[11.17 選手権鹿児島県予選決勝 鹿児島城西高 1-0 神村学園高 白波]
“半端ないFW”と比較される2年生ストライカーが、7連覇中の絶対王者から決勝点を挙げた。0-0の後半37分、鹿児島城西高は敵陣でセカンドボールを回収すると、右SB福留大和(3年)が右サイドを突破。ゴールエリアへのラストパスにU-17日本代表FW大石脩斗(2年=太陽スポーツクラブU-15出身)が触れると、ボールはゴールラインを越えた。
大石は「(当初は)マイナスでもらって、シュート打とうって思っていたんですけど、でも『ゴール前走った方が何か起きるな』、『とりあえず速いボールが来るな』と思ったんで、もうゴールに突っ込んで走ろうと思ったら、ボール来たんで、入ったかなという感じです」と振り返る。
クリーンヒットした一撃を決めた訳では無い。相手DFがスライディングでクリアしようとする中でふくらはぎ辺りに何とか触れたようなシュートだった。だが、どんな形であろうともチームにとっては非常に大きな1点。Jクラブのスカウト陣も見守る中、“特別な”ストライカーがインターハイ準優勝校・神村学園高のゴールをこじ開けた。
185cmの大型FW大石は、懐の深いボールキープや、ダイナミックなスプリント、強烈なシュートなど1年時からスケール感の大きな動き。同校の先輩FW大迫勇也(現神戸)と比較されてきた。昨年6月にU-16日本代表へ初招集されると、初先発したナイジェリア戦で初ゴールを記録。続くオランダ戦もゴールを決めた。チームでは今年から先発に。初参戦したプレミアリーグWESTではチームの未勝利が続く中、大石も結果を残すことができなかった。だが、第16節の岡山U-18戦で待望の初ゴールを決め、チームも初勝利。苦しいシーズンの中でもシュート練習を止めずに続けてきたことが、今回の選手権予選や8月のU-17日本代表での活躍に結びついた。
今大会は初戦から全5試合でゴールを決めた。特に準決勝(対鹿児島高)では鮮やかなターンでDFのマークを外し、右足で決勝点。決勝でもシュートシーンは少なかったものの、ワンツーからの左足シュートなどゴールを目指し続けた。そして、劇的な決勝点。チームを8年ぶりの全国大会出場へ導いた。
「結構苦しんだんですけど、でもシュート練習とか止めずにずっとやってきて、ずっとやってきたからこそ、こういう大きい舞台で点が取れる、自分にボールが来るのかなって思ったんで。努力はこれからも止めないで、いつかは必ず自分に来るんで、そういう姿勢でやっていけたらなと思います」
新田祐輔監督からは「とにかくハードワーク。チームのために頑張りなさい」と求められ、プレミアリーグの強豪チーム、年代別日本代表クラスのDF相手に1年間ハードワークとゴールを目指し続けてきたことも進化の要因。それだけに大石はプレミアリーグ昇格を果たしてくれた昨年の先輩たちに感謝していた。
1か月半後には、大石にとって初の選手権が始まる。16年前の2008年度選手権では、鹿児島城西の「9」を背負ったFW大迫勇也(当時3年、現神戸)が“半端ない”活躍。1大会の個人最多記録となる10得点をマークして得点王に輝き、チームを初の準優勝へ導いている。
その「9」を受け継ぐ大石は、「城西の9番って言ったら、エースっていうか、どこのチームの9番よりも重いっていうか、 価値あるものだと思うんで。それを背負ってるからにはいいプレーもしないといけないし、得点も取っていかないといけないと思うんで、こっからだと思う」という。まだまだ粗さや判断の遅れもあるが、2年生エースが選手権で大活躍する可能性は十分にある。
選手権では先輩超えを目標に掲げた。「学年は2年なんですけど、来年があるとは限らないし、この1回きりかもしれないんで、全力でその記録っていうのを越しに行きたいなと思います。とりあえず得点をたくさん取ったらチームも勝つと思うんで、得点っていうところにこだわってやっていきたいなと思います」。選手権でもゴールを連発して鹿児島城西を勝たせ、「全国優勝」という目標を達成する。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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