ベルギー挑戦で芽生えたゴールへの渇望…湘南22歳MF田中聡が首位破る劇的決勝弾!! “リスク管理”求め続けたDFリーダーも太鼓判「僕的にはJリーグトップの選手」

MF田中聡とDFキム・ミンテ
[10.19 J1第34節 湘南 2-1 広島 レモンS]

 首位のサンフレッチェ広島を相手に1-1の接戦で迎えた後半アディショナルタイム、攻める姿勢を貫いた湘南ベルマーレが劇的な逆転ゴールで勝ち点3を手にした。最後に決めたのはMF田中聡。2022年夏から1年間にわたったベルギー挑戦を経て「もっと点を取りたい」と公言し続けてきた22歳の若武者が、J1残留を大きく近づける値千金弾を奪った。

 1-1の後半アディショナルタイム2分、左サイドをMF畑大雅が抜け出すと、田中はアンカーの位置から果敢にペナルティエリア際までもぐり込んだ。普段はDFキム・ミンテからリスク管理への意識をを口酸っぱく言われているというが、ここは勝負の時。「どんどんペナ内に入っていけばシュートチャンスもあるので」と迷いはなかった。

 畑から折り返しのボールを受けた田中は、まずは完璧なファーストタッチでペナルティエリア左へ。最後はリベロのDF中野就斗が素早く寄せてきたが、冷静な判断でもう一歩持ち出して見事にいなし、「最近シュート練習もしていたので」という自慢の左足で豪快にニアポスト脇上へと突き刺した。

 この日は攻守の切り替えが素早い広島に対し、「行く時と行かない時という状況判断がまだ。カウンターを受けるシーンがあったので改善しないといけない」とリスク管理の課題も認識していたという田中。しかし、結果的には果敢な姿勢で勝利に導き、「行けると思った時には行こうと思っているし、今日はそれがうまくハマった」とホッとした表情を見せた。

 田中にとって、このゴールは近年の成長を示すものでもあった。2019年にU-17日本代表の一員としてU-17W杯に出場するなど、守備的MFとしてキャリアを切り拓いてきた田中だが、2022-23シーズンに過ごしたベルギー・コルトレイクでの日々を経て、湘南復帰後は得点にも注力。ことあるごとに「点を取れる選手になりたい」と口にしてきた。

「海外でも点が取れるボランチは上にステップアップしているし、自分も点やアシストでチームを勝たせるプレーをしたい。行く前は少なかったので、帰ってきてからはよりやっていきたいと思っている」。昨季はJ1リーグ戦ノーゴールに終わっていたが、今季は4点目。先制弾が2つ、同点弾が1つ、そしてこの日の決勝弾と大事な場面でのゴールも際立っており、積み重ねの成果が出ている格好だ。

 そんな後輩の活躍には、常に守備のリスク管理の要求を続けてきたキム・ミンテも太鼓判を押す。

「(シュートは)びっくりした。トントンとタイミングをずらして、すごく高い技術だと思う。海外に行っちゃうくらい、日本代表になれるくらいの選手だと思うので楽しみです」

 守備面の要求は「聡は僕的にはJリーグトップの選手。聡がいてくれれば、僕からしたらすごく安定するし、安心感を与えてくれる。常に僕の前にいてほしい」という高い信頼の表れだが、この日は果敢な攻撃参加にも「でも聡は最近ゴールも取れているし、いいポジションでボールも受けてくれているから」と目を細めていた。

 田中自身もそんな頼れるDFリーダーに支えられ、ゴール以外でもパフォーマンスを高めていく構えだ。「内容ではパスミスもあったし、最後に点を取れたのは良かったけど、試合を通して見ればもっと修正しないといけないところもあった。嬉しいけど課題も出たゲームだった」。この日は前半の守備のスライドに反省を残したといい、改善を重ねた後半を経ても「できていたところもあったけど、まだまだなところもあった」と向上心をにじませていた。

 そんな田中の活躍によりチームは3連勝を果たし、残留争いから大きく抜け出す13位に浮上。だが、まだまだ油断はなさそうだ。「意外とみんな冷静で、緊張感はもちろんあるけど、切羽詰まっている感じはしない。結果が出てきて自信も余裕も出てきているのでそこはいい流れだと思う」。現状のチーム状況には手応えを重ねつつも、大事なのは残り4試合。田中は「3連勝という形にはなったけど、先を見過ぎず、次のFC東京戦に向けてまた準備していくだけ」と冷静に先を見据えていた。

(取材・文 竹内達也)


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Source: 国内リーグ

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