[4.6 プレミアリーグWEST第1節 静岡学園高 1-1 大津高 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド]
前回王者・大津が執念のドロー――。6日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 WEST 第1節で静岡学園高(静岡)と昨年優勝の大津高(熊本)が激突。後半45+3分に大津のU-17日本高校選抜DF村上慶(3年)が同点ゴールを決め、1-1で引き分けた。
ホームの静岡学園は2022年のプレミアリーグWEST4位で2023年は同3位。昨年度は9位に終わったものの、インターハイと選手権でいずれも8強入りしており、その経験者を数多く残している。この日の先発はGKが有竹拓海(3年/U-17日本高校選抜)で、右SB松永悠輝(2年)、CB吉田俐軌(3年)、CB塚田哲也(3年)、左SB石川舞偉(3年)、中盤センターを山縣優翔(3年)と篠塚怜音主将(3年/U-17日本高校選抜)、藤原晃太郎(3年)で構成し、右SH神吉俊之介(3年)、左SH四海星南(3年)、、そして1トップを佐々木雄基(3年)が務めた。
一方の大津は昨年のプレミアリーグWESTで高体連勢として初優勝。ファイナルでも勝利し、公立校として初のプレミア王者に輝いている。開幕前のサニックス杯とPUMA CUP U-17 in SAKAIでいずれも連覇と新チームは好調のまま開幕戦へ。この日の先発はGK村上葵(3年/U-17日本高校選抜)、右SB開地心之介(3年)、CB今井獅温(3年)、CB松野秀亮(3年)、左SB渡部友翔(2年)、中盤中央を福島悠士(3年)、福島京次主将(3年)、村上慶で構成し、右SH岩崎天利(3年)、左SH有村颯太(3年)、そして最前線に山下虎太郎(3年)が構えた。


昨年度前期の静岡学園ホームゲームは大津が8-1と圧勝。後期も2-1で勝利しているが、2022年、2023年の開幕戦は4-0、5-1といずれも静岡学園が快勝している。最近4年間で3度目となった開幕戦での対戦は、互いに特長を思うように出せないような90分間となった。
大津の山城朋大監督が「(静岡学園が)かなり強いっていうのは分かっていたんですけど、ただ、(ボールを繋ぐことなど攻撃面が)もうちょっとできると思っていたんです。それ以上に、向こうの中盤の出足の良さに何もできなかったっていうゲームかなと思います」と語り、静岡学園の川口修監督も「(静岡学園のスタイルを)出させてもらえなかった。(今年のチームが)これだけボール握れないのは初めて。初めてこれだけできなかった。それぐらい、やっぱり(大津の)強度が高かった」と首を振る。
前半は互いに相手の良さを出させないことに成功。公式記録上のシュート数は大津の2に対し、静岡学園はゼロだった。大津は立ち上がり、速攻からインサイドで先発した村上慶がシュート。また14分には、セットプレーから松野が決定機を迎える。だが、全体的に静岡学園の出足の速さに苦戦。この日攻守に存在感のある動きを見せていた左SB渡部のパスで山下がポケットへ潜り込み、村上慶の推進力のある動きとサイドチェンジから有村や岩崎が縦に仕掛けてクロスを上げていたが、得点に結びつけることができない。
一方の静岡学園は山縣や内側にポジションを取る石川、松永の両SBがボールに係わりながらポゼッション。神吉がDFの股間を通すドリブルで前に出たほか、相手の村上と激しいマッチアップを繰り広げていた山縣がハイサイドへの正確な展開を見せる。そして、左SB石川がインターセプト、佐々木とのパス交換からシュートへ持ち込もうとした。


加えて、篠塚が積極的にボールを引き出すなど、ポゼッションする時間は相手以上に長かったものの、アプローチの速い相手の前に静学らしいドリブルやショートコンビネーションを発揮することができない。それでも、相手の速攻を俊足MF藤原が一人で止め切ったほか、前への強さと高さを見せる吉田と、同じく前への強さとスピードを活かしたカバーリングも魅力の塚田の両DFも大津の攻撃を良く食い止めていた。
また、静岡学園はGK有竹が安定したキャッチングを続ける。一方の大津は開地と渡部の両SBが味方と連動しながら相手SHのドリブルを封鎖。静岡学園は苦しい攻撃になり、縦パスも今井や松野に阻まれてしまう。38分には四海と藤原をポジションチェンジ。41分には神吉が右サイドからPAへ潜り込み、こぼれ球に詰めようとするが、大津GK村上葵が飛び出して決定打を打たせない。




だが、静岡学園は四海がインサイドに入ったことで攻撃が好転。後半5分には藤原の左クロスに篠塚が飛び込み、10分には右中間で神吉からのパスを受けた佐々木の左足シュートがゴールを脅かす。そして11分、静岡学園は敵陣でボールを奪い返すと、右中間の佐々木がわずかにDFをずらして左足シュート。この一撃がゴールに突き刺さり、静岡学園が先制した。




この後もポゼッションしながらゲームを進めようとする静岡学園に対し、大津は17分に有村をMF山本翼(2年)へスイッチ。3バックへ移行し、村上慶を右DFへ下げた。
試合終盤にかけ、主導権は大津へ移行。「相手の奪い返しが速くて、奪い返されるシーンが多かったんで、後半は奪ったらすぐ近くの人にパスを出して、また(局面を)変えてっていういつもやっていることをしっかりやろうっていうことを話していました」という福島京と福島悠を軸にパスのテンポが上がり、静岡学園の出足を止める。前線で山下が良く身体を張り、山本、岩崎の抜け出しがセットプレー獲得やシュートに結びついていた。そして、再三左サイドから攻め上がる渡部が山下へクロスを通し、自ら右足シュートへ持ち込む。
静岡学園は31分に藤原をMF山田悠太(3年)へ交代。大津も36分に開地を右WB内村涼夏(3年)と入れ替えて反撃する。だが、静岡学園は篠塚と四海をはじめ、各選手の運動量、強度が落ちない。川口監督も「(デュエルの部分は自分たちの) 足りないところで、そこはアプローチして今日やろうよつって話していました。今日はほんと、守備のところはすごい良かったと思う」と評価する。45分、神吉をMF北田優心(3年)へ交代。だが、試合を締めることができなかった。
大津は45+3分、敵陣左中間でFKを獲得。これを福島京が「直接入るか入らないかのボール」を意識してゴール前に蹴り込む。静岡学園がクリアできずに抜けたボールが右ポストをヒット。跳ね返りを村上慶が頭で押し込み、1-1の引き分けに持ち込んだ。




大津を苦しめながらも土壇場で追いつかれた静岡学園の川口監督は「お互い守備の中で形を作ったり、決定的な仕事ができる選手だったり、そういうところが出てこないといけない」と攻撃面について指摘。一方、大津の福島京は新チームのプレミアリーグ初戦について、「プレミアリーグの難しさっていうのを思ったのと同時に、まだまだ自分たちはプレシーズンのようなサッカーがプレミアリーグではできないなっていう課題が見つかったなっていう感じでした」と悔しがる。それでも、“高校年代最高峰のリーグ戦”を制した偉大な先輩たちの背中を見てきたチームはこの日、思うような戦いができない中でも11人が球際、切り替え、運動量を徹底。主導権を握った後半半ば以降、諦めずに攻め続けて勝ち点1を獲得した。
山城監督は「『去年は去年、今年は今年』っていうことを(テクニカルダイレクターの)平岡(和徳)先生にずっとしつこく言われて。今年は今年の良さがあるし、ほんとに中盤の握り合いで今年は勝負しようと思っているんですけど、またこの基準を練習に活かしてやっていけば、もっといい試合ができるかなと思います」と頷く。福島京も「今日でプレミアリーグのレベルというか、スピード感っていうのが分かったと思うんで、これをチーム全体に浸透させていって、来週、しっかり勝ち点3を取れるように頑張っていきます」と誓った。「去年は去年、今年は今年」。大津は執念の同点ゴールや守備面など先輩たちの強さを受け継ぎながら、今年の良さを磨き上げてプレミアリーグや夏冬のトーナメント戦で進化を示す。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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