[9.20 プリンスリーグ東海第12節 富士市立高 0-3 清水ユース 富士市立高G]
プレミア復帰へ、首位・清水ユースが3-0で無敗キープ――。高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2025 東海は20日、第12節を行い、静岡県富士市の富士市立高グラウンドで8位・富士市立高(静岡)と首位・清水エスパルユース(静岡)が対戦。清水ユースがMF土居佑至(3年)の先制点など3-0で快勝し、今季の成績を9勝3分とした。
清水ユースはこの試合前まで開幕11戦無敗。後期の2試合はいずれも引き分けでこの日も富士市立にボールを保持される時間帯が増えていた。だが、澤登正朗監督が「(ピッチ状態も考慮して今週は)水、木、金(曜日)ってもうほんとに守備のトレーニングしかしていないです。(連続で行くことを)強調して、実際に紅白戦のところでも良かった。今日もそこは良かったと思います」というように、狙いとする守備から得点を奪い、無失点勝利。難しい試合展開で勝ち切るような強さも発揮し、2位・磐田U-18との勝ち点差5も維持した。
清水ユースは、いずれもトップチームに昇格するU-17日本代表左SB針生涼太(3年)と土居が先発出場。先発GKは後藤悠貴(3年)で、DFは右から岩永京剛(3年)、安本桜亮(2年)、岩尾健琉主将(3年)、針生の4バック、市川幸優(3年)と河波飛和(1年)のダブルボランチ、右SH山崎瑛晴(1年)、左SH杉山琥二郎(2年)、トップ下に土居、そして最前線に中村扇大(3年)が構えた。


一方の富士市立は藤枝内定のU-17日本高校選抜FW山崎絢心(3年)を擁し、近年台頭中の公立校。試合前まで3勝1分7敗でこの日はキーマンのMF小畑龍武(3年)を欠く陣容だったが、チーム状態を上げて来ていることを印象付けるような戦いを見せた。先発はGKが山本潤人(2年)、DFは右から青木利仁、細谷蒼太、望月周飛(2年)、鈴木悠斗(3年)の4バック。中盤はMF小林富司主将(3年)と杉山正宗(3年)が中央に入り、右が小山慶(3年)、左が竹内悠二(3年)、そして前線に山崎と増田伸羽が入った。
前半2分、清水ユースが先制点を奪う。中央から左へ展開し、針生が縦への動きから左足クロス。これを中村が左側へ落とすと、土居が右足ダイレクトでゴールネットに突き刺した。




先制した清水ユースは前線の中村と土居から相手のビルドアップに制限を掛けに行く。特に中村はGKにまで迫力のあるアプローチ。対する富士市立はベンチから「力を抜いて!」と声が飛ぶ中、慌てず、CB望月がボールを運び、小林や増田、山崎がタメを作る。また、竹内らが距離感良くボールを動かしながら前へ。16分には青木が右サイドから中へ切れ込み、こぼれ球を山崎が左足で狙った。
前半、清水ユースは左サイドの針生が存在感。ボールを奪いに来る相手の矢印を変えてドリブル突破し、クロスにまで持ち込んでいた。だが、ホームの富士市立は杉山秀幸監督のいう「90分間攻め続ける」「相手GKが持っている時も攻めに行く」姿勢を共有。攻撃的な姿勢で前に出て、杉山や細谷がボールを奪い返し、ボールを繋いでチャンスを作り出す。23分には青木と小山のコンビで右サイドを崩し、増田が決定的な右足シュート。24分には中盤の混戦から山崎がドリブルで一気に前へ出て、最後は切り返しから左足シュートを放った。


また、流れの中でゴール前に顔を出す左SB鈴木がシュートへ持ち込むが、いずれも枠を外れ、追いつくことができない。その後も山崎や増田がゴール前のシーンを作り出していたた、清水ユースは「自分はやっぱり声で引っ張る部分は大切にしているし、プレーでもそうですし、背中で語る部分も多くしていきたいと思ってるので、みんなが足りていない部分を自分が一番後ろからしっかり支えるような存在になっていきたいと思います」という岩尾と安本の両CBがラストパスを確実にクリアする。


清水ユースはボールを奪い切れなくても相手に連続で寄せて河波や市川が回収。その好守から追加点を奪う。41分、清水ユースは相手GK山本に対して前からプレッシング。これを剥がされたものの、中盤へのパスを狙った岩永がインターセプトする。そのまま右サイドからGK不在のゴールへ右足でロングシュート。これが決まり、2-0となった。




清水ユースはさらに山崎のスルーパスなどで追加点を狙う。一方、富士市立はボールを保持して主導権を握りながら2点ビハインド。後半開始から注目の1年生MF庵原進太を投入し、山崎や竹内の仕掛けなどでゴールを目指す。対する清水ユースは元日本代表の名手・澤登監督が「良い選手だと思います。間違いなく上に行ける存在だと思います」と期待する2年生10番MF杉山がアイディアのあるトラップと左足シュート。また、GK後藤の絶品の左足キックを起点にクロスへ持ち込むなど攻め返して見せる。


後半15分、清水ユースは山崎とFW澤田卓磨(1年)を交代。富士市立も直後にMF遠藤壮大(2年)とMF志田悠斗(2年)を投入し、小林を左SBへ移すなどポジションを大きく動かした。その富士市立は19分、志田が自陣からドリブルで大きくボールを運び、最後はこぼれ球を庵原が左足シュート。だが、これは清水ユースGK後藤の好守に阻まれ、逆に杉山のチャンスメイクなどから中村、土居にシュートへ持ち込まれてしまう。
清水ユースは32分、速攻から土居のパスにロングスプリントした市川が右CKを獲得。勝負どころで今年のチームが強化してきた走力を発揮し、このプレーが3点目に結びついた。後半33分、清水ユースは岩永の右CKを中村が頭で繋ぎ、最後は針生が左足ボレーで今季初得点。テレビドラマ『ROOKIES(ルーキーズ)』から取り入れたというパフォーマンスでゴールを喜んだ。


富士市立にとっては難しい試合展開になったが、終盤に1年生MF庵原が躍動。縦、中へのドリブル、ラストパス、パンチのある左足シュートで相手ゴールを脅かし続けた。富士市立はCB伊山大志(3年)、MF丸田楽空(3年)含めて投入された選手たちがギャップへのパスや運ぶドリブルなど特長を発揮。杉山監督も「全体的なサッカーをどうするかっていうことに関しては、今日みたいなゲームをチャレンジしていけば良くなる」と評価する内容のゲームだった。だが、ゴール前の攻守で差が出て敗戦。MF望月蒼太(2年)、FW木村隆之介(1年)を加えた清水ユースは最後まで集中力を切らさず、3-0で試合を終えた。




後期初白星の清水ユース・岩尾は、「後期始まって2つ引き分けていて、自分らとしても勝たなきゃいけないっていう試合だったので。みんな最初ちょっと硬かった部分もあったんですけど、その中でも自分たちがやることをやって、まず戦うベースの部分であったり、ゴールに向かっていく姿勢だったり、そういう部分をまた1からトレーニングで大事にしてきたので、そこがこの試合で出て勝てて良かったなと思います」と頷いた。
こで開幕12戦無敗。プリンスリーグ東海で無敗を維持することは簡単なことではない。それでも過去2年、プレミアリーグプレーオフで敗退しているチームが求めているのは、より勝負強いチームになること。まだ課題もあるが、難しい試合でも勝ち切るような力を身に着けてきている。
澤登監督は「まず勝負強さがないと。悪いゲームでも勝つ。それが絶対的に大事ですし、良いゲームをしても勝てません、これじゃダメなんですよ。良いゲームをしても勝つ、悪いゲームをしても勝つ。これが強いチームだと思うんで。今日は(内容としては)悪いゲームですけれども、3-0で勝ったっていうのは良かったなと思います」と評価する。
夏の練習試合ではプレミアリーグ勢のクラブに8-0で大勝した試合も。怪我明けの土居がベストコンディションではないものの、清水ユースらしいテクニカルな部分に加え、走力やフィジカル、勝負強さの向上を目指してきた成果が出てきている。
澤登監督はリーグ終盤戦へ向けて、「終盤戦はもう精度だけだと思います。もちろん、下でサッカーをやるのは我々の得意な部分。ポジショニングと、背後の取り方と、バイタルのところの工夫と……そこの精度が絶対に必要です。(トレーニングで落とし込んできているが、)ゴール前の落ち着きであったり、アイディアもちょっと必要かなと思います」と求めた。強みをより磨いて目標へ向かう。
岩尾は「(今後、)まず守備陣はゼロで抑えるところはしっかりやっていきたいし、攻撃の部分でもゴール数をもっと取って、圧倒していきたいっていうのはあるんで、プリンス(リーグ)の中で、そういった数字の部分を大事にしながら、なおかつ内容の部分で相手よりボールをしっかり握るだとか、ゴールに迫る回数を多くするっていうことは、もっともっと練習から意識しないと。プレミアの参入戦で2年負けてるっていうのがあるんで、そこでも圧倒できるように、いい準備をして臨んでいきたいと思います」。過去2年の敗退を糧に、続けている勝負強いチームになるための取り組み。プリンスリーグ東海、プレーオフを勝ち抜き、プレミアリーグに復帰してシーズンを終える。


(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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