
[11.23 プレミアリーグEAST第19節 柏U-18 2-4 横浜FCユース ゼロワットパワーフィールド柏]
想像していたようなステージに、まだまだたどり着けていないことは、誰よりも自分が一番よくわかっている。もちろんこのままでいいなんて、思っているはずもない。レイソルの10番を背負い、レイソルのエースとしてピッチに立つのならば、もっともっと圧倒的な存在へと駆け上がってやる。
「今の自分は、思い通りには行っていないですね。でも、そこの反骨心は味わえているというか、『こういう状況だからこそやってやろう』みたいな気持ちは強いので、逆に思い通りに行かないぐらいの方が、自分は成長できるのかなとも思っています」。
柏レイソルU-18(千葉)の攻撃のタクトを振るう、確かな才能を宿した背番号10。FW加茂結斗(2年=柏レイソルU-15出身)はシビアな現実を突き付けられ、さまざまな感情を味わいながら、思い描いたキャリアへと続く一本道を、ただひたすらに突き進む。
幸先は良かったと言っていいだろう。高円宮杯プレミアリーグEAST第19節。1か月近い中断明けの一戦は、ホームでの横浜FCユース戦。前半10分に加茂が蹴った左CKから、高い打点でDF丸山寿貴斗(2年)が合わせたヘディングは、右スミのゴールネットへ吸い込まれる。
「いつも試合前日は相手チームの特徴やウイークポイントを分析してもらって、それに合ったセットプレーを用意してもらっているので、今日はその形でうまく先制できたのは良かったですね」と口にする10番のアシストで、柏U-18がスコアを動かす。


だが、手にしたアドバンテージはたった2分で霧散する。12分。自陣で加茂がボールを前向きに奪われると、少ない手数で持ち込まれたフィニッシュから失点を献上。あっという間にリードを吐き出してしまう。
「個人としてはあまり気にしないようにしていましたけど、目に見えて自分のミスだったので、相手にとってそこが波に乗れるポイントだったのかなと考えると、良くないプレーだったと思います」。加茂がそう話した通り、横浜FCユースは30分と45分に得点を重ね、柏U-18は1-3と逆転された形で前半を終えることになった。
気にしないようにはしながらも、責任を感じていなかったはずがない。自分の結果で追い付いて、逆転してみせる。背番号10が静かに燃やす炎は、ゴールという結果に直結する。
後半21分。左サイドを粘り強く運んだDF上野暉晏(2年)がマイナスに折り返すと、その選択に躊躇はなかった。「ボールが来た時に、ダイレクトで打つ選択肢はなくて、『トラップして左足で打とう』と。負けていましたし、シュートにはこだわっていたので、思い切り振ったらちょうど良いコースに入りました」。加茂が角度のない位置から左足を振り抜いた軌道は、GKの肩口を破ってゴールへ激しく突き刺さる。1点差に迫るエースの一発で、チームの士気も確かに上がったはずだった。
だが、先制点の時と同様に、加茂の得点から3分後に4失点目を喫した柏U-18は、結局2-4というスコアで敗戦。「監督からも『自分たちが点を獲った後の失点が早い』と言われましたし、『もう1回行くぞ』と前に、前に行きすぎる姿勢から、守備意識が低くなってしまったりと、そういうマインドの部分が選手たちの間で統一できない部分があったのかなと思います」。10番の悔しさを隠し切れない表情も印象的だった。


FIFA U-17ワールドカップではベスト8まで勝ち上がり、日本のサッカーファンを大いに沸かせたU-17日本代表。この年代の代表にはU-15世代からコンスタントに招集され、4月のU17アジアカップで世界の切符を勝ち獲る瞬間にも立ち会った加茂だったが、本大会のメンバーに選ばれることは叶わなかった。
「もちろん悔しい想いはありました。でも、自分はそこまで気にしないタイプですし、何かしら選ばれない理由が自分にあったわけですけど、それをあえて考えるつもりはないですね。そこがゴールじゃないと言ったら負け惜しみみたいで嫌ですけど、選ばれなかったからには選ばれないなりに、下から這い上がるだけなので、そっちの方が自分にとっては成長できるのかなと思います」
大会自体はしっかり映像をチェックしたという。「レイソルのチームメイトが出ていますし、代表には仲の良い選手もいっぱいいるので、日本に優勝してほしいと思って応援していました。特に(吉田)湊海には注目して見ていましたね。LINEでも『頑張って』みたいに伝えましたし、普段は決めてほしくないですけど(笑)、一緒に戦ってきたライバルではあるので、こういう日本を背負って戦う試合でこそ、アイツに決めてほしいなって」。ある程度自身の中で割り切りながら、ともに世界を目指した仲間たちの躍動を、しっかりと目に焼き付けたようだ。
柏U-18を率いる藤田優人監督も、ワールドカップのメンバー落選については、あえて加茂に特別な言葉を掛けていないという。「自分で考えられる子なので、あえて何も話していません。もともと彼が持っているパーソナルな部分を考えれば、話す必要もないかなと思いますし、悔しさや苛立ちとかいろいろなことを本人の中で消化しながら、彼にとっては今後の飛躍のために、凄く良い時間は過ごせていると思います」。
加茂も指揮官の想いは十分にわかっている。「中3と高1の時はまだまだ未熟な部分があって、藤田さんから教わる部分も多かったんですけど、今年に入って良い意味であまり声を掛けられなくなったかなと思っています。あの人は観察力が凄くて、選手一人ひとりのマインドも読めるので、うまく行っていない時は声を掛けてくれますけど、基本は自分で考えさせる意図があると思いますし、それでも叱ってくれる時は叱ってくれるので、そこはありがたいですね」。
どんな苦境も、最後は自分で跳ね除け、乗り越え、パワーアップするしかない。1年後に、5年後に、10年後に、U-17ワールドカップを経験できなかったことを、ポジティブなエネルギーにして飛躍できるように、日常を繰り返し、繰り返し、突き詰めていく。


2025年シーズンも最終盤に差し掛かっている。アカデミーラストイヤーを前に、やるべきことも、やらなくてはいけないことも、決して少なくない。加茂は言葉に力を込めて、ここから先の1か月への決意を、こう口にする。
「今年の目標としてはワールドカップに行きたいということもそうでしたし、トップチームの練習にもどんどん参加して、トップデビューしたいという気持ちもあったので、そういう意味では思い通りに行っていないですし、今の立ち位置や結果に満足はしていないです」。
「誰がどこで見ているかわからないので、試合で結果を残すことが一番ですけど、練習から全力で取り組むことは当たり前ですし、目に見える形で結果を残すことはもちろん、それ以外の部分で守備や献身性の部分が一番見られているところだと思うので、そこを出していかないと、絶対にトップには呼ばれないと思っています」。
「プレミアも残り3試合なので、その少なさに『もう今年が終わるんだな』という現実味が湧いてきていて、3年生と一緒にできる時間もあとちょっとだなって。10番としてこのチームを勝たせられないのは本当に情けないですし、残りの3試合にどういう形で自分のマインドを持っていって、結果に繋げていくかが自分に問われているところなので、そこで自分に打ち克っていきたいと思います」。
いつだって、自分に対する絶対的な自信はある。同年代のアタッカーには、誰にも負けていない自負もある。ただ、それを証明するためには、はっきりとした結果を出す必要があることも、嫌と言うほど実感してきた。ここから先に続いているのは修羅の道。それでも加茂結斗は、怯まない。どんなに苦しんでも、どんなにもがいても、光が射すと信じる方へ、ただひたすらに突き進む。


(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
▶高校サッカーの最新情報はポッドキャストでも配信中
Source: 大学高校サッカー

コメント