26シーズンからJリーグのプロ契約制度が大きな変革を迎えることになる。Jリーグはクラブの経営難が相次いだ1999年から「ABC契約」を採用してきたが、新人選手の年俸に上限を設けることで自由競争の欧州との乖離が生じ、高卒・大卒選手がJクラブを経由せずに海外挑戦を選ぶ要因の一つとなっていた。
この問題を巡っては日本プロサッカー選手会(JPFA)会長のDF吉田麻也(ロサンゼルス・ギャラクシー)が就任当初から「ちょっと時代にそぐわなくなっているんじゃないか」などと述べ、見直しに意欲を示していた。そしてJリーグは24年9月に行った理事会においてABC契約の撤廃を決定。プロ契約締結初年度の報酬上限規制を緩和や、基本報酬の下限を新設することを盛り込んだ選手契約の新制度を発表した。
契約が複雑化する中で、今後は専門家の介入が必要になってきそうだ。アマチュア選手の多くは、これまでスカウトが選手、もしくはチームの監督らと交渉する流れがあったが、代理人と契約する選手も増えてくるはず。実際に今夏、筑波大からデンマーク1部のブレンビーに加入したFW内野航太郎は、代理人と契約したことで話が飛躍的に進んだ背景がある。
内野は今年初めに初めて、代理人と正式に契約した。「海外に強い代理人をという選び方はしていない」というが、3月にはブレンビーへの練習参加の段取りが進み、トントン拍子で契約がまとまった。「自分に対してしっかりと接してくれる代理人で、実際に自分のために動いてくれた。大学生が海外に行くことは簡単なことではないけど、一緒に夢を掴みにいける代理人と契約できたのは良かったです」。
筑波大の小井土正亮監督も、代理人との契約が主流になっていくのではないかと話す。「代理人というと悪どいとか、ネガティブなイメージもあるかもしれないけど、必要な存在で、上手く付き合っていくことが大事になる。今までは所属の監督が対応すれば何とかなりましたが、国内でいっても年俸が上がる。じゃあこの選手の金額はどうなのか、(判断するのは)監督なのか本人なのか。(代理人は)必要な存在になっていくと思います」。
一方で、「我々がプロテクトしてあげないといけない」と危惧する声もある。J1クラブに内定したある選手によると、代理人を名乗る人物から試合後に直接接触があったり、個人のSNSにダイレクトメッセージが届く事案が幾度もあったという。「エージェントが引っ張っていくので、我々がプロテクトしてあげないといけない。海外から日本の大学生が狙い撃ちされている。ちょっと遅いけど対処しないとねとなっている」。そう話すのは、阪南大の朴成基監督だ。
そして来年からはシーズン移行もあって、学生のプロ入り時期が大きく変わっていくことになる。「プロ養成機関ではない」という自負を強く持つアマチュア側としては、大学であれば4年間を過ごしたあとにプロに進んでほしいという希望があるチームも多いが、例えば推薦入試の誓約書であっても法的な拘束力がないことから、選手の意思を尊重するしかないのが現実だという。
転換期に混乱が生じるのは仕方がないこと。今後の展開を見守っていきたい。
(取材・文 児玉幸洋)
Source: 大学高校サッカー
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