[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.4 選手権準々決勝 堀越 2-1 佐賀東 柏の葉]
チームの全権を任されているキャプテンは、自らのプレーで堀越高(東京A)を初ベスト4に導いた。1ゴール1アシストの主将FW中村健太(3年)は自身が掲げたベスト8超えを達成。「いい意味で予想を裏切った。自分自身でもちょっとびっくり」と率直な気持ちを語りつつ、「ここで満足しているようではダメ。国立に立てるのはうれしいが、ここから2勝して優勝を目指したい」と決意を新たにした。
前半19分に堀越が先制に成功する。中盤でボールを持った中村は自ら運びながらシュートを決断。「周りのサポートを待とうと思ったが、いつも自主練していたところの位置に来た。これはシュートに行こうと思ってカットインした」。3年間、月曜と火曜の朝練でやり続けた形。だからコースが見えなくても感覚は染みついている。鍛え続けた逆足の左足シュートは綺麗なカーブを描き、ゴール左隅に突き刺さった。
すべてが練習の賜物だ。「うれしいというか、ここで積み上げてきたものが出せるのかとびっくり。うれしくて体で表現はしたけど、心の中ではけっこう落ち着いていました」。練習で積み上げてきた自信は、さらに中村のプレーを後押しする。
1-0で迎えた後半27分、中村は右サイドからクロスを上げる。MF仲谷俊(2年)の得点をアシストし、2-0と点差を広げた。「俊が上手かったけど、あそこに流し込んだので3割ぐらいは自分のゴール(笑)」。選手主導“ボトムアップ方式”の指揮官が1ゴール1アシストを記録し、堀越にとって初のベスト4進出に大きく貢献した。
基本的な戦術や選手交代を選手主導で行う“ボトムアップ方式”。ハーフタイムではベンチ脇のホワイトボードに選手の声を書き込み、すばやく意見をまとめ上げた。全権を任されている中村は、自身の交代すらも自ら決断する。後半20分過ぎには疲労も限界を迎えており、「きつくて自分で交代しようかと思った」と本音を明かす。「応援団が応援してくれていた。こんなんじゃダメだろと、自分を奮い立たせました」。最後は根性で勝利を見届けた。
卒業後は堀越の先輩であるMF宇田川瑛琉やMF日野翔太(鳥栖内定)と同じ進路、拓殖大に進む。だが、まずは高校サッカーで有終の美を飾るつもりだ。
きょうはひと休みかと思いきや、帰路で明日の練習内容を考えるという。「電車の中で時間があるのでそこで少し考える。相手の映像を見て、どんな感じか頭に入れておきます」。選手から再び指揮官の頭に切り替えて、今一度“ボトムアップ”を行っていく。
(取材・文 石川祐介)
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Source: 大学高校サッカー
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