「先輩たちの想い」も背負った後半戦はオレたちの時間だ!神戸U-18は神村学園にホームで競り勝って怒涛の6連勝で首位猛追!

ヴィッセル神戸U-18は神村学園高との接戦に競り勝ってリーグ戦6連勝!
[9.28 プレミアリーグWEST第16節 神戸U-18 2-1 神村学園高 いぶきの森球技場 Cグラウンド]

 決して圧倒して勝つような試合ばかりではない。巡ってきたチャンスを確実に生かして、訪れるピンチを確実に潰していく。地道に、1つずつ、目の前の勝利を手繰り寄せ、その繰り返しで積み重ねたのは6連勝。今の彼らは間違いなく、強い。

「ウチは2年連続2位で、今年こそはと言い続けてきた中で、また2位じゃダメなので、自分たちは勝ち続けるしかないですし、『次の試合とかではなくて、目の前の試合に懸けてやれ』と監督にも言われているので、みんなが集中して目の前の試合に臨んでいるのかなと思います」(ヴィッセル神戸U-18・亀田大河)

 シビアな接戦も終盤の決勝弾で粘り勝ち!28日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第16節で、ヴィッセル神戸U-18(兵庫)と神村学園高(鹿児島)が対峙した一戦は、1-1で迎えた後半40分にFW大西湊太(2年)が今季プレミア初ゴールを叩き出し、神戸U-18が2-1で勝利を収め、リーグ戦の連勝を6まで伸ばしている。

 どちらもポゼッションに力を発揮するチームだけあって、相手のボール保持時はしっかりブロックを作って対応するような、やや慎重な立ち上がりの中で、徐々に手数を繰り出したのはホームチーム。前半11分にMF瀬口大翔(2年)、DF寺岡佑真(2年)との連携から、3日前に天皇杯でトップチームデビューを飾ったばかりのMF濱崎健斗(2年)が左クロス。FW吉岡嵐(3年)のヘディングは神村学園GK清水怜(3年)にキャッチされたものの、サイドアタックから好機創出。28分にもMF里見汰福(中学3年)とのワンツーで右サイドを抜け出したFW森田皇翔(3年)がエリア内へ侵入。フィニッシュは神村学園DF新垣陽盛(3年)のブロックに遭うも、ゴールへの意欲を打ち出していく。

「前半は自分たちがチャレンジするところをあまり見せられなかったですね」とMF名和田我空(3年)も話した神村学園だったが、33分には流れの中からチャンス到来。MF岡本優翔(3年)のパスを名和田が落とし、MF松下永遠(3年)のシュートは神戸U-18GK亀田大河(3年)のセーブに阻まれるも好トライ。40分にも名和田の右FKから、DF鈴木悠仁(3年)が合わせたヘディングはここも亀田にキャッチされたが、少しずつ得点の香りを漂わせる。

 試合を動かしたのは「最後に仕留めるという力は誰にも負けないかなと思っています」と言い切るクリムゾンレッドのエース。45分。右サイドでDF西川亜郁(2年)が粘って残したボールから、濱崎のシュートはいったんDFにブロックされるも、再び濱崎が流し込んだ軌道を、吉岡は頭でゴールネットへ流し込む。「自分は監督から『常に良いボールが来るから、そこのチャンスは逃すな』と言われています」という7番は、これで圧巻の4戦連発。神戸U-18が1点をリードして、最初の45分間は終了した。

「サイドの攻防の人数合わせのところがちょっとうまく行っていなかったから、『後ろを“4”にするなら“4”にしていい』という話をしました。“5”にするとうまく行かないところがあったから、『“4”にしてもいいし、“3”でマンツ―気味にしてもいいぞ』と」。ハーフタイムに神村学園を率いる有村圭一郎監督は選手たちにこう話したという。ピッチの中で状況を感じて、自分たちで判断していく。守備面を整理するアイデアを得たアウェイチームは、後半に入るとサイドアタックから攻勢を強めていく。

 21分には決定機。名和田を起点にMF福島和毅(2年)が右へ展開。FW金城蓮央(3年)のグラウンダークロスに、岡本のシュートは枠を越えたものの、完璧に崩した形からフィニッシュまで。25分にも名和田が右へ流し、ここも金城が上げたクロスに、岡本のヘディングは亀田の正面を突くも、右は金城、左はMF大成健人(3年)と相手を剥がせるサイドアタッカーを推進力に、ジワジワと相手ゴールへ迫っていく。

 すると、「あの点は本当に完璧でしたね」と名和田も笑顔で振り返った同点弾は28分。松下が中盤を力強く駆け上がり、右へ流れたボールを金城はパーフェクトなクロス。走り込んだ岡本のこれまたパーフェクトなヘディングは、ゴール左スミへ弾み込む。チャンスを生み出し続けていた“金城-岡本ライン”が、まさに3度目の正直で完全開通。1-1。スコアは振り出しに引き戻される。

同点弾を叩き込んだ神村学園MF岡本優翔

 時間帯を考えても、次のゴールは間違いなく勝敗を左右する1点。31分は神村学園に決定機。名和田の左CKから鈴木が枠に収めたヘディングは亀田が弾き出し、こぼれに反応した新垣のヘディングも亀田が続けてビッグセーブ。32分は神戸U-18。FW渡辺隼斗(2年)のパスから濱崎が完全に抜け出すも、こちらは清水が抜群の飛び出しで超ビッグセーブ。両守護神が意地の好守で得点を許さない。

 試合を決めたのは「スタメンではなくて悔しい想いはありましたけど、途中で出るからには結果を残そうと思っていました」という途中出場の2年生アタッカー。40分。渡辺のポストプレーから瀬口が左で時間を作り、開いた濱崎が丁寧なクロス。ファーに潜った大西のボレーは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれる。

 ここ2試合はスタメンを外れていたものの、「自分にできることを見つめ直して、自分の特徴をもっと磨いてというのは、意識して練習してきました」という23番の今シーズンのプレミア初ゴールは、そのままこの試合の決勝点に。「失点のダメージは大きかったですけど、途中から出た選手が活躍してくれて、最後に何とか点が獲れて良かったかなと思いますし、チームにとっても非常に大きな1点だったなと思っています」(安部雄大監督)。勝ち切る逞しさをホームで発揮した神戸U-18が、これで6連勝を達成。首位追走に向けて大きな勝ち点3をもぎ取った。

「何なんですかね。本当に今年は前期から行くつもりで、チームとしても圧倒するというテーマを持って、今の大津さんのようなスタートダッシュをしたかったんですけどね」と苦笑いするのは安部監督。昨シーズンと一昨シーズンの神戸U-18は後半戦に入ってから一気に調子を上げて、勝点を積み重ねていったものの、優勝にはわずかに届かず2位というシーズンが続いている。

 今季は春先から指揮官も選手たちも“スタートダッシュ”の意識を強調していたものの、やはり前半戦はなかなか勝利を引き寄せ切れなかったにもかかわらず、ここに来て6連勝を達成するなど、去年と同じような流れを辿っているのは興味深い。

 この日も好守を連発した亀田が「たぶん夏のクラブユースで毎年勝てていなくて、そのあとの焦りというか、『もっと夏でやらなあかんな』というので、みんな成長しているのかなと思います」と話したように、クラブユース選手権ではわずか1点の得失点差でグループステージ突破を逃しているだけに、「夏の経験から『獲れるべきところで獲る』『最後まで諦めない』というところを意識しているのは、この連勝の要因の1つかなと思います」とは安部監督。真夏の群馬で味わった悔しさは、彼らの新たなモチベーションとして、着実にチームを前へ進めてくれているようだ。

 もちろん前半戦から好調をキープした方がいいけれど、後半戦に入って巻き返すこともそう簡単なことではない。その流れに対して、指揮官は継承されている“先輩たちの功績”を口にする。

「前期は今日みたいなゲームを引き分けにしてしまったり、引き分けで終われるようなゲームで負けてしまったりとか、未熟さはあったのかなと。そこから決してサッカー的に変化したわけではないので、今はその辺を我慢するところだったり、最後に獲りに行くところだったりというところで、昨年と一昨年の先輩たちがそういうメンタリティを引き継いで、残していってくれたのかなと思いますね」(安部監督)。あと一歩でタイトルに届かなかった“先輩たち”の想いは、明確に今年の選手たちにも引き継がれている。

 第16節終了時点では、1試合消化が少ない状況で首位の大津との勝点差は7。大前提として自分たちが勝点を積み上げていくほかに、その差を詰め、引っ繰り返す術はない。吉岡がみんなの気持ちを代弁する。「自分たちは目の前の試合を勝つだけですし、周りのことは気にせずに勝点3を獲るだけだと思います。とにかく悔いがないようにやることだけですね」。

 後半戦はオレたちの時間。わずかに見え始めた首位の背中。プレミアリーグの中でも恒例になりつつある、夏を経て一気にアクセルを踏み込むような若きクリムゾンレッドの逆襲劇は、今シーズンも対峙する多くのチームに、言いようのない脅威を突き付けていく。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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