[九州総体]攻略するアイディア、堅守も見せた神村学園がインハイVへ収穫ありの九州制覇。目標達成のため、「自分たちはもっと頑張っていかないといけない」

神村学園高が2012年大会以来の九州総体優勝
[6.23 九州高校総体決勝 神村学園高 3-0 飯塚高 島原市営陸上競技場]

 九州制覇の神村学園が次は日本一に挑戦ーー。令和7年度 全九州高等学校体育大会 第77回 全九州高等学校サッカー競技大会男子決勝が23日に長崎県の島原市営陸上競技場で行われ、神村学園高(鹿児島1)と飯塚高(福岡1)が対戦。神村学園が3-0で勝ち、2012年大会以来2度目の優勝を飾った。

 九州新人大会との2冠のかかる神村学園は大分高(大分2)、東福岡高(福岡2)にPK戦で勝利し、準決勝では佐賀東高(佐賀1)に6-0で快勝。決勝の先発はGKが寺田健太郎(3年)で、DFは堀ノ口瑛太(3年)、中野陽斗主将(3年/U-18日本代表)、今村太樹(3年)の3バック。右WB竹野楓太(2年/U-17日本代表)、左WB荒木仁翔(3年)、ダブルボランチが福島和毅(3年/U-18日本代表)と岡本桂乙(3年)でトップ下が新名優樹弘(3年)、そして2トップを日高元(3年/U-17日本高校選抜候補)と倉中悠駕(3年)が務めた。

 一方、飯塚は今大会、Aチームのサブ組中心の陣容ながら那覇高(沖縄2)、鹿児島城西高(鹿児島2)を破り、準決勝でも大分鶴崎高(大分1)に0-0(PK4-3)で勝利した。決勝の先発はGKが小田詩文(2年)でDFは貞金大樹(2年)、ゲーム主将の鄭晃大(3年)、石井颯人(2年)の3バック。右WB権藤昊(2年)、左WB中野瀧(2年)、中盤は大橋翔太(3年)が底の位置に入り、インサイドが恒松海吏(3年)と鶴元銀乃介(3年)、そして2トップを杉本凛琥(2年)と宮原脩斗(2年)が務めた。

決勝は神村学園vs飯塚に

 飯塚は序盤の接触プレーで中野が負傷し、わずか9分でMF野村滉(3年)と交代するアクシデント。だが、雨中でコンパクトな陣形を維持しながら、杉本と宮原が前からプレッシャーを掛けて幾度か相手のミスを誘うことに成功していた。そして、速攻から宮原が左足シュートを打ち込み、鶴元や野村がキープ力を活かして前進。ボールを保持されて押し込まれる時間が増えるも、相手のクロスを鄭が良く跳ね返していたほか、右サイドで運動量を増やした権藤や恒松、大橋の奮闘も光った。

飯塚はゲーム主将のDF鄭晃大中心に健闘
飯塚のMF鶴元銀乃介はキープ力を活かしてゴールを目指した

 だが、神村学園は個々の力とゴールへ向かう姿勢で差を生み出す。11分、キレのある動きを見せる新名が鋭いターンから前へ。福島、日高と繋いで右へ展開し、竹野が縦突破からクロスを上げ切る。16分にも前からの守備で相手のミスを誘うと、福島が中央でDFを強引に剥がして前進。ラストパスを日高が左足で狙った。

 神村学園はともに迫力のある日高、倉中の2トップに加え、推進力と鋭い切り返しを繰り出す竹野、左足で浮き球パスなどを配給する荒木の両ワイドやドリブルで攻め上がってくる今村らも交えて多彩な攻撃。そして、23分には敵陣右中間で日高がボールを奪い返す。力強いキープから左足で斜めのスルーパス。これを倉中が左足ダイレクトで決め、先制した。

前半24分、神村学園は敵陣での奪い返しからFW日高元がラストパス
これをFW倉中悠駕が左足ダイレクトで決めた
2トップでゴールを奪った

 神村学園の有村圭一郎監督は「こういう風にブロック敷かれて守られてってなると、ボールを回してるだけで入っていかないみたいなのが今までの彼らだったんですけど、今日は縦パスを入れながら、ちょっと空間使いながらのアイディアとか、そういうところがちょっと見えてきたので。ゴールへのイメージはちょっと持ちながらやってんだろうなっていうのはありました」と評価する。

 神村学園は29分にも岡本の跳ね返しから倉中が一気に仕掛けて右ポスト直撃の左足シュートを放った。さらに福島が右足ミドルやスルーパスにチャレンジ。後半開始からは新名と倉中をMF花城瑛汰(2年)と準決勝3得点の“スピードスター”FW徳村楓大(3年)へ入れ替え、相手により圧力をかけた。

 神村学園は福島が抜群のキープ力で相手の出足を止め、竹野のクロスや徳村のドリブルシュートなどでゴールへ迫る。10分には花城の奪い返しから岡本が1タッチの右足ミドル。ボールはゴール右上を捉えたが、飯塚はシュートセーブ、飛び出しで奮闘するGK小田が弾き出す。

神村学園のU-18日本代表MF福島和毅は雨中でゲームコントロール

 だが、神村学園の前からの守りも鋭く、堅い。GK寺田の守るゴールに近づけることなく、鉄壁の守りを見せる中野や堀ノ口、今村、岡本がボールを奪い返していた。有村監督は守備を評価した一方でDF陣がボールを持つ時間が増えて「嫌なカウンターを受けるような気配があった」ことを指摘。実際、雨でスピードが緩くなったパスを奪われるシーンもあっただけに、修正する必要性を口にしていた。

神村学園のU-18日本代表DF中野陽斗主将は相手の仕掛けを止め切るなど守備能力を発揮

 飯塚は鄭や貞金、石井が粘り強く守るなど1点差のまま食い下がると、9分に鶴元をDF中元悠晴(2年)と入れ替え、17分には杉本とFW三日市証(2年)を交代。そして、4-2-3-1システムに代えて勝負に出る。だが、24分、神村学園は自陣右サイドで堀ノ口がボールを奪うと、相手のプレスを外してロングパス。これに反応した徳村がDFの後方から強引に前へ出ると、GKをかわして右足シュートをゴールへ流し込んだ。

後半23分、神村学園は交代出場FW徳村楓大が縦パスに反応。GKをかわす
そのまま右足シュートを決め、2-0

 この試合最大級のビッグプレーを有村監督も称賛。また、中野は「相手のシステムだったり、相手の立ち位置だったりが変わってきている中でも、相手のやりたいことをディフェンス陣が集中して止めて、そして自分たちがボールを保持しながらサッカーができたっていうのが、勝ちに大きく繋がったのかなと思います」と頷く。神村学園は直後に日高とMF伏原俐空(2年)を交代すると、26分に花城が左サイドからの右足CKを直接決めて3-0とした。

後半26分、神村学園は2年生MF花城瑛汰が直接CKを決めた
これで3-0

 神村学園は33分に堀ノ口と竹野をDF鎌田心(3年)とMF細山田怜真(3年)へ交代。直後には荒木の左足ループシュートがゴールへ向かう。だが、諦めずに戦う飯塚は中元がスーパークリア。また、飯塚は大橋や恒松がパスを差し込もうとするなど1点を目指す。アディショナルタイムには野村と宮原をMF今泉瑛翔(2年)とFW玉置大翔へ交代。だが、スコアは変わらず、神村学園が3-0で勝利した。

飯塚はMF恒松海吏らが諦めずに攻めるも、準優勝
神村学園は九州2冠、女子とのアベックVを達成した

 神村学園は九州2冠に加え、女子とのアベックVも達成。今大会、神村学園は登録20人中17人が3年生で、19人が先発するなど全員が45分間以上ピッチに立って20人で勝ち切った。中野は「毎年下の学年が出てくる中で、今年はチーム層っていうのが結構厚い方だなと自分は感じていて、誰が出てもやりたいようなことはできますし、誰が出てもいい方向に進んでいく自信があるので、そこはチーム一丸となれるかなと思っています」と説明する。

 3日間で計4試合の大会を終え、有村監督は「PKとかも今回2回できたんで、凄くそういう意味では色々なシミュレーションもできて良かったかなと思います」と振り返る。そして、「相手が強度を上げてきても、そこに耐えられるぐらいになってきているから、やっぱりこっちからアクションを仕掛けてもぎ取りに行けるとか、そんなところをもうちょっと、プレミア(リーグ)で、今度鳥栖戦(28日)なんでそこにちょっと試してみたいなっていうのはあるし、鳥栖のこの攻撃のところも、後ろがしっかり抑えきれるかどうかっていうのも含めて、色々な判断材料にしたい。そこはきっちりやっていきたいなっていう風に思います」と語った。

 中野は「まずは来週、プレミアがあって、プレミアも落とせないですし、それが終わってからまた夏はインターハイがあるので、そこに向けて個人としてもそうですし、またチームとしても大きく成長しないと優勝っていうのは絶対掴み切れないので、まずは自分から厳しくやっていかないといけないなと思います」とコメント。インターハイの目標は前回大会で敗れた決勝に戻り、優勝することだ。「今年は強いチームが多いので、そのいいチームとやれるように自分たちはもっと頑張っていかないといけない」と中野。ここから個人、チームがまた成長し、トーナメント戦を勝ち抜く力を身につける。

(取材・文 吉田太郎)


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Source: 大学高校サッカー

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