夏の九州王者で、プリンスリーグ九州1部2位の日章学園高(宮崎)はサウサンプトン(イングランド)内定のFW高岡伶颯(3年)や仙台内定のMF南創太(3年)に注目が集まっているが、DFラインにも全国クラスのプレーヤーがいる。CB吉川昂我(3年=都城市立西中出身)は、下級生時から先発の強力ストッパー。183cmの長身を活かしたヘッドや球際の強さ、ロングフィードに自信を持つCBは、チームの“陰の立て役者”になることを目指してきた。
県大会決勝では前半にチームがやや攻めあぐねる中、粘り強く宮崎一高の攻撃を弾き返して無失点を継続。後半の5ゴールと快勝に結びつけた。吉川は「選手権始まる前に無失点優勝っていうのも目指してた中で、(準決勝の)鵬翔戦で最後の最後にまた決められてっていう、自分たちのまだまだ力が足りなかったなっていうのがあって。そこから切り替えてじゃないですけど、決勝は必ず無失点で優勝しようっていうのはあったんで、そこは無失点で終われたことは良かったかなと思います」と振り返る。
昨年から存在感のある動きを見せていた吉川だが、意識を変えるきっかけになった試合がある。それは昨年のプレミアリーグプレーオフ、京都U-18戦だ。チームは南と高岡のゴールで2点を先取しながら、連続失点で逆転されてしまう。その後、吉川のゴールで追いついたものの、後半42分に突き放されて3-4で敗戦。「去年のサンガ戦はほんと自分のせいで負けたっていうのは自分でもちゃんと分かっているので、先輩たちを上がせられなかったっていう悔しさもほんとあって、1年間、こういう試合をしてはいけないっていうのは常に心には決めています」という。
新シーズン結成後も失点は多かったが、GK有薗大樹(3年)らと話し合って「点を取られないっていうよりも、シュートを打たせないっていうこと」を目指してきた。幸いチームは高岡や南、FW水田祥太郎(3年)、U-16日本代表候補MF 吉崎太珠(1年)といった全国トップレベルの攻撃陣。日常から彼ら相手に「シュートを打たせないこと」を目指してきたことで、守備力を向上させることに成功している。
選手権予選後のトレーニングでも一際声を発していたのが、吉川だった。「自分は2年生の頃から出させてもらってる立場で、人一倍経験してるって部分で、やっぱ盛り上げるっていうところでは、練習から自分が先頭に立ってっていう訳ではないですけど、1番盛り上げるっていうことは普段の練習から意識しています」と説明する。1、2年生が先発に食い込む中、吉川自身が最も成長したと感じているのがコーチング。下級生たちがプレーに集中できるように、細かな声がけで後押ししている。
選手権の目標について、吉川は「まずはチームとしては過去2年初戦敗退っていうこともあるので、先を見ず、まずは初戦突破っていうのを目標にしていきたいですし、個人としても、やっぱ前が注目される中ですけど、そこで目立ったプレーはあんまりできないと思うんですけど、高校選抜とかもあるので、そういうところも視野に入れながら目指していきたい」と力を込めた。
高岡、南がチームメートでなければ、より注目されていたことは確か。「やっぱ前2人が注目されてる分、少し悔しいっていう気持ちもあるので、そういう悔しさをモチベにして」努力を重ねてきた。その一方、彼らへの感謝も忘れない。「高岡と南に関しては、普段の練習終わった後の自主練でもやっぱ1対1とかやってくれて、ほんと高いレベルで練習はできてるのかなと思うので、そういうところではやっぱ2人にも感謝したいです」。プロへ進む彼らと異なり、大学へ進学。4年後のプロ入りを目指すDFは、選手権で結果を出し、自身の評価も高める。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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