
「サプライズ」と目を丸くしていたが「準備はしてきた」という言葉の方が本音だろう。日本代表に初招集されたGK小久保玲央ブライアン(シントトロイデン)が千葉市内での練習後に取材対応し、「このタイミングで呼ばれたことはすごくうれしい。しっかり自分のプレーを見せて、国民のために戦いたい」と意気込んだ。
今回の11月シリーズは天皇杯準決勝との兼ね合いで常連組のGK大迫敬介(広島)が招集を見送られ、小久保はその枠に入る形での初選出となった。さらに森保ジャパンの守護神であるGK鈴木彩艶(パルマ)が8日のミラン戦で左手を骨折し、代表を辞退。追加招集されたGK野澤大志ブランドン(アントワープ)、7月のE-1選手権・中国戦で代表デビューを飾り、9月、10月にも引き続き選ばれているGK早川友基}(鹿島)との3人体制でガーナ戦、ボリビア戦の2試合を戦う。
代表キャップ数は3人合わせても「1」と、経験値に大きな差はなく、出番をつかむには練習でのアピールがものを言いそうで、そこは小久保自身も意識しているところだ。「チームでも良いプレーをできているので、チャンスを得るためにまずはしっかり練習から見せていきたい」と覚悟をにじませた。
来年のW杯本大会に向けて聞かれると、「自分的にもサプライズな形(の招集)で急に今ここに立っているので、自分の中ではなかなか考えられない。まず全力を出して、それがいつか先のW杯につながると思っている」と謙虚な姿勢を見せるが、日本代表の試合は「すべて見てきた」とコメント。「いつでも準備はできていた。その中でこのタイミングでの代表初招集はすごく大きい。出場する可能性があるので、出たタイミングでは100%を出して頑張りたい」と、デビューの時を虎視眈々と見つめた。
柏レイソルの育成組織からそのままベンフィカ(ポルトガル)に移籍したためJリーグの出場経験はないが、鈴木彩や野澤と同じパリ五輪世代で、年代別カテゴリーでは何度も日の丸を背負ってきた。昨年4月にはU-23日本代表としてパリ五輪アジア予選であるU-23アジアカップで驚異的なシュートストップを連発し、パリ五輪出場権獲得と優勝に大きく貢献。「国防ブライアン」と称賛された。パリ五輪でも守護神としてゴールマウスを守り抜き、ベスト8入りに貢献した。
強豪のベンフィカ時代はトップチームで出番をつかむことはできなかったが、昨夏にシントトロイデンに移籍したあとはすぐに出場機会をつかみ、今季も絶対的守護神として現在4位と好調のチームを牽引している。「去年からやっと自分のプロスタートが始まったと思っている。ベンフィカでの5年間は思うようにいかなかったが、昨シーズンの1年間でしっかり自分のプレーを見せて、今は安定したプレーを見せている。(ベルギー・リーグ出場で得た)収穫は多い」と胸を張る。
最近は心境にも変化があったようで、「(日本代表は)遠いような近いようなというところで、しっかりここで(結果を)出せば呼ばれるかなと思った日もあった。それが今、急に来た。自分がやっとここまで来られたという気持ち」と言葉を継いだ。
感情豊かな性格の持ち主で、日本代表選出の報を受けたときは「泣いて喜びました」。この日のミックスゾーンでもその瞬間を思い出したようにうっすらと目を潤ませた。
初参加のA代表合宿ではかつてシントトロイデンに在籍し、今ではプレミアリーグのクリスタル・パレスで2か月連続のクラブ月間MVPに選ばれているMF鎌田大地がいろいろと話しかけてくれているといい、「(鎌田)大地くんがすごく優しくて、そこはすごく驚きました。イメージとちょっと違ったので」と言って、笑いを誘う場面もあった。
「代表戦は全試合見ていた。ブラジル戦(の勝利)には自分も元気づけられたし、いち国民として早く自分もピッチに立って、A代表の皆さんと一緒にサッカーしたいと思っていた。近距離のシュートストップはだれにも負けない」と胸を張る小久保。北中米W杯滑り込みに向けてのアピールがここから始まる。
(取材・文 矢内由美子)
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Source: サッカー日本代表

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