[11.19 プリンスリーグ関東1部第10節 矢板中央高 2-2 帝京高 矢板中央高校東泉G]
「日本一取るために、これじゃ……やっぱ最後に取られるっていうのは、自分たちのほんと甘さしかないかなって思います」。後半アディショナルタイムの失点で追いつかれて引き分け。CB佐藤快風主将(3年=足立区立第十三中出身)は試合後、矢板中央高(栃木)のAチームの選手を集め、非常に厳しい口調で思いをぶつけていた。
延長戦、PK戦まで戦った選手権栃木県予選決勝(16日)から中2日での90分間ゲーム。体力的にキツかったことは確かだが、それは同じ16日に東京都Aブロック予選決勝を戦った帝京高(東京)も同じだ。佐藤は、「自分的に言いたいのは、もうほんとに勝ちたい、勝ちたい。それだけではもう伝わらないですけど、それをもっと表面に出してもいいのかなって」。目は真っ赤。全く遠慮することなく、怒気を含んだ表情と大声でチームメートたちに求めていた。
選手権まであと1か月半。日本一を本気で掴むのであれば、やってはいけないようなゲームだった。2度先行したが、いずれもわずかな隙を突かれる形で2失点。佐藤は集中力を維持し、身体を投げ出してでも止めたいという気持ちを全員が持っていれば防げた失点だったと考えている。同時に3点目を奪うチャンスを活かすこともできなかった。必勝を期していた一戦で勝っていれば、プレミアリーグプレーオフ進出を争う3位・浦和ユースと同じ勝ち点31。ライバルにも大きなプレッシャーを掛けられたはずだった。
帝京には前期のリーグ戦で、4-2で勝利している。だが、今回はホームで差を埋められる結果になった。ピッチサイドで大応援をしてくれたチームメートや家族の前で勝利することができず、佐藤は「もう悔いしかないです」。仲間たちは自分がプレーしたいという気持ちを押し殺して応援してくれている。主将は、その声に応えるような戦いができたとは、考えていない。
「普通だったら応援したくないと思いますよ。ほんとに自分が夢の舞台に立ちたいと思いますし、もう(以前は)自分がそういう気持ちだったんで。だからこそ、(彼らの前で)ほんとに勝たないといけないっていう絶対条件だと思います。だから、(自分たちの熱量が彼らに伝わるように、)ほんとにもっと本気でやんないといけない」。チームを代表して戦っている選手たちに対して涙の訴え。佐藤は取材中も時折涙が流れるのを堪えたり、言葉を詰まらせながら、思いを語っていた。
佐藤は誰よりも高校サッカーに縣けて、這い上がってきた選手だ。東京都の公立中学校出身で、矢板中央進学当初は1年生チームでも試合に出ることができていなかったという。強豪・矢板中央で主軸になることは「無理だろ」と周囲から言われていても、金子文三コーチの「24時間サッカーのことを考えろ」という言葉を胸に、トレーニング。「その通りだと思いますし、自分なんか特に全然試合にも出てなかったけど、何が必要かって、やっぱトレーニングし続けることだった」。オフの日もしっかり睡眠を取った上で何かを積み上げられるように日々取り組んできた。
今年1月、新チームがスタートした際は、まだまだ絶対的な存在ではなかった。それでも、人一倍の努力を重ねてきた佐藤は、高橋健二監督も「やっぱり精神的なタフさ、チームをまとめる献身さ。技術的なちょっと弱さはありましたけど、彼はだいぶ努力して、今は外せない存在です」というまでの存在になった。
特別な能力がある訳ではないが、最終ラインの要を担う佐藤はこの日も声を発し続け、1人で相手の攻撃を止め切るようなシーンもあった。勝たせられなかったことを「自分の足りないところ」と自己分析したが、「本戦(選手権)で負けてこうなるよりかは、その本戦が始まる前に気づけたっていうのはポジティブに捉えていいのかなって思いますし、気持ち的な面では(選手権までに)絶対変われると思うし、意識の問題っていうのは、言い続ければ変わると思いますし、そこはもう全然自分も苦じゃないんで。(周囲から)何言われてもいいし、あと2か月しかない訳だから、もうどう思われてもいいから、それも言い続けるっていう覚悟しかないです。とにかくこのチーム、このメンバーで日本一取りたいって気持ちはほんとに誰よりも思っている」。もちろん、熱い思いを内側に秘める選手もいることは理解。その上で首相は選手権で優勝するために、一人ひとりの意識がより高まるように、できることを全てやり尽くす考えだ。
「やっぱ言葉で言うよりも、結果で返した方が。ピッチで表現して、優勝してる姿を見せれたら、1番の恩返しかなっていうのは思います」。プレミアリーグ昇格、そして選手権日本一という結果を残して、高橋監督や金子コーチらコーチングスタッフ、チームメート、そして家族に恩返しする。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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