スケール感漂う若き青赤の1年生右サイドバック。FC東京U-18DF田中遥大が「隣にいるスーパーな先輩」から学んでいること

FC東京U-18の右サイドバックを任されているDF田中遥大(1年=FC東京U-15深川出身)
[10.13 プレミアリーグEAST第18節 FC東京U-18 0-2 鹿島ユース 東京ガス武蔵野苑多目的グランド]

 この青赤のユニフォームを纏って、このハイレベルなリーグで試合経験を重ねていくことで、自分自身が成長していることは確実に実感している。その先にある年代別代表の活動でも、日常から体感している基準をしっかり携えながら、もっと絶対的な存在になってやる。

「ここで試合に出させてもらっているからこそ、代表に行けているところもあるので、このチームには感謝したいですし、何回か代表に呼ばれたことはあるんですけど、結果の部分はまだ残せていないので、今回も選ばれたからには絶対に結果を残してきたいと思います」。

 FC東京U-18(東京)の右サイドバックを任されている、進境著しい16歳の実力者。DF田中遥大(1年=FC東京U-15深川出身)は頼れるチームメイトやライバルたちと切磋琢磨してきた自信を胸に、アジアの戦いへ堂々と挑む準備を整えている。

 
 リーグ2位に付ける難敵の鹿島アントラーズユース(茨城)とホームで対峙するプレミアリーグEAST第18節。FC東京U-18を率いる佐藤由紀彦監督は、8試合続けて田中を右サイドバックのスタメンとして、勝負のピッチに送り込む。

 チームの進化は確実に感じている。「後期からはより攻撃的に行こうという形で、前期に比べれば前に行く形もかなり増えていますし、得点に繋がるチャンスも作れている部分はあるので、そこをもっと増やしていくことが大事だなと思います」。もちろんやられない守備は大前提。その上で積極的にチャンスへ関わることを自分に課し、キックオフの笛を聞く。

 FC東京U-18は悪くないリズムで立ち上がると、徐々に攻撃の回数も増加。田中も右サイドで縦関係のコンビを組むMF菅原悠太(2年)と連携のタイミングを図りながら、何回も前線まで駆け上がり、高い攻撃への意欲を打ち出していく。

 ただ、「自分の仕事はクロスを上げて、得点に関わることだと思っているんですけど、クロスを上げ切れるところはあっても、質のところは良くなかったなと思います」と田中も振り返ったように、チャンスは創出しても決め切れない展開に。24分にMF北原槙(中学3年)が枠へ収めたシュートは相手GKの好守に遭い、30分に菅原が放ったフィニッシュはDFをかすめて左ポスト直撃。先制までには至らない。

 失点を許したのは2回のセットプレーだった。後半33分と45+1分。ともにCKの混戦からボールをゴールへ押し込まれる。「今週も自分たちのサッカーをするために、相手の弱いところをチームとして共有しながら練習はできていたんですけど、最後の勝負の部分で持っていかれたという感じです。今はなかなか勝てないことが多くて、際のところが課題なんですけど、そこも今日は相手に持っていかれたなと思います」(田中)。

 ファイナルスコアは0-2。上位に位置する鹿島ユースを相手に、今季2度目の連敗を突き付けられたチームの中で、1年生ながら主力として試合出場を重ねている田中の、心から悔しそうな表情が印象的だった。

 U-15世代から年代別代表も経験するなど、小さくない期待を集めてU-15深川から昇格してきたU-18の1年目。田中はアウェイで戦った第7節の尚志高戦でプレミアデビューをスタメンで飾ると、フル出場で勝利に貢献。第10節以降は継続して先発の座を確保している。

 その凄みを実感しているのは、すぐ隣でプレーしている同じチームの“先輩”だ。「自分の周りには良い選手がたくさんいるんですけど、隣にいる永野修都選手は本当に凄いです。もう全部球際は持ってきますし、自分が守備をしていたら、本当に取れるかなと思うギリギリのところで取れないパスを出してきますし、競り合いも強いですし、本当にスーパーです」。

 来季のトップ昇格も内定しているDF永野修都(3年)の一挙手一投足を間近で見つめることで、自分の中に確かな気付きがあったという。「“こだわるところ”の大事さを学んでいます。球際もそうですし、絶対諦めないというか、常に戦う人なので、そういうところは本当に尊敬する部分です。その上でもちろん技術も高くて戦えるというところが一番凄いところだと思うので、自分も技術は付けていきたいですけど、それだけに満足しないで、個で戦える強い選手になりたいなと思います」。プロになる選手の基準へ直に触れ、その見据える目線は上がり続けている。

 今節が終わると、『AFC U17アジアカップ予選』を戦うU-16日本代表に選出された田中は、国内合宿を経てカタールの地へと渡る。前述したように中学3年時に初めてU-15日本代表の招集を受けてから、コンスタントに日の丸を背負ってきているが、その背景にある周囲の協力にも、この男の目はしっかりと向いている。

「前までだったら代表なんてことは考えていなかった時期もありましたけど、中学生の頃からチャンスをもらえて、本当に恵まれていることは感じていますし、周りの人も本当に自分のためにいろいろやってくれる部分はあるので、周りの人のためにも、自分のためにも、全力で戦ってきたいと思います」。多くの人への感謝を抱き、世界へと続いている第一関門の扉を、力強くこじ開けてみせる。

 代表活動が終われば、リーグ戦も最終盤に突入していく。さらなるステップアップも念頭に置きつつ、今シーズンの残された2か月あまりの時間も、16歳は無駄にするつもりなんて微塵もない。

「このチームには永野修都選手や後藤亘選手、山口太陽選手みたいにこれからプロになる人たちもいて、そういう人たちはアジアでも優勝してきているメンバーなので、見習う部分がたくさんありますし、その中でそういう人たちを相手にしても、自分ができないことに向き合うことはもちろんですけど、できるところも突き詰めて、そこももっと伸ばしていきたいですね」。

 今より遥か遠くまで、もっと大きく羽ばたくためのイメージは、十分に持ち合わせている。自身の軸を強い向上心で貫く、若き青赤の右サイドバック。田中遥大がしなやかに描き続けていく成長曲線が、果たしてどこまで伸びていくのか、今から非常に楽しみだ。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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