DF今野息吹(法政大/G大阪内定)がピッチに立ったのは82分のこと。2-1と勝ち越した直後で、残る時間はアディショナルタイムを含めた10分余り。途中出場のDFにとって、イージーな状況ではなかった。
アジア大会準々決勝、U-24北朝鮮戦。今野が「相手は最初から凄い迫力で来ていて、たぶん誰もが凄いと思うような迫力があった」と振り返ったように、まずは相手の圧に負けて仲間たちが苦戦を強いられるところをベンチから見守った。
その後、状況に適応して奮闘した選手たちが見事に勝ち越し。今野にお鉢が回ってきた。切っ掛けはアクシデントだ。
「(奥田)勇斗が足をつってしまって、急に入ることになった」
同じ左SBへと緊急出場する形となったが、これが幸いした部分もあったかもしれない。「緊迫した状況だったんですけど、割りとすんなり試合に入れたし、ガチガチになったりはしなかった」と落ち着いたプレーを披露した。
対面になった20番のMFペク・チュンソンは試合を通じて日本の脅威になっていた実力者。左SBの今野にとって、まずはそこを封じることが第一のミッションだった。
「自分とマッチアップした20番は凄く速くて良い選手だったので、そこのケアを徹底して入ることは意識した。点を取られないことが第一だった。このまま試合を終わらせてやると思って入った」(今野)
3月に初めて代表入りを果たし、その後も6月の欧州遠征など、今年に入ってからパリ五輪を目指すチームのリストに名を連ねるようになった今野だが、「先発で出たのは(ラウンド16の)ミャンマー戦が初めて」と言うように、国際試合の経験が豊富にあるわけではない。それだけに、このシチュエーションでタフな試合を体感できる喜びも感じていたと言う。
「あの緊張感の中、あのタイミングで国際試合に出られるというのはないので、本当に良い経験でした」(今野)
そのミャンマー戦もしっかり自分の中で消化している。
「前半は(同じ左サイドの)佐藤恵允(ブレーメン)が“無双”していたので、そんなに上がる必要もなかったんですけど、後半は攻め上がって自分の特長も出せたと思う」
そう語るように、北朝鮮戦では試合状況を踏まえて守備的に振る舞ったものの、本来は攻撃的なスタイルを売りにするSB。「(ウイングバックの経験はあったが)4枚のSBをやったのは大学に入ってからで、それまではウイングとかサイドハーフだった」と言うように、元は攻撃的なポジションの選手でもある。それだけに「縦へのドリブルとそこからのクロス」といった攻撃面には自信を持つ。
日本人ではDF黒川圭介(G大阪)のプレーを実際に観た上で参考にしていると言う。
「本当に攻撃的なSBだし、縦への推進力でも守備の対人プレーでも本当に凄いなと思ったけど、G大阪で試合に出るためには追い越さないといけないので」
身体的な特長を含めてのポテンシャルを買われて代表入り。ベンチで過ごす時間は長くとも、「本当に勉強になる」代表での日々を通じ、着実に成長を続けている。「試合に出たら、自分の攻撃的な部分を出していきたい」と意気込む左SBのプレーに、あらためて注目してほしい。
(取材・文 川端暁彦)
●第19回アジア大会特集ページ
Source: サッカー日本代表
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