開幕戦の悔しい敗戦を受けて立ち返ったのは伝統の「サガン鳥栖らしさ」というベース。鳥栖U-18は静岡学園に3発快勝で日高拓磨監督体制初白星!

サガン鳥栖U-18はMF加藤孝一朗のゴラッソで先制点を奪う!
[4.12 プレミアリーグWEST第2節 鳥栖U-18 3-0 静岡学園 佐賀市健康運動センターサッカー・ラグビー場]

 それはもちろん内容も良くて、試合に勝つことが一番いいけれど、このリーグはそんなに甘いステージではない。だからこそ、貫くべきことがある。自分たちらしさ、つまりはサガン鳥栖らしさのベースを惜しみなく出し切ること。それに求めるものが付いてくると信じて、とにかくピッチを縦横無尽に駆け回るんだ。

「前節の広島戦で決め切れずに勝てなくて、全員が悔しい想いをしたので、この1週間は決め切るところは全員で意識してやってきた中で、3点決められて勝てたことも良かったですけど、それ以上に無失点で抑えられたというところが自分的には一番良かったかなと思います」(サガン鳥栖U-18・東口藍太郎)

 ホーム開幕で披露した、クラブのアイデンティティを体現するような圧巻の快勝劇。12日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2節で、サガン鳥栖U-18(佐賀)と静岡学園高(静岡)が激突した一戦は、MF加藤孝一朗(2年)、MF池田季礼(3年)、FW山村チーディ賢斗(3年)がゴールを重ねた鳥栖U-18が3-0で勝ち切って、日高拓磨新監督体制下での初白星を手繰り寄せた。

「立ち上がりから前からの圧が凄くて、守備では球際のデュエルのところを凄く意識してやっているチームかなと感じましたね」と静岡学園を率いる川口修監督が話したように、序盤からパワーを打ち出したのは鳥栖U-18。山村とFW真殿京佑(2年)の2トップを旗頭にした高強度のハイプレスで相手を押し込み、一気にゲームリズムを奪い取る。

 すると、スコアが動いたのは前半19分。左サイドからDF鈴木颯真(2年)が投げ入れたロングスローから、いち早くこぼれ球に反応したFW水巻時飛(3年)の落としに加藤は右足一閃。凄まじい軌道は右スミのゴールネットへ美しく突き刺さる。「右サイドの方を狙いましたけど、ああいうのは全然決めたことがなかったので、自分でもちょっとビックリしました」と笑った2年生ボランチのプレミア初ゴールとなるゴラッソが飛び出し、まずは鳥栖U-18が1点をリードする。

 以降も流れはホームチーム。「相手の1トップ2シャドーに対して、今日の試合に関しては『ボールにアタックしましょう』というところでやりました」と日高監督も話したように、少し流動的な相手のアタックにもDF黒木雄也(3年)とDF岩村淳之介(3年)のセンターバックコンビを中心に、ボールのある位置を見極めながら冷静なポジショニングで対処。41分には静岡学園もFW佐々木雄基(3年)、MF四海星南(3年)と繋いだボールをMF北田優心(3年)がシュートまで持ち込むも、鳥栖U-18のキャプテンを務めるMF東口藍太郎(3年)が身体でブロック。前半は1-0のままで45分間が終了した。

 後半も鳥栖U-18の勢いは止まらない。2分。岩村の鋭いサイドチェンジを起点に、右サイドを水巻が切り裂いて中へ。飛び込んだ池田は「思ったよりボールが緩かったので『トラップして打とう』と思って、トラップした時にニアが空いているのは見えたので、冷静に流し込めたなと思います」と利き足とは逆の右足で、ゴール右スミへボールを丁寧に滑り込ませる。池田もこれがプレミア初ゴール。2-0。点差が開く。

 8分も鳥栖U-18。右サイドから東口が上げたクロスに、池田がジャンピングボレーで枠へ飛ばしたシュートは、静岡学園GK有竹拓海(3年)がファインセーブ。11分も鳥栖U-18。東口の果敢なインターセプトから山村が右へ振り分け、水巻が打ち切ったシュートはここも有竹が何とかキャッチしたものの、「今年のコンセプトのハイプレス」(池田)からフィニッシュまで持ち込むなど、守から攻の切り替えも抜群。漂わせる追加点の香り。

 21分に現れたのは「練習通りの形」(山村)。東口のパスを受けたDF原口幸之助(3年)は完璧なスルーパスを右サイドへグサリ。走ったFW下田優太(2年)がグラウンダークロスを流し込むと、ニアに入った山村が綺麗にボールをゴールネットへ送り届ける。「いったんファーに入って、マーカーを剥がしてからニアに入ろうかなと。最短距離みたいな感じをイメージしていました」という9番が仕留めたストライカーらしいゴール。3-0。水色の歓喜がピッチサイドで弾ける。

 反撃したい静岡学園も後半途中で投入されたMF山田悠太(3年)をアクセントに、少しずつ敵陣で形を作る回数は増えていくものの、34分にMF山縣優翔(3年)がFW坂本健悟(2年)とのワンツーから放った枠内シュートは、鳥栖U-18GK谷泰養(3年)が丁寧にキャッチ。1点が遠い。

「今日の試合はチーム全体で決めるところは決めて、1点も獲らせないで絶対勝とうとみんなで話していましたし、球際の部分でもしっかり戦えて、ゴール前のチャンスでも決め切ることができたので、それが結果にも繋がったかなと思います」(加藤)。最後までハードワークを怠らず、攻守にアグレッシブさを打ち出し続けた鳥栖U-18が、ホームで勝点3をもぎ取る結果となった。

 サンフレッチェ広島ユースと対峙した開幕戦は、鳥栖U-18にとって小さくない学びを得る試合だった。前半開始から数回の決定機を掴みながら、得点を奪うことができず、カウンターから先制点を献上。後半にもPKから2失点目を与え、1点こそ返したものの、1-2で敗戦。シュートは相手の倍以上の本数を記録し、内容も良かっただけに、より悔しさが募る一戦となった。

 だが、選手たちはポジティブな要素を抽出して、すぐに前を向く。「前節の試合が終わった後にすぐ、『全然悲観する内容ではなかった。ブレずにやっていけば絶対結果は付いてくるから』という話をして、今週のトレーニングに入っても、もう選手たちもブレずに良い準備をしてきてくれました」(日高監督)

 この日も前節同様に立ち上がりからラッシュを仕掛け、「凄く良かった入りの時間帯で決め切れなかったのが広島戦に負けた原因だったので、今日はそこで点を獲りたいというところで、孝一朗がスーパーゴールを決めてくれたことが大きかったと思います」と東口も言及したように、今回はきっちり先制点を記録したことで勇気を得たチームは、結果的に3-0での快勝を引き寄せている。1週間での改善と修正が結果に結び付いたという意味でも、大きな自信を得る90分間になったことは間違いない。

 プロ入りからの5シーズンを鳥栖で過ごし、2018年にアカデミーの指導者としてクラブに帰ってきた日高監督は、改めて今シーズンのチームに求めていることを、こう語っている。

「自分はサガン鳥栖に帰ってきて8年目で、今まで7年間見てきた部分で、『サガン鳥栖はこういうチームだ』というのはだいぶわかっているので、そこを再確認するというか、特にハードワークする部分のベースは、改めてしっかり強調しようかなと思っています」。

「それこそ『積極的にボールを奪いに行くこと』『ハードワークすること』『切り替えを速くすること』『球際で負けないこと』というところはサガン鳥栖として伝統的に大事にしてきたところで、それは僕だけではなくて、全カテゴリーの指導者が軸に持っているところだと思います。そういう『サガン鳥栖と言えば』みたいなところを大事にしていきたいですよね」。

 開幕2試合目で掴んだ、今季を戦う上での確固たる中心軸。迷いなくベースに置くのは、多くの先人たちが地道に築いてきた『サガン鳥栖らしさ』という伝統の献身性。情熱の新指揮官に率いられた2025年の鳥栖U-18は、どのチームにとっても厄介な対戦相手になってくるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)


●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
Source: 大学高校サッカー

コメント

タイトルとURLをコピーしました