カタールW杯直前に右足アキレス腱断裂の重傷を負い、本大会出場を辞退したDF中山雄太(ハダースフィールド)が9日、1年ぶりの日本代表合流を果たした。
合宿初日は所属先のリーグ戦からのリカバリー調整となったが、練習後には元気な姿で報道陣の取材に対応。「お帰りなさいと言ってくださる皆さんのおかげで帰ってきた感があるけど、それよりも日本代表としてやれるという喜びと責任が大きい。離れていたからこそというのもあるけど、それをふつふつと感じている」と心境を語った。
中山は昨年11月1日、カタールW杯に臨む日本代表メンバーに選出されたが、直後の2日に行われた所属先のリーグ戦で右足アキレス腱を負傷。長期のリハビリのため本大会出場を辞退することになり、あと一歩のところで初のW杯出場という夢が絶たれた。
目の前にW杯が控えていたということを差し引いても、選手キャリアを大きく左右するような大怪我。それでも中山によると、受傷直後の時点で気持ちは前を向いていたという。
「ドレッシングルームに戻ってからはアキレス腱断裂の判断が確定していたし、やり切って迎えた結果だったので、落ち込むよりも、その瞬間から次回大会に向けてどうなっていくかしか考えていなかった。心配の声とかありがたい言葉をいただいて、パワーをいただいたし、自分としては落ち込んでいなかったので、そこでは本当にプラスのエネルギーをもらったと考えている」(中山)
だからこそ長いリハビリ生活も前向きに過ごしてきた。「常に自分がどうなりたいか、どうなっていくかを頭で考えて、自分自身に期待して、信じてやっていくということを考えていた。悲観的になることはなかった」。自身が出場できなかったW杯も「悔しさというより仲間の活躍を素直に喜べたし、逆にクロアチア戦では悔しかった」と共闘する思いだったようだ。
そんな中山は今年8月8日、カラバオ杯ミドルスブラ戦で実戦復帰。先発から86分間のプレータイムを重ねた。その後はチャンピオンシップ(イングランド2部相当リーグ)でも徐々に出場時間を増やし、9月20日のストーク・シティ戦以降は5試合連続で先発出場。代表復帰にもゴーサインが出され、10月シリーズで第2次森保ジャパン初合流を果たした。
10月シリーズでの復帰は、まさに中山自身が思い描いてきたタイミングだった。
「僕自身、自分に対して冷静に判断できていたし、自チームでの状況もあったけど、9月のドイツ戦はないなと単純に思っていた。ただドイツ戦を観戦させてもらって、10月に帰りたい、タイミング的にここしかないなと思っていた。スピリチュアルな感じだけど、確信があってここに戻ってこられた」。そう笑顔で明かした。
13日のカナダ戦、17日のチュニジア戦でピッチに立つ機会があれば、昨年9月23日のアメリカ戦以来1年ぶりのA代表出場。だが、中山は「短かったなと思います」とサラリと振り返る。
「短く思えたのはその期間が充実していたから。言い方が合っているかは分からないけど、楽しんでその期間を過ごせていた。怪我をしてから今まで、苦しい時間は一つもなかった」。その胸中にあるのは怪我を乗り越えたという感慨でもなく、怪我の遅れを取り戻すという悲壮感でもない。新たな姿を見せられるという自分自身への期待だ。
「どんな状況にもかかわらず代表レギュラーの座は取っていきたいと強く思っているし、W杯を逃したからというのは関係なく強く持っている。今までの期間は関係ないと思っている」
そう力強く語った中山は復帰戦のプレーイメージについて「そこはプレーを見ていただいて評価していただきたい」と断言。「怪我を治すという意識で取り組んでいたのではなく、“新しい中山雄太”として帰るというのを頭に置いてやっていたので、それがプレーに表れればいい」。まずは言葉ではなくパフォーマンスで、この1年間の奮闘を表現していく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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Source: サッカー日本代表
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