見え始めてきた頂の景色にも慢心の兆しは微塵もなし。横浜FCユースは川崎F U-18との『神奈川ダービー』を制してプレミアEAST首位を堂々快走中!

横浜FCユースは「神奈川ダービー」もきっちり1点差で勝ち切ってリーグ首位を快走中!
[10.6 プレミアリーグEAST第17節 横浜FCユース 2-1 川崎F U-18 横浜FC・LEOCトレーニングセンター]

 首位に立っているとか、勝点差が離れたとか、そういうことにはそもそもフォーカスしていない。まず考えるべきは、日頃からみんなで向き合うトレーニングで得られる、個人とグループの成長。その先に望んだ結果が付いてくると信じて、今日もやるべきことを過不足なく積み上げていく。

「選手たちもスタッフも、目の前の試合に一喜一憂しないで、練習からやっていることを積み上げていけていると思いますし、それで結果が出ていることが『自分たちは間違っていないんだな』というところで、自信になっているんじゃないかなと思います」(横浜FCユース・和田拓三監督)

 安定したゲーム運びで勝ち切って、堂々の首位快走!6日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第17節で、横浜FCユース(神奈川)と川崎フロンターレU-18(神奈川)が激突した『神奈川ダービー』は、MF管野心人(2年)とDF佃颯太(2年)のゴールで2点を先行した横浜FCユースが、川崎F U-18の反撃をFW恩田裕太郎(2年)の1点に抑え、2-1で逃げ切りに成功。きっちり勝点3を手繰り寄せている。

「練習からフロンターレ戦に向けて、徹底して守備の行き方は作戦を立てていたので、最初はロングボールという形になりましたね」と横浜FCユースのキャプテンを務めるDF小漉康太(3年)が話したように、立ち上がりからややお互いに長いボールが増えていく中で、先にチャンスを作ったのはアウェイチーム。前半4分。左サイドで得たCKをショートで始め、DF柴田翔太郎(3年)のクロスにDF山川陽平(1年)がドンピシャヘッド。軌道は枠の右へ逸れたものの、プレミア初スタメンとなった1年生ボランチが惜しいシーンに顔を出す。

 15分も川崎F U-18にチャンス。左へ振り分けた山川のパスから、MF児玉昌太郎(3年)を経由して、上がってきたDF関德晴(2年)の枠内シュートは横浜FCユースGK大亀司(2年)がキャッチ。22分にも柴田、MF矢越幹都(3年)とボールを繋ぎ、MF八田秀斗(3年)の右クロスに恩田が合わせたヘディングはゴール左へ外れるも、得点の香りを漂わせる。

 ただ、横浜FCユースは慌てない。「前半は相手に持たれる時間帯が多かったですけど、自分たちにもチャンスはあるなと感じていました」と話したのは佃。25分を過ぎると中盤でMF朝見友樹(3年)と管野がボールを落ち着かせ、徐々に左サイドから攻撃の芽も。相手のアタックもDF秦樹(2年)とDF家田唯白(2年)のセンターバックコンビを中心に、1つずつ丁寧に凌いでいく。

 すると、先制点を記録したのはホームチーム。45+2分。右サイドから佃が「良いところに落ちて、スピード感も完璧で、一番のキックができたかなと思います」というCKを蹴り込むと、密集の中で巧みにポジションを取った管野のヘディングがゴールネットへ吸い込まれる。「前半の最後のワンプレーで決められたというのは、一安心できて良かったですね」(小漉)。2年生ボランチはこれがプレミア初ゴール。横浜FCユースが1点をリードして、最初の45分間は終了した。

横浜FCユースの2年生ボランチ、管野心人はプレミア初ゴール!

 追い掛ける展開となった川崎F U-18はハーフタイムに2枚代え。前線にFW香取武(3年)を、右サイドハーフにMF平塚隼人(2年)を投入し、同点と逆転を狙うための攻撃姿勢を鮮明に打ち出す。

 ところが、次の1点を挙げたのもホームチーム。後半18分。相手陣内で果敢なタックルからボールを奪った佃は、いったんMF柴草哲晟(2年)に預け、そのまま前へダッシュ。リターンを受けてペナルティエリアへ潜ると、「1回目のキックフェイントの時に左足で打とうと思ったんですけど、もう1回キックフェイントを入れたら自分の前にいた2人のディフェンダーは完全に剥がせるなとわかっていた」と2度のキックフェイントでマーカーを外し、冷静なシュートをゴール右スミへ流し込む。左サイドバックの完璧な一撃。2-0。点差が開く。

 傾いたゲームリズム。20分。左サイドを駆け上がった佃のクロスから、FW庄司啓太郎(3年)のヘディングは枠を捉えるも、川崎F U-18GK松澤成音(2年)がファインセーブで応酬。29分。庄司のスルーパスからMF岩崎亮佑(2年)が放ったシュートは、ここも松澤が好セーブ。さらに35分。右サイドを巧みに抜け出した庄司のクロスに、フリーで待っていたMF鈴木晴弥(1年)のシュートは、しかしヒットせず。「チャンスはあったんですけど、3点目のところがどうしても獲り切れなかったですね」(和田監督)。横浜FCユースは決定機を創出しながら、試合を決める次の1点を引き寄せ切れない。

 意地の反撃弾は川崎F U-18の17番を背負うストライカー。36分。DF藤田明日翔(1年)のクサビを受け、途中出場のMF齊名優太(3年)は左へ展開。縦に仕掛けた児玉のクロスがファーに届くと、恩田が丁寧なボレーで叩いたボールは左スミのゴールネットへ到達する。2-1。まだまだ勝敗の行方はわからない。

チームトップの7ゴール目を叩き出した川崎F U-18の2年生ストライカー、恩田裕太郎

 39分。川崎F U-18に絶好の同点機がやってくる。左サイドから柴田がCKを蹴ると、こぼれ球は齊名の足元へ。確実に打ったシュートはゴール右スミへ向かうも、カバーに入った鈴木が懸命のヘディングでボールをクロスバーの上へ弾き出す。決定的なチャンスを生かせなかった1年生アタッカーが、決定的なピンチを回避する大仕事でチームを救ってみせる。

「1点で追い付かれる状況だったので、とにかく失点はなしということを考えていましたけど、『いつ終わるんだ……と思っていました」(秦)。5分間のアディショナルタイムが過ぎ去ると、タイムアップのホイッスルが鳴り響く。飛び交う水色の咆哮。繰り出される水色のガッツポーズ。

「最後のところでああいう形で失点もしてしまいましたし、流れも持っていかれてしまったところは課題ですけど、最後まで粘り強く戦って勝ち切れたというところは、今選手たちが自信を持ってやっているところが出たのかなと。次に繋げられるゲームはできたかなと思います」(和田監督)。横浜FCユースが今季8度目の1点差勝利で、首位をがっちり固める大きな白星を掴み取る結果となった。

 前半戦を首位で折り返した横浜FCユースは、夏の中断を挟んでも安定した戦いを続けてきた。後半戦もここまでの6試合で4勝1分け1敗と着実に勝点を積み重ね、2位の鹿島アントラーズユースとのポイント差は6。独走状態に入りつつあると言っても差し支えないような好調をキープしている。

 それでも、チームにはうわついた雰囲気なんて微塵も感じられない。「勝点はあくまで数字であって、選手たちがどのくらい成長しているのかというところが、あくまでも自分が目指すところなので、結果が出ていることは選手たちの自信になりますし、僕にとっても自信にはなりますけど、そこだけに左右されないようにはしていきたいなと思っていますね」(和田監督)。この実直な指揮官に率いられているのだから、自ずと選手たちにもそのマインドが浸透していることは、容易に想像が付く。

「1位にいることは凄く嬉しいですけど、目の前の試合で何ができるかとか、まず勝ちを獲りに行くことを考えているので、そんなに1位だから何かが変わるというわけではないと思いますし、みんなも目の前の試合で力を出し切ることや、やり切ることを考えていると思います」(秦)「和田さんにも『自分たちは1位だと思わなくていい』と言われていて、自分たちはチャレンジャーとしてやっていくことが勝利への鍵になってくると思うので、これからもしっかりと天狗にならずに、みんなで練習から頑張っていけたらなと思います」(小漉)

 2013年にスクールコーチとして横浜FCで指導者の道を歩み出した和田監督は、2018年から昨年までジュニアユースを指導していたため、今季からユースの監督に就任したとはいえ、大半の選手のキャラクターは把握済みだ。

「実際には見ていた選手がほとんどなので、自分自身にはあまりユース1年目という感覚はなくて、ジュニアユースの頃からもうずっと積み上げてきたものがあって、そのステージが違うというだけなので、横浜FCのアカデミー全体として選手を見てきたところは強みですよね」。

「ただ、実際はもっと勝点を積む予定でしたし、もちろん強い相手ばかりなので、結果が出るかどうかはわからないところもありましたけど、目標設定の中ではまだまだ足りないなという感覚なので、現状では危機感しかないというか、自分の中では1つずつこなしていっている感じです」。

「選手には常に『順位は関係ない』と言っています。もちろん優勝は目標にはしていますけど、ずっとそこはシーズンの当初から話をしてきたので、それが左右されることはないのかなと。でも、自分たちが1試合1試合積み上げたものがあるから、そういう結果が出てきているのだという話はしている中で、まだまだ試合数はありますし、これからも選手たちが強い相手に何ができるのかにこだわってやっていけたらいいのかなと思います」。

 アカデミーとして積み重ねてきたものが、少しずつ芽を出し、少しずつ蕾を付け、ようやく綺麗な花を咲かせようとしているが、スタッフも選手もとにかく地に足がついている。そろそろ見えてきた頂の景色。それでもその場所へとたどり着くまで、横浜FCユースがみんなで締め直していく手綱が緩むことは、決してなさそうだ。

選手たちと勝利のハイタッチを交わす和田拓三監督

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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