[10.9 選手権宮崎県予選3回戦 延岡学園高 1-0 延岡工高 綾町小田爪陸上競技場]
第102回全国高校サッカー選手権宮崎県予選3回戦が9日に行われ、延岡学園高が1-0で延岡工高に勝利。延岡学園は14日の準々決勝で宮崎一高と戦う。
「南国の技巧派軍団」延岡学園がベスト8進出だ。相手を押し込み、ゴールへ迫り続けた前半の31分、延岡学園は左中間でボールを受けたMF尾込脩也主将(3年)がDFの股間を狙う形でスルーパス。FW西田勇樹(3年)が外側からPAへ走り込み、左足で浮かせた技ありシュートによってゴールを破った。
延岡学園は2015年から本格強化。テクニックや技術的な面に徹底的にこだわり、魅力あるサッカースタイルを展開することを目指してきた。実際に、司令塔のMF森内大翔(3年)や攻守に一際存在感を放っていたMF島津康太(2年)と1タッチパスや身のこなしの光るFW島津啓太(2年)の“島津ツインズ”が中心となってボールも、人も良く動く。
そして、「(自分たちの代はドリブルよりも) 狭いスペースにどんどん走り込んで技術で崩す、という感じですかね。(その中で自分は)チームのために走る。自分が点取ったり、アシストしたりしなくても、相手の深い陣地を取って自分たちが優勢なボール回しができるように普段意識しています」という尾込、最前線でスキルとスピードを発揮する西田、交代出場のMF鈴木魁人(2年)が決定機を創出していた。
だが、延岡工は最後の局面で粘り強い。また、CB川口兼五主将(3年)の奪い返しなどから10番FW臼井康真(3年)のポストプレー、FW松本涼(2年)のスピードを活かした攻撃で攻め返す。試合終了間際には5人同時替え。そして、アディショナルタイムにはPAの臼井へボールが通ったが、延岡学園はシュートを打たせずに1-0で試合を終えた。
延岡学園の大羽洋嘉監督は“技巧派軍団”“セクシーフットボール”の野洲高に教えを請うために滋賀県まで足を運ぶなど、目指すサッカーを表現するために精力的な行動。MF乾貴士(現清水)らを輩出したセゾンFC(滋賀)の創設者、総監督で、野洲の05年度選手権優勝の功労者でもある岩谷篤人氏(現延岡学園アドバイザー)の協力などを得て、8年掛けてチームの土台を築いてきた。
大羽監督は「セゾンの岩谷さんにチーム作りを一緒に手伝ってもらっていて、そのノウハウを継承したいなっていうので、昨年は6か月くらい延岡に住んで頂き、本格的改革、本気でやっていくために色々なものを教えて頂きました。日常を6か月くらい見て頂いて、そこからだいぶ変わりました。僕もまだ理解できていないところがたくさんあって、毎日の時間の使い方は全然違うなと感じました」という。
尾込は学んだことを説明する。「(岩谷アドバイザーからの教えで特に変わったのは)守備や狭いところの崩し方、あと相手の足の止め方。足止めたらどうしても股が空くので、その時に股を通したりとか、自分たちの頭の中になかったイメージが頭に入ってきた」。延岡学園のサッカーに憧れて進学してきた主将は3年間で成長。この日は相手の足を止めて出したスルーパスで決勝点をもたらした。
2年前に人工芝グラウンドが完成。指揮官も感謝するように、学校のサポートも大きい。その中で、チームは“ノベガクスタイル”を磨きながら着実に成長を続けている。昨年のインターハイ予選、昨年と今年の県新人戦で3位に入り、今回も県8強入り。だが、大羽監督が「人とボール動くようになってきて、サッカーができるようになってきているんですけれども、PAの中だけがガチャガチャしていて。あそこが一番の見せ所なんですけれども……」と苦笑いする内容だった。再三ゴール前に攻め込みながらも最後の局面で冷静さを欠き、1ゴールのみ。今年の課題となっている部分だけに、より突き詰めて今後の戦いへ向かう。
大羽監督は「去年、準々(決勝)で落としてしまっているので、まずはベスト4に行って、準決を。有料試合ですし、箔のあるゲームで色々な人にこのサッカー、本気でこういうことにチャレンジしているところを見てもらいたい」と語り、尾込も「準決勝は有料でお金払って見に来てくれていますし、宮崎県にもこういうチームがあるんだよと全国に示したい。自分は鹿児島から親元を離れて来ているので、さらなる高いステージで自分の成長した姿を見せれたら良いなと思っています」と力を込めた。
「南国の技巧派軍団」の目標は宮崎制覇。以前は2桁失点して敗れることもあったが、ブレずにチャレンジを続け、壁を破るための取り組みもしてきた。まずは県1部リーグ3位・宮崎一との準々決勝突破に集中。そして、大舞台で延岡学園のサッカーを全力で展開し、勝つ。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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