[10.1 J2第37節 町田 2-3 いわき Gスタ]
J2首位を独走するFC町田ゼルビアとのアウェーゲームという、シーズンを通じて最難関とも言える一戦。それでもいわきFCはアグレッシブな攻撃スタイルで勇敢に渡り合うと、後半開始早々までに3-0という大差に持ち込み、終盤に2点を奪われながらも勝ち点3をもぎ取った。
この日のいわきで際立っていたのは、クラブカルチャーでもある局面のデュエルだけでなく、町田のハイプレスにも臆せず、4-3-3でテンポ良くボールを回すポゼッションへのチャレンジングな姿勢だった。
遠藤凌と家泉怜依の両CBが相手を引きつけながらボールを動かし、両SBの宮本英治と山下優人が高い技術とポジショニングセンスで相手をいなすと、9試合ぶりの先発起用となったGK鹿野修平も絡みながらプレッシングを打開。そうして的を絞らせずに相手の出足を鈍らせることで、アンカーのMF下田栄祐に前を向かせる場面を作っていた。
そこからは19歳ながら攻撃のキーマンを担う下田の仕事だ。「相手が町田だからというわけではなく、自分たちのサッカーをしようというスタンスで、ビビらずボールを受けて、相手のプレスを剥がすことを意識していた」(下田)。狙いどおりに相手のプレッシングを弱めると、前半途中からは下田が前線のサポートにも顔を出せるようになっていった。
するとそこから試合を動かすゴールが生まれた。前半31分、いわきは山下の直接FKで先制点を奪ったが、このFKはアタッキングサードで攻撃に絡んだ下田がファウルを受けて得たもの。「あそこまで出ていく回数は今まで多くなかったけど、今日はチャレンジしながらどんどん得点を近づけるプレーもできた。そのチャレンジが良かった」(下田)。期待の19歳はビルドアップへの関与だけでなく、果敢に前に出ていくプレーでも存在感を示してみせた。
下田は今季、鹿島アントラーズユースから今季トップチームに昇格し、すぐに2年間の育成型期限付き移籍でいわきに加入してきたボランチ。6月中旬にJ2リーグ戦デビューを果たすと、ここまで18試合の大半で先発出場を果たしている。
任されているのは4-3-3のアンカーという重要なポジション。「いわきというチームが自分に対して良い要求をしてくれて、成長するために来て良かったなと思える環境を整えてくださっている」(下田)。移籍発表時、いわきは「2年間の移籍期間で選手の成長を最大限に後押しすることで、若手選手育成の新しいモデルとなることを目指しています」と伝えていたが、そのとおりの場が整えられているようだ。
「まさかこんなにJ2というレベルの高い中で自分がこんなに試合に出て、中心でやれるとは思っていなかったので、すごく充実した日々を過ごさせてもらっているし、自分自身でも成長を感じられる日々を送れています」(下田)
またいわきにとっても育成の場を提供するだけでなく、J2昇格1年目の大事なシーズンで、残留争いの重要な戦力を獲得できた。「目標はより成長して鹿島に帰って鹿島で試合に出ること。もちろんいまはいわきの残留や上の順位に行くために全力でやるけど、数年後を見据えてプレーしていければと思う」という野心を持つ19歳の貢献により、この日の勝利で降格圏との勝ち点差は10に広がった。
J1昇格が近づく町田との対戦経験は、下田にとっても大きな糧になった様子。「首位でやっているだけあってすごく強度が高いし、個人の能力も高い選手が多いので、チーム戦術だけでなく個人能力もレベルが高いので、今まで通りにうまくできない部分が多かった。それを今日体感できたことがよかった」。残りは5試合。「首位のチームに勝てたのはみんなの自信になっていると思うので、どこが相手でもビビらず、自分たちのサッカーを全力でぶつけていけたらと思う」とこの活躍を続けていく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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