[9.16 NBチャンピオンシップU-16決勝 上越高 1-1(PK4-3)飯塚高 時之栖うさぎ島G]
上越が初出場初優勝! 強豪32校が優勝を争った“全国大会級のU-16大会”「ニューバランスチャンピオンシップ2024 U-16」(静岡・時之栖スポーツセンター)は16日に決勝を行い、前回大会優勝校の飯塚高(福岡)と上越高(新潟)が激突。上越が1-1(PK4-3)で勝ち、初出場初優勝を飾った。なお、大会MVPは上越のFW関根暖太が選出されている。
表彰式が終わると、新王者は「ア・イ・シ・テ・ル、上越!」の大合唱。2016年創部で、まだ夏冬の全国大会出場歴のない新潟の新興勢力が“全国大会級のU-16大会”の頂点に上り詰めた。
上越は5枠の中央予選を5位で突破して「ニューバランスチャンピオンシップU-16」初出場。今大会は、予選リーグBブロックで2位に食い込むと、決勝トーナメントで優勝2度の昌平高(埼玉)、日体大柏高(千葉)、そして大成高(東京)を破り、決勝進出を果たした。決勝はGK小栁来渡、右SB斎藤成湊、CB牧野隆太、CB小澤暁樹、左SB黒須蒼平、小和瀬晴音と早舩煌貴のダブルボランチ、右SH古川千尋、ゲーム主将の左SH山崎生直、そして古川巧実と猪田絆冬の2トップが先発した。
一方、飯塚は2019年、2023年大会の優勝校。今大会は予選リーグAブロックを2位突破し、決勝トーナメントでは市立船橋高(千葉)、東海大相模高(神奈川)、東山高(京都)に勝利し、3度目の優勝に王手をかけていた。決勝の先発はGK小田詩文、右SB河野剛志、CB加藤大和、CB石井颯人、左SB坂田智哉、東也聖と今泉瑛翔のダブルボランチ、右SH宮原脩斗、左SH三好悠雅、そして石黒聡と玉置大翔が前線でコンビを組んだ。
ファイナルは前半2分にスコアが動いた。飯塚は前線へロングボール。これを玉置が頭でそらすと、俊足FW石黒が一気に抜け出す。そのまま右足シュートをゴール左へ決め、先制点を叩き出した。飯塚は立ち上がりからシュート意識が高く、先制後も左SB坂田らがシュート。早めに前線へボールを入れ、石黒らが相手を裏返そうとする。
対する上越はともにトップチームで活動しているという183cmCB牧野とCB小澤が頭で跳ね返し、GK小栁が積極的な飛び出しを見せる。また、小和瀬らがセカンドボールを回収。早舩と古川千のワンツーで相手プレッシングの打開を試みたほか、古川巧のポストプレーから俊足MF猪田が左サイドを抜け出す。だが、飯塚はCB石井が冷静な対応。飯塚は石井と加藤の両CBが守りを引き締め、右SB河野も前への強さを見せていた。
そして、165cmと小柄なMF今泉が空中戦で強さを発揮するなど、中盤の攻防戦で一際存在感のある動きを見せていた。縦へ速いゲーム展開となる中、飯塚は競り合いで今泉、東らが奮闘。そして、宮原や三好がドリブルで仕掛け、クロスに玉置が飛び込むなど2点目を狙う。
上越は0-1の後半開始から関根を投入。準決勝の接触プレーで負傷交代していたチームリーダーは志願の出場だった。その上越は後半立ち上がりから出足の良い動き。さらにMF小熊結月、MF外山素生を投入して反撃を加速させる。飯塚もMF石井颯人を投入。球際の強度を維持し、安定感の高いGK小田や今泉を中心に隙をほとんど見せずに戦っていた。
だが、上越は後半14分、斎藤のロングスローで押し返すと、前線の古川巧が粘ってボールキープ。そして、ターンから前を向いて出したスルーパスに関根が走り込む。飛び出してきたGKをかわそうとしたところでわずかに接触し、PKの判定。このPKを山崎が右足で決め、1-1となった。
殊勲の関根は元々10分ほどの出場予定だったため、ここで交代。上越はFW金森晴也を送り出し、関根はチーム総出のハイタッチで迎えられていた。この後、飯塚はFW権藤昊とMF大原藍稀を同時投入。また、左SB高野真音、FW三日市凱、FW杉本凛琥、MF三日市証を相次いで投入したが、勢いづいた上越から次の1点を奪うことができない。
上越は相手のパワフルな攻撃を左SB黒須らが弾き返す。激しい競り合いが続いたが、高さを発揮し続けた牧野と小澤、斎藤、黒須の4バック、中盤、前線の選手も全く怯まない。2点目を許さず、試合最終盤にはCB木下祐玖と準決勝のPK戦のヒーロー、GK竹花凛空をピッチへ送り出した。
試合は1-1のまま3人制のPK戦へ突入。ともに1人目の上越・山崎、飯塚・今泉が成功。2人目、先攻・上越のシュートを飯塚GK小田がストップする。だが、飯塚は2人目のシュートが枠左へ。この後、上越は斎藤と小澤、飯塚も石井と大原が決め合う。迎えた5人目、上越は金森が決めると、直後にGK竹花が相手のシュートをストップ。この瞬間、上越の初優勝が決まった。
上越は新潟県南西部の上越市に位置している。新潟県内出身選手や、「自分たちの代で絶対全国出てやるっていう気持ちで来た」(竹花)という県外からの加入組が日々切磋琢磨。決勝で奮闘した猪田や小熊ら地元の上越市出身選手も含めて、全国で戦えることを証明した。
今大会は、かつて水戸などでプレーした藤川祐司監督も全日程帯同。今年のチームについて、「力で圧倒して勝つっていうよりも、結構しぶとく勝つ気はしますね」と説明する。今回のメンバーのほとんどがトップチームのプリンスリーグ北信越2部やセカンドチームの新潟県1部リーグを経験。指揮官はその経験が「大きいです」という。
準決勝の大成戦、決勝の飯塚戦はいずれもリードされる展開だったが、タフに戦ってPK戦勝利。日常から上級生と対戦することが多く、その経験が球際の強度などに表れていた。今回、全国各地の強豪校と7試合の真剣勝負を行い、勝ち抜いた経験も大きい。ただし、1年生チームを指導する下鳥佑稀コーチは「ここで満足しないこと」と指摘。また、藤川監督は「ここが始まり」と強調していた。
この言葉を受けて、関根は「自分たちの目標が3年生の選手権とインターハイなんで、まだ2年間あるんで、もっと成長して、戦いたいなと思います」ときっぱり。優勝したものの、クオリティも、強度も、体力も、まだまだレベルアップさせなければならない。2年後、「ニューバランスチャンピオンシップ2024 U-16」で優勝を争ったチームと同じステージに立ち、再び上回るため、「選手権優勝とインターハイ優勝」(山崎)という目標を達成するためにも努力。“全国大会級のU-16大会”で初出場初優勝を果たした上越の躍進は、まだ始まったばかりだ。
(取材・文 吉田太郎)
Source: 大学高校サッカー
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