものの、セカンドボールへの反応などでチームに貢献しながら試合を締めることを意識しており、依然として守備に重きを置いていた。
ところが千載一遇のチャンスが訪れた。後半38分、FW駒沢直哉(4年=金沢U-18/横浜FC内定)がカウンターで一時は抜け出すも、相手の対応によりスピードを落としてボールをキープする。そこに林が「得点のチャンスがあるなと思って、思いっきり走った」と駆け上がったところ、絶好のパスが流れてきた。これには林も「優しくパスしてくれた」と駒沢に感謝。しっかりとモノにし、自ら祝砲を上げる形となった。
これは国立競技場という大舞台での得点でもあった。多くの選手が“国立初体験”となったが、林にとっては2回目の舞台だった。高校2年時の2022年、林はサガン鳥栖U-18の一員として国立開催の高円宮杯プレミアリーグファイナルを戦った。その試合では3-2で勝利して悲願のプレミア優勝を達成。ただ、林は早慶戦で前回の国立マッチとは異なる達成感を感じたという。
「1回目は(79分から)途中出場という形でピッチに立ったけれど、今年の早慶戦ではスタメンで90分あのピッチに立てたのは本当に自分の財産になると思う」
また「これくらいの規模の観客も初めて」と振り返るように、熱気が渦巻く試合を戦ったことも大きな経験になったはずだ。今回の早慶戦では10140人が来場。さらに早慶戦ならではのライバル意識やプライドがぶつかり合う独特の緊張感もあり、プロの試合と遜色ないほどの高い熱量がピッチ内外で随所に見られた。
1年生でスタメンに割って入り、19歳の初戦が伝統の一戦となる中でゴールを記録。年代別代表にもコンスタントに招集されており順調なステップを踏んでいるようにも思えるが、林は「継続することが本当に一流の選手」と襟を正す。19歳の1日目、「あまり下を見ずに自分が上に進んでいくんだということだけを考えて、チームを引っ張って、もう1回早慶戦に勝ったり全国優勝を果たしたりしていきたい」と決意を示した。
(取材・文 加藤直岐)
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Source: 大学高校サッカー
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