ロサンゼルス五輪世代代表 大岩剛監督の続投会見要旨

左から山本昌邦ナショナルチームダイレクター、大岩剛監督、宮本恒靖会長
 パリオリンピックで指揮を執った大岩剛監督が2028年ロサンゼルスオリンピックを目指す日本代表チームの監督として引き続き指揮を執ることが決定した。13日には東京都内で記者会見を開き、宮本恒靖会長、大岩剛監督、山本昌邦ナショナルチームダイレクターが出席した。

宮本恒靖会長
「今日はU-23の代表監督として、再び大岩監督をこちらでご紹介できることをうれしく思っています。再度オファーした背景だが、まずは2021年の大岩監督の就任からそれ以降の活動に対して、技術委員会を始め、しっかりとした高い評価があったという点が挙げられる。また、今年のU-23の大会、そしてパリ五輪、残念ながら目標としていた結果には届かなかったが、自分自身も近くでチームを見ることができたところで、色んなことを聞いた部分もあり、そういったところを総合的に判断したときに、再度お願いすることがよいのではないかという考えに至った。A代表は非常に調子がよく、しっかりとした結果を残しているが、常に強い代表チームを持ち続けるためには、若い世代の選手の突き上げが必要になってくる。そういう意味でU-23のチームは非常に重要。ロサンゼルス五輪のチームがメダルを目指すとともに、少しでも早くたくさんの選手がA代表に食い込んでいくというようなところにつなげていってもらいたい」

●山本昌邦ナショナルチームダイレクター
「大岩監督の続投という日を迎えることができて、ホッとしている。五輪は条件が非常に難しいなかで、これ以上の経験値があり、さらに先を目指せる監督はいないと思っている。時間はかかったが、こういう日を迎えられてホッとしている。ラージ100というA代表の下のところの100人のグループがあり、強固ですばらしいものであればというところのメンバーが、大岩監督が率いるU-23のところになる。育成と勝利という難しい仕事の中で、日本の未来を託せる監督だと思っている。スタートが早くなったというところもポイント。前回は2年半で、今回はしっかりと長い時間をかけて大岩監督に託せるということも、このタイミングでの発表になったひとつの要因。引き続きロス五輪に向けて、大岩監督のチームをサポートしていただければ」

大岩剛監督
「ロス五輪に向けてのチームの監督をやることになりました。この年代の重要性、そして育成年代の代表との関わり、A代表に向けての選手育成という部分では、パリオリンピックを経てより重要であると認識している。その責任が大きいということも含めて、パリ五輪での経験を活かしながら、ロス五輪に向かっていきたい。引き続き、皆さんの協力も必要ですし、日本サッカー界にとっての大きな一助になれるようにがんばりたい」

──再任として監督を引き受けようと思った経緯や決意はどのようなものか。
大岩監督
「パリ五輪が終わり、協会との振り返り、成果と課題を話し合いをしていくなかで、早い段階で続投のオファーをいただいた。私自身に評価をしてくださるJクラブも含めて、色んななかで整理しながら、今回の続投のオファーを受けるという決断をした。この年代の重要性は、パリ五輪を率いた2年間で感じた。日本サッカー界においての最重要課題であるポストユースの年代を率いる大きさは今も感じている。その経験を活かせるのであれば、ぜひ受けさせていただきたいという気持ちだったので引き受けることにした」

──具体的に指揮を執るのはいつからか。
山本ND
「大岩監督の活動としては6月、7月あたりになると思う。船越優蔵監督のU-20日本代表が次のロス五輪のチームになるが、日程変更でU-20W杯が9月にある。それと並行して、ロス五輪を目指すチームの予選に関わる大きな試合が、9月にU-23アジア杯予選というところで入ってくる。その準備として、大岩監督の活動が入ってくるという風に準備を進めている。U-20W杯とU23アジア杯予選の日程がかなりくっついてくる。2年前のU23アジア杯で、われわれは強化のために2歳下(U-21日本代表)で行っていた。そこのスタートが(9月に)重なってくる。そこで勝利せずにポットが落ちてしまうと、五輪の(アジア最終予選となる)U23アジア杯が非常に難しいものになる。その準備として6月、7月くらいから9月の公式戦に向けて進めてもらうのが、大岩監督のスタートになる」

──改めてパリ五輪を今どのように総括していて、次のロス五輪に向けてどのようなところを強化していくか。
大岩監督
「パリ五輪では準々決勝でスペインに敗れたが、それまでのわれわれの積み重ねてきたものがある程度出せたと評価している。勝負の世界なので、勝ち上がって目標であったファイナルには行けなかったが、その目標を新たにロス五輪でも基準、目標、目的を明確にしたなかで、チームを作り上げていきたい。メダルに向けて、サッカー界もそうだが五輪という大会は、日本国民の皆さんが注目をして見ていただける大会。そういう人たちの期待も十分に理解しているつもり。ロス五輪の期待を成績に反映できるような準備をしていきたい」

──この世代をどのように鍛えていきたいか。どういうものを求めていきたいか。
大岩監督
「代表活動は短いので、トレーニングをして鍛えて成長を促すことはできない。やはり国際試合。インターナショナルマッチウィークを使って強豪国とやることで国際経験をしっかりと積む。そして世界を知る。それに伴って選手をどんどん成長させていく。パリ五輪のときは87人の選手を招集したが、それを100人、110人、120人にしていく作業が重要。国際試合をやりながら選手の成長を促していきたい」

──パリ五輪では招集したい選手を呼べなかった。改めて五輪というものを協会としてどう位置付けて強化していくか。
山本ND
「日本において五輪の位置づけ、注目度、国民の熱狂的な盛り上がりを考えていくと、重要な大会と認識している。一方で、サッカー男子だけがU-23の育成年代の大会。JOCの施策と育成と勝利をバランスよくやっていくという究極の仕事だと思う。だからこそ、経験のある大岩監督にお願いしている。これをバランスよくやっていき、ラージ100がサムライブルーにつながっていって、われわれが目指す本当の世界の頂点のなかで、この五輪で選手を鍛え上げてA代表につなげていく。(パリ五輪では)優勝したスペインにわずかに足りなかった。わずかな差を知っている監督が、次の世代に植え付けて成長につなげていくということは大事な視点だと思っている。位置付けもそうだが、成長し続けた先に未来が見えてくる。希望の見える4年間にしていきたい」

──今回は準備期間が前回より長いが、その部分で生かしていきたい部分はあるか。前回のパリ五輪までの期間でもう少し準備期間があったらよかった部分はあったか。
大岩監督
「準備期間が長ければよかったと思うことはなかった。コロナ禍のイレギュラーがあったが、われわれだけではなかったので感じることは少なかった。今回は期間も長いが、そのぶん活動の数が多い。国際試合をやることでこの年代の選手たちの成長をいかに促していくか。そういうことを数多くやっていけることは、ひとつのアドバンテージ。アジア競技大会や、最終予選前のU23アジア杯などいろんな大会を通じて苦しみながら、負けることもありながら、そういうことを経験しながら、選手が成長してチームが成熟していくことをどんどん促していきたい。宮本会長も言っていたが、A代表に向けての成長は日本サッカー界が求めていること。それも含めて、五輪代表チームが成長していくことが重要だと思う」

──大岩監督が始動する6月、7月で作るチームはU-20のチームになるのか。国内強化のためにJリーグやJFAと連携は取るのか。
山本ND
「JリーグのU-21、ポストユースの連携は、具体的なことは申し上げられないが、常に協議して21世代の強化は考えている。6月、7月の活動としては、U-20W杯が9月にあるので、その世代の呼べる選手は最優先でU-20(日本代表)に招集して、U-20W杯を目指す。一方で、すでに海外でプレーする選手が本当に増えている。U-20も、U-17でも出てきている。ヨーロッパでプレーしている選手が9月のIW(代表期間)内に招集できないというところ、実際に五輪で起きたことが起きることは覚悟している。実際に海外でプレーしている選手は何人かいるので、そういう選手も含めて、U-20が最優先で呼べる選手を呼んでW杯を目指すが、それ以外でヨーロッパでプレーしている選手たち、ロス五輪の選手たちをどうやって鍛えていくか。ラージ100のなかで分厚い層をどう鍛えていくのか。そこを大岩監督に、9月までのところは、優先はU-20だけども、残りの海外で活躍している選手も含めて、チームを結成して育成をやってもらうという考え方」

──羽田憲司氏コーチがU-20日本代表のコーチを兼務される。羽田コーチに期待したいところはあるか。
大岩監督
「今回、船越監督も含めてコミュニケーションを取るなかで、羽田コーチに入ってほしいという要望と、五輪を目指すチームとしての要望が一致がした。この段階でチームに入ることができるようになった。ぜひ選手たちへの刺激になればいいと思うし、われわれが選手を把握するうえでも情報交換ができればいいのかなと思っている。U-20のチームだけではなくて、U-17の選手もターゲットになってくる。U-20のスタッフだけではなくて、育成年代の監督、コーチの方々ともコミュニケーションを取りながら、選手を把握していきたい」

──羽田コーチのU-20日本代表コーチ就任の経緯は。
山本ND
「船越監督のチームからU-20W杯に向けてコーチを一人増やしたいと夏から共有していた。パリ五輪の経験がある羽田コーチが入っていけば、さらに選手を引き上げられるということがひとつ。羽田コーチは(大岩監督体制と)兼任するのでバトンゾーンと考えている。U-20W杯が終わるまでに、羽田コーチが選手をさらに成長させていき、リレーのように活用できれば。それが大岩監督にフィードバックされて、選手たちにもパリ五輪への基準が伝わるのが早ければと、そういう風に考えている。もうひとつはA代表のサムライブルーからU-15まで、大きな目標に向かっていくためには、一貫したプロセスが大事。森保(一)監督から大岩監督、船越監督と一貫したプロセスで選手を継続して育てていくことを軸に考えている」

──28年になればA代表の世代交代のタイミングになる。ビジョンはどのように考えているか。
大岩監督
「いまのサムライブルーは成績や試合内容を見れば、ものすごくレベルの高いグループになっている。当然パリ世代も含めてもっと若い選手が出てこないといけないと充分に感じている。そのなかでロス五輪世代がいかに成長してサムライブルーに入っていくか。同じように進めていければと思っているが、ポストユース年代は急激に成長する世代なので、そういうところを促していきたい。いろんな活動を通じて刺激を与えられるように、より選手たちが危機感を覚えるようなグループにしていきたい」

──早い段階でオファーをいただいたという具体的な時期はいつか。発表が12月になったところは逡巡があったのか。
大岩監督
「パリ五輪最後の試合が終わって、協会と振り返りをするなかで、私自身も振り返りをするなかで、個人的な考えと悔しさ、もう少しできたのではないかという思いもあった。協会と話をして、山本NSから続投の話をいただいた。早い段階から話をいただいたので、私自身もいろんなオファーがあるなかで時間をいただいたというのが正直なところ。ただ、クラブを率いることと日本代表を率いることはまったく違う仕事になる。そういうところは、総合的に判断をして今回の決断をしたということになる。時間軸をいえば10月の終わりだったと思うが、Jリーグのクラブの人たちとも話し合いを続けていくなかで並行して話をしていた。順序立てて誠実に話をしたなかで、最後は決断をさせていただいた」

──2大会連続で五輪世代を指揮することが決まった経緯とは。
山本ND
「強化部会があって、技術委員会があって、代表監督選考のプロセスが決まっている。最後は会長と理事会に行くが、逆算していくとかなり急ぐ必要があると認識していた。個人的には、4月のU23アジア杯で優勝して五輪出場が決まった後から、協会の議論や準備は進めていた。団長として監督の近くにいて、これほど優れたリーダーはいないと思っていた。大きな仕事でありながら親近感もあるし、謙虚で聞くことを知る監督。選手の話もよく聞き、モチベーターでもある。どんな厳しい状況でも、(アジア競技大会で)韓国に敗れた後も静かに振る舞っていて、その姿を見ると、そういうことを託せるすばらしいリーダーだと確信していた。影山(雅永)委員長のもとでしっかりと議論した。五輪が終わった後に、最初に話をさせてくださいというところからスタートした。プロセスのハードルがあるので、そこを詰めていくとこういうタイミングになった。コーチングスタッフの人事や、監督だけで決まらないところもあった。早いタイミングということでいうと、その後Jのクラブからオファーが行くと想定されたので、早いタイミングというのは早いと思っていなかった。来年6月に監督探しましょうかというチームであってはいけない。前倒しで計画して準備してきた」

──育成と勝利という難しい仕事をやる上で面白さや魅力は何か。次の五輪に向けて楽しみなところはあるか。
大岩監督
「選手が成長して、アジアカップを優勝してからパリ五輪までの間も、ものすごく色んなイレギュラーがあったなかで、選手が困難に立ち向かっていくなかで成長していく実感はものすごく得られた。それが喜びであったかもしれないし、選手の成長を促すことなのかもしれない。次のロスに向けても、私のなかではある意味ひとつの成功体験。しっかりと継続と一貫というものを、大きなキーワードとして続けていきたい」

──2期目を引き受けるにあたって、協会にリクエストやお願いはあったか。
大岩監督
「パリ五輪のときは、イレギュラーがものすごく多かった。開催時期が変わったり、選手の招集や後ろ倒しになった期間もあった。それがないことを祈っています(笑)。山本NDには小言のように色んなことを言いながら、アジアの最終予選でも、こうしたほうがああしたほうがという話をしながら大会を進めていった。パリ五輪中も、この年代はこうしたほうがいいんじゃないかとか、色んなサポートをよりA代表に近いほうがいいんじゃないかとか、まだ早いんじゃないかと、色んな議論をしながら進めてきた。いろんな障害がロス五輪でもあると思う。それに対して何か愚痴をこぼすのではなくて、しっかり乗り越えていく強さは持ちながら、ラージ100ではないが色んな困難にも向かっていけるような、大きい強いグループにしていきたい」

──山本NDがスペインに「わずかな差」で勝てなかったと言っていた。わずかとは何か。そのわずかを埋めるためにフォーカスしたいことはあるか。
大岩監督
「わずかがたくさんあった。それが大きな差になった。この年代が国際試合で強い国と対戦することで、選手がまず経験する。そのなかで差をどう埋めていくか、経験を選手に伝えながら、なんとか乗り越えて行けるような努力をしていきたい」

──正式なスタートまでの半年間で何をしていきたいか。
大岩監督
「選手を把握することもそうだし、各クラブとの交渉もそうだし、自分自身もスキルアップしていかなきゃいけない。インプットの時間に充てながら、アウトプットする時間も作りたい。どういう形になるか話し合いをしているが、しっかりスタッフとコミュニケーションを取りながら、しっかりとした準備の期間にしたい」

──Jリーグを経ずに海外に行く成功例もあり、Jリーグへのオファーもある中で大学進学を選ぶケースもある。Jリーグが強くなってA代表に引き上げられるような選手が育つリーグになるために、どういう期待しているか。
大岩監督
「U21リーグであったり、いろんな試みをやっていくと思う。ウズベキスタンの話もあったが、JFAだけではなくてJリーグも含めて、ポストユースというアプローチは、いろんな意見があると思うので正解はあるとは思わないが、海外に行くことが正解ではないかもしれないし、海外に行って戻ってくる選手もいるかもしれない。パリのときもそうだったが、大学生、高校生、J1、J2、J3。色んなカテゴリーの選手たちをしっかり把握すること。大学の監督さんたちともコミュニケーションを取ることもあるが、どのレベルでどのプレーができるのかをしっかりと促しながら、色んなアプローチをして、選手把握に努めたい」

──6月の活動と9月のU23アジア杯予選について、必要に応じてロス五輪世代のひとつ上の世代も招集する可能性はあるのか。
山本ND
「9月はU23アジア杯予選なので、次の五輪の強化で2つ下で強化を継続していた。23歳以下のOAも含めて今は決めていない。状況次第ということもある」

──パリ五輪ではオーバーエイジ(OA)が入らなかった。しかし、上位にいる国はOAを活用していた。後手を踏まないための施策はあるか。
山本ND
「選手招集が本当に難しくなっているなかで、パリ五輪では年齢的にも久保建英、鈴木彩艶、鈴木唯人と、年齢は関係なく招集できていない。スペインがどうやってOA、もしくは全選手を招集できているのか。法律の問題もあるし、フランス代表がしっかりと準備してホスト国ということでああいう体制を取ってきた。アメリカで行われるオリンピックなので、アメリカもしっかりとやってくる。どう同等の体制を作れるかがわれわれの課題。施策はいくつか考えていて、しっかりと海外に行っている選手たちを呼べる方法の準備は進めている」

──パリ五輪までではアウェーで強豪国と遠征を行ってきた。次の五輪に向けての意義はどう考えているか。
大岩監督
「そういうところも選手を強化していくうえで、重要なことだと思っている。今回も同様にリクエストを出していきたい。リクエストを出しながら強豪国と呼ばれる国と対戦していきたい」

(取材・文 石川祐介)
Source: サッカー日本代表

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