[11.5 選手権大阪府予選準決勝 近大附高 0-1 東海大大阪仰星高 ヨドコウ桜スタジアム]
力強い攻撃が代名詞の東海大大阪仰星高において、足元の技術が売りのFW小林旺誠(3年)は異質と言える存在。「ワンテンポを挟む攻撃を意識している」と話す通り、自陣から長いボールを入れた後に前線でおさめて、組み立てやシュートを狙っていくアタッカーだ。
この日は準々決勝の関大一高戦から中1日で迎えた一戦。「プリンスリーグでは勝っていたけど、選手権なので難しい試合になるのは分かっていた」。仰星同様、近大附高もパワフルな前線に当てるサッカーをしてくるため、競り合いは自然と多くなる。相手エリアで競った後のこぼれ球を拾って上手く地上戦に持ち込もうとしたが、前半は思い通りにボールが触れない。
ハーフタイムに修正をかけて挑んだ後半は、「前半はあまり走れていなかったので、後半は誰よりも走ろうと思った」。様々なエリアに顔を出し始めたことで、こぼれ球が自らの下に入るようになる。後半4分には右サイドで開いて受けると、FW水永直太朗(3年)とのワンツーからクロス。13分には右サイドから粘り強くPAまでボールを運んだが、シュートを打ちきれない。
先制点以降はシュートまで行けない時間が続いたが、20分にはDF平井大地(3年)が自陣からロングフィードを送り、前線の水永が競り勝つ。ゴール前でMF中本昇(3年)が拾った瞬間、小林は「中本が上手く相手を引き付けてくれたので、後は走り出すだけだった」。GKとの1対1を迎えた小林は冷静にゴール左隅へと流し込んだ。この得点が決勝となり、仰星が1-0で勝利。ヒーローとなった小林は「コンビネーションでの崩しは試合前にも練習している。上手く流し込めて良かった」と笑みを浮かべた。
小林は京都のブリンクFC木津川出身。関西以外の高校へと進むチームメイトが多い中、小林はプレーを評価された隣県の強豪へと進学した。「中学時代は走れなかった」が週に1度行なう走力トレーニングによって、少しずつ走れる選手に成長。同時にメンタルの強さも身に付きつつある。技術に走力が加わった結果、2年生からAチームに絡み始めたが、昨年の選手権はベンチ入りを果たしたものの、出場機会は訪れない。チームもベスト16で姿を消し、悔しさを味わった。
迎えた今大会はベスト32の昇陽戦で1点を記録したが、以降の2試合は無得点。「この舞台で決めたいと思っていた。練習から味方とコミュニケーションをとって、タイミングを合わせてきた」と振り返る通り、大会2得点目を奪うために進めてきた準備が花を開いた。
選手権予選も残すは1試合のみ。勝てば7年ぶり6回目の全国行きが決まる大一番だ。「履正社高は格上だと分かっているので、泥臭く戦って全国に行きたい」と口にする小林は、二戦連発を虎視眈々と狙っている。
(取材・文 森田将義)
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Source: 大学高校サッカー
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