[11.4 ルヴァン杯決勝 福岡 2-1 浦和 国立]
反撃の狼煙を上げる素晴らしい一撃だった。2点ビハインドで時計は後半22分。その6分前に投入された浦和レッズMF明本考浩は、MF岩尾憲がDF酒井宏樹にパスを送るや否や、がむしゃらさが伝わる動き出しから相手DFの間を抜けるように最終ラインの裏へ飛び出していった。
「一瞬で目が合った」という明本は酒井のふわりとしたロングフィードを、相手DFを背中で押さえながら巧みに胸でトラップし、左足を振り抜いた。鋭いシュートでゴールの逆側のネットを揺らして1点差とすると、浦和サポーターのボルテージは一層高まった。
「良いファーストタッチで(ボールを)置けて、狙い通りのゴールだった」。その言葉通り、会心のシュートだった。しかし、「あと一歩届かなかった」と続けたように、明本の表情に喜びはなかった。
0-2で折り返した前半をベンチで見ていて、もどかしかったのは間違いないだろう。「アグレッシブなプレーをしていたのは福岡さんだった。僕らがアグレッシブでなかったとは思わないけど、気持ちの部分で少し上回られていたと思う」。だからこそ、自分が入ったときには気持ちを出そうと思った。
「何がなんでもゴールというのは当然。流れを変えないといけないと思っていた」。最終的には勝利に至らなかったが、4日後に控えるACL浦項スティーラーズ戦に向けて良い刺激をチームに与えたのは間違いない。
「次の浦項は大事。必ず僕が先陣を切って戦う姿を見せなきゃいけない。球際のバトルで引かずに僕は率先して戦いたい。そういう一つひとつの攻防で流れは変わる。泥臭さは本当に大事」。そう「大事」なことを繰り返し言った。
J1リーグの次戦である12日の神戸戦は累積警告による出場停止となるだけに、「浦項戦は今季最後の試合という気持ちを持ってアウェーに乗り込みたい」と意気込む明本。夏場に負傷した影響がしばらく残り、最近も先発機会は少ないが、コンディションに問題はないという。
「今日はファン・サポーターが素晴らしい雰囲気をつくってくれた中で、結果で恩返しできなかった。たぶん浦項にも多くのサポーターが来てくれると思う。ピッチで闘いを表現するのは僕たちで、しっかり闘わなきゃいけないと改めて思った」。意気込みをハッキリと言葉にし、目をぎらつかせた。
(取材・文 矢内由美子)
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Source: 国内リーグ
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