[11.2 選手権岐阜県予選準決勝 帝京大可児高 4-1 大垣日大高 長良川球]
第103回全国高校サッカー選手権岐阜県予選は2日、岐阜市の長良川球技メドウで準決勝を行い、5連覇中の帝京大可児高が大垣日大高を4-1で破って決勝進出を決めた。エースのFW加藤隆成(3年=帝京大可児中)が先制点を含む2ゴールの大活躍。9日の決勝では6年連続の全国出場をかけ、中京高と対戦する。
大雨警報の発令が懸念されていたため、当初のスケジュールから1時間前倒しの午前10時にキックオフを迎えた準決勝第1試合。ピッチの至るところに水たまりが見られる難しいコンディションの中、序盤は両チームともにロングボールを多用する展開となった。
それでも徐々に色を出し始めたのは「リスクを負わないことを気を付けてやってきたが、それだけではうちのサッカーにならない。少し浮かせながら繋ごうということで取り組んでいた」(仲井正剛監督)という帝京大可児。夏のインターハイで見られた本来のパスワークとまではいかずとも、ダブルボランチのMF松井空音(3年=FC.フェルボールテクニコ)とMF伊藤彰一(2年=FC.フェルボール愛知)を中心にボールを落ち着かせ、主導権を強固なものにしていった。
そうして迎えた前半14分、帝京大可児が先手を取った。トップ下のMF青木嘉宏(2年=愛知FC庄内U-15)がハーフウェーライン付近で前を向き、濡れたピッチの中でも勢いのあるドリブル突破を仕掛けると、ゴール左斜め前で切り返したところにエースの加藤が反応。加藤がスイッチ気味にボールを引き受けて右足を振り抜くと、豪快なミドルシュートがゴールに突き刺さった。
加藤は岐阜県1部リーグで30得点を記録し、夏のインターハイでも2試合で4得点を挙げていた高校屈指のストライカー。同点のままでは何が起きるかわからないピッチコンディションの中、エースストライカーとしての仕事を果たした。
もっとも、その後は初の全国出場を狙う大垣日大が意地を見せ、拮抗した展開に。左サイドハーフのMF加藤豪(3年=西濃シティ)のドリブル突破に加え、最前線のFW澤田泰和(3年=メジェール岐阜瑞穂)を筆頭にFW藤本要(3年=星和中)、MF栗田陸翔(3年=若鮎長良FC)が狙いを持って右サイドの背後に走り込むカウンター攻撃や、ルーキーながらキッカーを任されているDF安藤稜晟(1年=FCヴィオーラ)のセットプレーも有効打となっていた。
すると前半40分、大垣日大が試合を振り出しに戻した。鋭い速攻から栗田が右の背後を取り、深い位置までえぐってクロスを上げると、ニアサイドで反応したのは藤本。角度のないところから見事なヘディングシュートを決め、ファーサイドにも沢田が詰めていた分厚い攻撃を完結させた。
ところが直後、今大会初失点を喫した帝京大可児も譲らなかった。同点に追いつかれたことで目が覚めたか、シンプルな縦パスで前進する形を次々に作ると、左サイドから攻め上がってきたDF石田凱大(3年=FC.フェルボール愛知)が深い位置から折り返しのクロスを供給。このボールが相手守備陣に当たってゴールに吸い込まれ、オウンゴールで再び突き放した。
結果的にはこの1点が大きかった。「いい形で先制できたが、前半終了間際に追いつかれて、選手たちが諦めずに前半のうちに追い越せたことがこの試合の決め手になった」(仲井監督)。後半は大垣日大が加藤、帝京大可児がMF五十嵐瑛人(3年=愛知FC一宮U-15)の決定機を惜しくも決め切れず、そのまま時間が過ぎていく中、帝京大可児が突き放した。
帝京大可児は後半12分、セットプレーのこぼれ球を拾った伊藤がシュート性の浮き球パスをペナルティエリア内に送り込むと、これが相手守備陣をかすめてゴールイン。試合後、伊藤は「クロスを上げようと思って蹴ったボール」と率直に明かしたが、公式記録では意表を突いたミドルシュートによる得点となった。
また帝京大可児は後半20分、相手守備陣の連係ミスを突いた加藤がエリア内で相手を冷静にかわし、左足シュートでダメ押した。加藤は今大会4試合で驚異の20ゴール目。今大会は量産の陰でシュートミスも多かったというが、指揮官は大一番の働きに「もともとこういうピッチのほうがうちのエースは得意。そこでやってくれた」と太鼓判を押した。
そんなエースの大活躍もあり、帝京大可児は4-1で快勝。6年連続の全国出場に王手をかけた。
今季の岐阜県1部リーグを13勝1分で独走する帝京大可児は、昨季の先発メンバーの半数以上が残っている注目世代。加藤、MF明石望来(3年=FC.フェルボール愛知)といった攻撃陣だけでなく、力強い競り合いをこなすディフェンスリーダーのDF鷹見豪希(3年=帝京大可児中)、石田らバックラインも充実している。
指揮官も「年々『帝京大可児のサッカーがしたい』と明確なサッカースタイルを目指して入ってきている子がいる。今日はピッチコンディションが悪く、リスクを負いたくない部分もありつつも、かなりいいレベルでうちのサッカーができている」という手応えを口にする。
そのぶん目標は高く、掲げるのは”日本一”の野望だ。6月の東海大会では名古屋高、藤枝東高を連破した後、決勝で静岡学園高と1-3の接戦を展開。夏のインターハイでは初戦で立正大淞南高に6-1で大勝した後、2回戦で桐光学園高にPK戦の死闘を演じるなど、全国の強豪校と同じ土俵で向き合う1年を過ごしてきた自負もある。
「今までは岐阜県代表として一つでも多く(全国で)勝つという目標にしていたが、今年のインターハイや夏の和倉などフェスティバルをやっている中で、全国で勝たなきゃいけないと。夏が終わった時に『一つでも多く』という目標じゃなく、(例年の)ベスト8という目標でもなく、日本一を取るというふうに伝えている。今年は日本一を取りにいきます」(仲井監督)
指揮官の言葉は部員の総意。9日の決勝にも堂々と挑み、全国制覇に向けての弾みをつける構えだ。
(取材・文 竹内達也)
●第103回全国高校サッカー選手権特集
Source: 大学高校サッカー
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