「FIFA U-17ワールドカップ カタール2025」(11月3日~27日) を戦うU-17日本代表の司令塔候補。MF野口蓮斗(広島ユース)は今年、守備強度を改善して「もっと圧倒的に奪える選手になる」こと、得意とするゲームメイクでもよりレベルアップすることを目指してきた。
8月末から行われたフランス遠征では、「個人としてもやれる部分が多かったというか、普段の海外遠征に比べたらできることが多くなっていたかなっていうことを感じました」。ただし、続く大阪合宿(9月27日~10月1日)ではメンバー入りすることが出来ずに「ピンチだなって」危機感。それでも、アピールを続けて世界への切符を掴んだ。
メンバー発表を約2週間後に控えた10月5日、プレミアリーグWESTで首位の神戸U-18と対戦。野口は後半45+4分にインターセプトから一気に左コーナー付近へボールを運ぶと、キープから判断を変えてゴールライン際を突破する。DF2人を振り切る形でMF小林志紋の決勝点をアシスト。「最後の方に、キツイ中でああいうプレーができたのは自分の特長なんで、そういう特長を出せて良かった」。課題としてこだわってきたこともプレミアリーグで表現できているようだ。
ターニングポイントは4月のU17アジアカップだった。野口は「アジアカップであまり出場機会を得られなかったっていうのがあって、そこは自分のターニングポイントっていうか。そこで『もっとやれないといけないな』と思ったし、『まだまだ足りないな』って思う部分があったんで、そこから気持ちをまた入れ替えて、やることができた」。U-17アジアカップでは2試合に先発し、1試合で途中出場。だが、U-17ワールドカップ出場をかけたオーストラリアとの大一番でピッチに立つことができなかった。
その悔しさをバネに取り組んできたことを一つ結実させた。今回のU-17ワールドカップには、U17アジアカップでボランチの主軸を担っていたMF神田泰斗(大宮U18)とMF樺山文代志(興國高)が選ばれていないだけに、『自分が』という思いも強い。「自分が1つ落ち着かせたりして、チームを冷静に戦わせる役割をしていきたいなと思います」。U-17ワールドカップへ向けて実施中の千葉合宿では一際多く首を振って状況を把握。「習慣化」していることを繰り返しながらボールを引き出し、正確な配球を見せていた。
前日に続いてトレーニングに参加している日本代表の前田遼一コーチからは、FWの選手に対して「上手く行かない時に力むのではなく自分を信じてやっていくこと」というメッセージがあり、FW以外の選手たちに対しても「(ゴールを奪う上で)自分たちからもっと要求してやっていく必要がある」ことを伝えられたという。
野口はU17アジアカップの反省から、自分が中心になってゲームを組み立てることを意識。普段、広島ユースで3-4-3システムを経験していることも強みにチームを落ち着かせ、チャンスがあれば自分も強く要求してゴールを奪いに行く。
地元の熊本を離れて広島で生活。U-17ワールドカップ切符を掴んだボランチは感謝の思いもピッチで表現する。「家族もめっちゃ喜んでくれてたし、こういう大会でしか自分の価値を示すところはないと思うんで、ここでやるしかないなっていう感じです。まずはチームの勝利に貢献できるように、決定機を作り出したりとか、勝たせられる選手になりたいです」。2人の弟にも背中で示す。
広島ユースのMF野口魁斗(1年)、ソレッソ熊本のMF野口壱斗(中2)の2人の弟はいずれも注目株のプレーヤー。「(今回のU-17ワールドカップを経て、また)自分が兄弟も引っ張っていければ。中3の時とか、公園とかで自主練する時は削り合ってたというか、それくらいのレベルで激しい練習を一緒にしてきたので、そういうところは思い入れがあります」。兄は自分の背中を追ってくる弟たちの道しるべに。「これまで生きてきた中で一番大事」という舞台でアジアの悔しさもぶつけ、中心選手のプレーでU-17日本代表を勝たせる。




(取材・文 吉田太郎)
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Source: サッカー日本代表
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