
たしかに不用意だった大舞台での一発退場。それでもかけがえのない仲間たちに支えられ、仲間たちに尽くした16歳が真摯に再出発を誓った。U-17日本代表のMF長南開史(柏)が23日夕、U-17W杯開催地のカタールから成田空港に帰国。引き続き出場資格のある次回大会に向けて「来年はもっと自信をつけて、もっともっと勝利に貢献できる選手になっていきたい」と力を込めた。
今年4月に高校1年生ながら柏レイソルとプロ契約を交わした長南は今月、U-17W杯に飛び級で出場。アフリカ王者のモロッコに2-0で勝利したグループリーグ第1節、ヨーロッパ王者のポルトガルを2-1で破った同第3節にそれぞれ右ウイングバックで先発し、優勝候補のウインガー陣にも互角以上に渡り合う姿を見せた。
ところがそのポルトガル戦では、マッチアップ相手への気迫が裏目に出て、大きな代償を負うこととなった。後半27分、MFステバン・マヌエルの苦し紛れのタックルを受けた直後、もつれ合う形で倒れた長南が相手に向かって足を上げると、報復行為として一発レッドカードの処分に。さらにその後、懲戒委員会によって3試合の出場停止処分も下され、準々決勝までの3試合を欠場することが決まった。
大舞台での一発退場と複数試合出場停止。自らの行為に起因する処分だったとはいえ、その責任と反省の重みは16歳の選手が一人で背負うには余りあるものだ。長南自身、相手を傷つける意図はなかったとはいえ「チームに迷惑をかけてしまった」という思いに苛まれていたからこそ、「レッドカードを受けてから1日、2日は元気が出なくて、落ち込んだりしていた」と正直に明かす。
しかし、そこで手を差し伸べてくれたのが年上選手が多く並ぶチームメートだった。「みんなが支えてくれて、落ち込んでいる場合じゃないなと……」。その手をただ取って立ち上がるだけでなく、長南自身も前向きな振る舞いを開始。「外から見ていてもやれることがあるし、チームのみんなに良い影響を与えられるように」と裏方仕事を買って出て、給水ボトルや練習用具のサポートを積極的に行ってきた。
「そういうことしかできないので。ピッチに立って貢献することはできないけど、そういうところで貢献することを意識していた。今までの自分だったらそのまま落ち込んで何もできなかったけど、この機会を将来『W杯の舞台でレッドが出たという経験があったからここまで来られた』と言えるようになりたいので、そういうところも頑張ろうと思った。今回もチームに迷惑をかけたけど、自分なりにできることを探して精一杯やれたと思う」(長南)
長南不在の3試合はDF竹野楓太(神村学園高)が先発し、連戦の中でも攻守にダイナミックなパフォーマンスを発揮。「楓太のプレーを見て学ぶものもあったし、もっと仕掛けられたなというのを試合に出られなくなってより強く思うようになった」。出場停止中はチームメートの活躍を通じて自らのプレーにも向き合う貴重な時間を過ごしていたようだ。
それでもチームは準々決勝でオーストリアに敗れ、無念のベスト8敗退。決勝トーナメントでの2勝、準々決勝・北朝鮮戦で挙げたPK戦勝利はいずれも男子FIFA主催大会では1999年のワールドユース選手権準優勝時(U-20日本代表)以来2度目という快挙を成し遂げたものの、準決勝には届かず、長南が再びピッチに立つことはなかった。
ただ、3試合出場停止を全て消化したことで、次回大会への扉が大きく開けたのも事実だ。長南は飛び級参加のため来年のU-17W杯の出場権も持つが、もし出場停止が未消化であれば次回に持ち越す可能性があった。長南は「ベスト8に終わった人たちの思いも背負い、来年もチャレンジできる舞台があるのは本当にありがたいこと。来年は優勝を目指して頑張っていきたい」と並ならぬモチベーションで1年後を見据えた。
実力的には2年後のU-20W杯に向けた代表チームへの抜擢にも期待が高まるなか、「W杯の借りはW杯でしか返せない」と気合い十分。それでもまずは世界舞台で得た貴重な経験を、柏U-18で出場している高円宮杯プレミアリーグEASTで発揮するところからの再出発となる。
「守備の面ではこのポジションに慣れてきたのもあって、1対1や背後の対応も上手くなっている実感があったけど、もっと得点に関わるプレーや、攻撃参加の数を増やしたり、もっと海外相手にも仕掛けたりするのはまだまだ課題だった。そこはプレミアでも恐れずにやっていきたい」。誰よりも感情揺れ動く世界舞台に立った経験を糧に、さらにスケールの大きな選手になってくれるはずだ。
(取材・文 竹内達也)
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Source: サッカー日本代表


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