日本サッカー協会(JFA)は4日、10月シリーズの国際親善試合2試合に臨む日本代表メンバー26人を発表した。あわせて自チームや対戦相手の分析業務を行うテクニカルスタッフのリストも発表され、9月シリーズから新たに加わった元セビージャの若林大智氏が、カタールW杯を経験した寺門大輔、中下征樹の両氏と共に引き続き名を連ねた。
若林氏は2019年から今年6月までスペインの強豪セビージャに在籍し、UEFAヨーロッパリーグ(EL)を2度制覇した実績を持つ経験豊富なアナリスト。9月シリーズの欧州遠征から日本代表に加わって分析業務に携わってきた中、森保一監督も4日の記者会見で「非常に大きな戦力になっている」と信頼を口にしていた。
5日のJFA理事会終了後、報道陣の取材に応じた反町康治技術委員長によると、これまでの日本代表チームは「テクニカル、分析官の人数がうまく回っていない」という課題があったため、昨季までセビージャに在籍していた若林氏にオファー。無事に快諾され、3人目のテクニカルスタッフとして森保ジャパン入閣が決まった。
反町委員長は若林氏の加入について「即戦力です。他のコーチに聞いてもパーフェクトに近い」と絶賛。「こういう(PCなどを活用した分析作業)のテクニックもあるし、試合を見ることに関してもELで優勝しているクラブにいたので当然テクニックがあるが、言葉も喋れる。特にスペイン語圏のチームと試合をするときに情報をパッと得られる」と長所を語った。
一方、森保監督は4日の会見で「一人増えてくれたことで分析の内容が濃くなっているが、より多くの人も必要になってくるかもしれないというのが現代サッカーを取り巻く環境かなと思っている」と現状を指摘。さらなる体制強化の必要性を示唆していた。
そうした問題意識はJFA側も同様だ。反町委員長は「W杯や近いところではアジア杯で、この3人でやるというより、もう少し遠隔でなのか、現地で見る人も含め、しっかり検討していかないといけない。決勝まで行くとなると7試合、試合が終わった翌日には次の相手であるとか、仔細な情報が手に入れられるような状況に持っていく必要があるので、より整えていかないといけない」と現状を認識。「そういう意味では3人がメインとなってやりつつ、バックアップ体制も含めて準備していくということで間違いない」と明言した。
分析面では欧州の強豪国にまだまだ後れをとっている状況。反町委員長も「ヨーロッパの状況を見て色々とヒアリングをしていくと、みんなすごい人数がいる。今で言えばゴリさん(U-17日本代表の森山佳郎監督)のように下のカテゴリーからもW杯では全部見に行っていて、レポートを作ってシニアチームに渡している。我々はまだそれができていない。そういうのを見て他のチームはいろいろ準備しているんだなと感じるし、それでも勝てるか勝てないかギリギリの世界。そういうところは反省点として捉えているので活かしていかないといけない」と課題を口にする。
2026年の北中米W杯では出場国が32から48に増加するため、カタールW杯よりも分析対象となる範囲が拡大。決勝トーナメント1回戦にあたるラウンド32の対戦国であれば数チームに絞られそうだが、史上初めてラウンド16の壁を破るためにはそれが十数チームに膨れ上がり、新たに目標として掲げる“世界一”を目指していくためには全ての強豪国を大会前、大会中と追いかけ続ける必要が出てくる。
そうした状況について反町委員長は「準決勝に上がって『やったー』と。『でも相手の情報は……』というのではなく、生で見た情報が全部揃っていて、全部が切り取ってあって、それがすぐに出せますよ。そういう状況まで持っていくというのが、日本はいまFIFAランキング19位ですけど、もっと総合力を上げていくのに大事な要素かもしれない」と改善に意欲を見せた。
分析面の体制整備を進めていくにあたっては、来年1〜2月に控えるアジア杯が一つのモデルケースとなりそうだ。グループリーグ3試合、その後に決勝トーナメントが控えるというスケジュールはW杯とおおむね同じで、分析ルーティーンを検証するための貴重な機会。まずはそこで成果と課題を抽出していく構えだ。
反町委員長は「そこである程度、W杯のシチュエーションを考えた中でやっていくのが大事。アジア杯はカタールなので車で2時間、3時間あれば全部行って帰って来られる。W杯でたとえばカナダからメキシコに行くのとはちょっと違うので、完全に同じシチュエーションにはならないかもしれないが、少なからずやることでまた課題が見えてくると思う。特に代表の活動はすぐに試合がやってくるという形なので、情報をいかに早く整理して現場に落とせるかが大事になる。それをやっていかないといけない」と先を見据えた。
(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
Source: サッカー日本代表
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