ストライカーからコンバートされた「愛され系センターバック」、躍動!東京VユースDF山田将弘がランドで実感してきたサッカーの楽しさ

東京ヴェルディユースの愛され系センターバック、DF山田将弘(3年=VERDY S.S.AJUNT JY出身)
[11.30 プレミアリーグEAST第20節 昌平高 2-2 東京Vユース 昌平高G]

 想像もしていなかったコンバートで、キャリアが大きく揺れ動いた1年間。でも、今は新たなポジションにトライし、いろいろな視点を得られたことで、サッカーがより楽しくなってきたことを感じている。フォワードでも、センターバックでも、自分は自分らしくあり続けていくだけだ。

「フォワードをやっていたころは相手と10回やり合って、1回勝って点を獲ったらヒーローでしたけど、センターバックは10回やって、9回は相手を倒しても、1回やられたらもう終わりなので、そこは責任感を感じるところはあります。でも、逆にフォワードよりセンターバックの方が、自分のパワーやスピードと言った能力は生かせるかなと思っているので、『フォワードよりセンターバックの方がいいな』と思う瞬間はありますね」。

 チームきっての愛されキャラでもある、東京ヴェルディユース(東京)の屈強なセンターバック。DF山田将弘(3年=VERDY S.S.AJUNT JY出身)は自身のさらなる可能性を追い求め、これからもポジティブなチャレンジを繰り返していく。

 その“提案”は唐突にやってきた。アカデミーラストイヤーとなった2025年。指揮官も藪田光教監督(現・FC大阪監督)から小笠原資暁監督に代わると、1月から開催されるシーズン最初の公式戦『東京都クラブユースサッカーU-17選手権』を戦っている中で、山田はセンターバックへのコンバートを打診される。

「去年はヤブさんが監督で、自分はフォワードとしてポストプレーを評価してもらって、試合に使ってもらっていたんですけど、監督が代わって、フォーメーションや戦術も変わっていく中で、『フォワードをやるよりは、センターバックの方がチームにアジャストできるんじゃないか?センターバックの方が将来を考えるといいんじゃない?』とオガさんに言われたんです」。

 中学時代に何度かセンターバックでプレーしたことはあったが、あまりしっくり来なかった記憶もあったため、「小さいころからずっとフォワードでやってきたので、最初は『ここでセンターバックか……』とは思いました」と正直に語る山田は、それでも改めて自分の中でいろいろな可能性を思い浮かべる。

「監督に『まずはちょっと1,2週間ちゃんとやってみたら面白いんじゃない?』と言われて、『確かにまったくやらないよりは、やってみた方がいいかな』と思って始めました」。

 もともとフィジカルに自信はある。加えて長年やってきたフォワードの心理も、手に取るようにわかる。「攻撃側の気持ちはわかるので、そこを生かしながらやってみたら、意外と相手を潰すところや1対1も楽しかったんです」。試合を重ねるごとに新しい視界にも慣れ、新しい役割にもやりがいを感じ、必死にプレーし続けると、山田はプレミアリーグの開幕スタメンを、センターバックとして勝ち獲ることになる。

 開幕から6試合は先発出場が続き、第4節の前橋育英高戦では後半の終盤に決勝点を叩き出し、勝利に貢献。少しずつ守備者としての日常にも馴染んでいったが、5月以降は足首のケガや脳震盪に相次いで見舞われ、戦線離脱を余儀なくされる。

 ただ、山田は“持っている”男でもあった。約4か月ぶりの復帰戦となった第13節の横浜FCユース戦。後半34分から途中投入されると、その4分後にはセットプレーからゴールをゲット。ピッチに帰ってきた自分を、自らの得点で祝福してみせる。

 試合後にキャプテンのMF仲山獅恩(3年)が「アイツもケガもあって、いろいろ悩んだ時期もあったと思うんですけど、人前でいろいろやるタイプではないので、陰で頑張っていたと思います。でも、まあ、アイツはたぶんそこまでいろいろ考えていないので(笑)」と口にした言葉からも、チーム内におけるキャラクターが垣間見える。

 そのあたりは本人にも自覚があるようだ。「中学校の時はお山の大将でやっていたんですけど、ここに入ったらみんな上手いので、みんなに揉まれながら、自分のことを面白がってくれたり、イジってくれたりするので、同級生も後輩も含めて、良い空気感でやれているなとは、ユースに入ってからずっと思っています。ヴェルディは“上手いヤツ至上主義”なので、僕みたいな選手はこういうキャラでいいのかなと。僕もそれが楽しいので、問題ないです」。

 この日の昌平高戦では、3試合ぶりにスタメン出場。1つの大事な役割は年代別代表にも招集されている、相手の1年生ストライカー・立野京弥を抑えるというものだったが、山田は身体をぶつけ、頭を働かせ、決定的な仕事は許さない。

「相手の7番(長璃喜)と10番(山口豪太)がキーになってくるというところで、そこにみんなで枚数を掛ける分、9番(立野)は自分が1対1で止めないとチームとしても厳しくなってくるのかなと思っていたので、自分のストロングでもある身体の強さを使って、うまく収めさせないことを考えていました」。

 東京Vユースは前半12分に先制したものの、14分と19分に続けて失点を献上し、早くも逆転を許してしまう。それでも以降は山田やDF中村宗士朗(3年)ら守備陣の奮闘もあって、3失点目を回避し続けると、チームは前半終了間際に追い付いてみせる。

 ファイナルスコアは2-2。「チームがなかなか勝てていない中で、前半はちょっと相手のペースに飲まれる時間が多かったので、後半はフォーメーションを変えて、うまく自分たちの時間を作れたのかなと。最後は決め切れれば良かったと思うんですけど、後半は全体的に悪くなかったかなと思います」と話した山田は及第点のパフォーマンス。小笠原監督も「まだまだ彼は甘えん坊で、ふと抜けちゃったりするところはたくさんあるんですけど、みんなから愛される男ですし、今日は立野くん相手に身体を張って、アイツがいなかったらやられていたゲームかなと思います。もっと謙虚にやれとはいつも言っていますけど(笑)」と笑顔で高評価を口にしていたのが印象的だった。

 山田はVERDY S.S.AJUNT JYから高校進学時に東京ヴェルディユースへと加入。レベルの高いジュニアユース出身のチームメイトたちと切磋琢磨しながら、充実した3年間を過ごしてきた。

「中3の半ばぐらいからずっと練習参加させてもらってきたので、ユースももう4年目なんですけど、ボールも全然止まらなかったひどい状態から始まったのに、監督やコーチのみなさんがずっと辛抱強く使ってくれたんです。オガさんには『まだまだだ』とずっと言われていますし、自分でもそう思いますけど(笑)、入ったころよりは少し成長できたのかなと思います」。

 関東の強豪大学への進学を希望している山田にとっても、この仲間たちと一緒のピッチに立てるのもあと2試合。残された短い時間への想いを、改めてこんな言葉で口にしてくれた。

「もう降格も優勝もない中で、目標を見失うことが多い時期かなと思うんですけど、ここまで支えてくれた家族とか、中学のチームの監督やコーチ、ユースでお世話になったヤブさんとかオガさんにも恩返しするために、あと2試合で勝利を届けられたらいいなと思いますし、これから自分がもっと上に行くためにも、しっかりベストを尽くして、自分のやるべきことをやるための2試合なのかなと思っています。最後は自分が点を獲って、劇的に勝ちたいですね」。

 ランドで仲間とボールを蹴り合う経験を通じて、このアカデミーが一番大切にしてきたことははっきりとわかっている。いつでも全力でプレーする。だから、サッカーは楽しいし、悔しいし、難しい。東京Vユースを明るい笑顔で照らしてきた、背番号18のセンターバック。山田将弘はここからの2試合も、ストライカーらしく得点を狙いながら、センターバックらしく相手のアタックを力強く抑え込み、今の自分のベストパフォーマンスを必ず披露してくれるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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