[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.24 インカレ決勝 明治大2-0京都産業大 カシマ]
スコアレスで折り返した後半、明治大の攻撃にスイッチが入った。ハーフタイムに栗田大輔監督による「優しい喝」が入れられたという。そこで後半開始と同時に投入されたのが、MF田中克幸(4年=帝京長岡高/札幌内定)だった。準決勝と同様に流れを変える役割を託されての投入だったが、明大は後半3分にFW中村草太(3年=前橋育英高)がゴールネットを揺らして先制。そして同8分に中村の横パスを受けた田中が、ワントラップから左足でゴール左隅に突き刺した。
気持ちのいい、鮮やかな放物線を描く、これぞ田中克幸と言わんばかりのゴールだった。「自分が流れを変えたというより、チームとしてうまく変えられたという印象。草太の得点で楽になったところで自分の得点も生まれた。自分の得点シーンは、最初は後ろにいたウッチー(内田陽介)にヒールパスをしようかと思ったけど、ファーストタッチがうまく決まったし、自分の形だったのでうまく力を抜いて打てました」。
鳴り物入りで大学に進学してきた。帝京長岡高ではFW晴山岬(FC 1931 Eddersheim)、MF谷内田哲平(京都)らと強力攻撃陣を形成。最後の高校選手権ではベスト4に進出し、サッカーファンに強烈な印象を与えた。晴山、谷内田、そしてDF吉田晴稀(愛媛)同様に田中にも高卒時点でJリーグの複数クラブからオファーが届いていたが、その中で進学を選択。4年間でさらに自信をつけて、プロの舞台に飛び込みたい思いで名門・明治の門を叩いた。
大学では高校時代にみせたようなインパクトを残せずに苦しい時期を過ごしたこともあったが、4年生になった5月に札幌への入団内定を発表。目標としていたJ1クラブからのオファーを勝ち取った。「明治に来ていろいろ苦しいこともあったけど、そこでぶれずにやってこれた。次に進めることが内定しているので、きょうは明治への恩返しを表現するだけだと思った。自分が最後に勝利を決定づけられたのはよかったです」。
今年の明治の象徴的な出来事として、夏に退部してMF佐藤恵允がドイツ1部のブレーメンに入団したことがあった。普段から仲が良かったという田中は、より思いを背負ってプレーしていたという。この日のスタンドには帰国したばかりの佐藤の姿もあった。「送り出す試合も一緒にプレーしていて、最高の形で送り出すことができて、恵允が抜けて夏合宿からいろいろやってきた中で、試合にうまく絡めないことも多かったけど、チームの勝利のためにどんな立場でも考えることが出来たからこそ、こういう舞台で発揮できたと思います」。
悲願の日本一を大学で勝ち取り、来季より札幌でプロ生活をスタートさせる。「本当に明治に来てよかったというのが素直な感想。高校でプロに行ってどうなっていたかは分からないけど、明治に来て人間性や厳しい環境、強度。先輩をみても活躍している人ばかりで、そういった環境で4年間を積み上げることができた。その結果、自分が行きたいクラブに進むことができたと思っています」。逞しさを増した世代屈指のレフティは、「開幕戦からスタメンを狙って、いち早くチームに貢献できるように頑張りたい」と意識を高くした。
(取材・文 児玉幸洋)
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Source: 大学高校サッカー
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