日本サッカー協会(JFA)審判委員会は2日、都内でメディア向けレフェリーブリーフィングを開催した。2025-26競技規則の改正点が主に扱われ、佐藤隆治JFA審判マネジャーが「ゴールキーパーが自分のペナルティーエリア内で、ボールを放すまでに手や腕で8秒を超えてコントロールした場合、コーナーキックが与えられる」新“8秒ルール”の運用などについて説明した。
▽8秒ルール
今夏の改正で最も注目を集めるのが、GKのボール保持に関する時間制限と再開方法の変更だ。これまでは時間制限が6秒で違反時は相手の間接フリーキックで再開されていたが、GKが時間を浪費する傾向にあることを受けて、新競技規則では時間制限を8秒とした上でCKでの再開にするルールに変更された。開催中のクラブワールドカップで早速導入されており、従来の6秒ルールよりも厳格に計測されている。
佐藤氏は「一番の焦点はどのタイミングでカウントダウンが始まるかだと思います」と話し、「ボールをキャッチして伏せている状態で(カウントを始めなくて)いいかといったらそうじゃない」と説明。「すぐに始めることはないですけど、レフェリーが『十分に次のアクションに動かせる』と判断したところからスタート」するといい、GKが立っているか伏せているかは関係ないことを強調した。その上で「周りに選手がいる時はまだカウントは始めません」と佐藤氏。ボールを手放せる状態であることが計測を始めるポイントのようだ。
もっとも相手選手がGKのリリースを妨げて時間を稼ぎ、CKを獲得しようと試みる懸念も生じる。そうした行為に対して佐藤氏は「反則の笛を吹いて(GK側の)間接FKで始めることをセットできちっと取っていかないと」と話し、「もし邪魔をするようなアクションがあったらまずそこで罰する」とレフェリング基準を示した。カウントダウンのスタート後に相手選手が近づくなどしてボールを手放せない状態になった場合、カウントダウンを一度止めて後に再開することはせず、その時点で相手選手のファウルと判定するという。
なお主審は残り5秒から「5、4、3」と声で残り時間を伝えるとともに、片手を挙げて腕を振りながら1カウントごとに指折り式でカウントダウンを行う。ただ佐藤氏は「カウントダウンをするといっても、厳密に数字を出されたら一つずつのカウントが1秒以上ありますよということがあるかもしれない」と話し、目的は罰することではなく「キーパーがボールを早くリリースしてプレーを続けること」と強調した。


その上で「試合が終わるまでボールがどんどん動いてプレーが続くという意味では非常にポジティブに」運用していく構え。佐藤氏は選手への協力を求めるとともに、審判員に対しても「あくまでも目的は何のためにやっているか。CKを取りたくないから許すのではなくて、いかに(GKのリリースを)早くやらせるかが大事」と方針を話した。
▽キャプテンオンリー(競技会によって適用有無を判断可能。Jリーグは適用未定)
また、新競技規則からは競技会ごとに任意で「キャプテンオンリー」と称されるルールを採用できる。「主審の判定に不服で取り囲んだり必要以上に時間を掛けたり」する行為を抑制するためのもので、主審は必要に応じてキャプテンか事象に関わった選手に対して判定を説明。その際、各チームから通常はキャプテンの1選手のみが主審と話すことができ、その他の選手が主審に近づいた場合はイエローカードの対象になる可能性がある。
もっとも佐藤氏はこのルールを適用した場合でも、「必ず主審がキャプテンとしか喋らないということではなく、必要に応じて(他の選手とも)喋る」と強調。抗議で選手が集まるような場面などにおいて、他の選手が主審に近づけないものだとした。
ただこのルールの下でも、キャプテンは従来と同様に異議を示すことは認められない。佐藤氏は「お互いにリスペクトの気持ちを持って接する必要がある。審判側もそうですし、キャプテンであってもそこは崩してはいけません」と説明。また、キャプテンはチームメイトを主審から遠ざける役割も担うことになる。
なおGKがキャプテンを務めるチームでは、GKが毎回主審のもとへ向かう負担を避けるため、コイントスまでに主審と話す担当選手を決定して主審に伝えることになる。佐藤氏によれば外国籍選手がキャプテンを務める場合であっても、主審とコミュニケーションを取るために「キャプテンオンリー」の担当選手を決定することができるという。
その他の主な改正点は以下の通り。Jリーグでは8月から適用開始となり、全国高校総体(インターハイ)や日本クラブユースサッカー選手権(U-18・U-15)大会、全国中学校サッカー大会といった今夏に予定されている育成年代の全国大会でも適用される。JFAは公式Youtubeチャンネルで説明映像を公開している。
▽ドロップボール
ペナルティエリア外にボールがある状況で試合が止まってドロップボールとする場合、ボールを保持していたであろうチームが明確なときは触れる前でもそのチームへのドロップボールとする。はっきりとしない場合は最後に触れたチームへのドロップボールとする。
▽チームスタッフやベンチメンバーがインプレー中のボールに触れた場合
ピッチから出そうになっていたボールに誤って触れてしまって、不当に影響を与えようとする意図がない場合、カードの対象とはせずに間接FKで再開する。
▽PKキッカーが偶発的に連続してボールに触れた場合
キッカーが軸足を滑らせるなどして、偶発的に蹴り足と軸足の両方でボールを蹴ってしまう場合がある。そのキックがゴールに入った場合、これまでは守備側の間接FKとしていたがPKのやり直しとする。キックが失敗するか意図的に両足で同時にボールを蹴った、もしくは他の選手が触れる前に意図的に再び触れた場合は間接FKとする。
(取材・文 加藤直岐)
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