[2.15 練習試合 日本高校選抜 1-2 桐蔭横浜大]
憧れの先輩が躍動した、国立競技場のピッチが待っているのだ。気分が高揚しないはずがない。3年間をともにした最高のチームメイトと一緒にその舞台に立つことは叶わなかったけれど、みんなの分まで絶対に活躍してやる。
「自分は国立のピッチに立つのも初めてですし、もともと染野選手に憧れて尚志に入ってきているので、そういう憧れてきた先輩が結果を残した大舞台で、自分も結果を残せるような強い選手になっていきたいなと思っています」。
日本高校選抜の10番を任された、しなやかなストライカー。FW網代陽勇(尚志高3年)は注目を集める「NEXT GENERATION MATCH」(2月17日)のステージで、その力を多くの観衆に証明すべく、自分自身にフォーカスを当てている。
「もっと結果を残さないとこのチームにはいられないと思うので、もっとゴールを獲りたいですね」。紡いだ言葉に力がこもる。日本高校選抜は15日に桐蔭横浜大とのトレーニングマッチを実施。大学生相手にも網代は「一歩が出るところというか、迷わずヘディングのところでも突っ込んだりして、マイボールにできるところは自分のストロングでもあると思います」と自身も語る強みを発揮して、何度も相手ゴールへ迫る。
そのスピードとシュートセンスが融合した決定機もあった。裏へと送られたボールに素早く反応して抜け出すと、トップスピードに乗っていたにもかかわらず、飛び出してきたGKを冷静に見極めながら、ゴールまで30メートル近くはある距離から完璧なループシュートを繰り出す。
ところが、ゆっくりとゴールへ向かった軌道は、ポストに弾かれてしまう。「入ったと思ったんですけど、ポストに当たってしまって……。悔しいですね」。他にもチャンスはあったが、ボールを呼び込んでエリア内から放ったシュートはヒットしきれず、一瞬の加速でGKを外したプレーもフィニッシュには繋がらない。
「こういう選抜は凄くみんな強度が高くて、楽しいですけど、昨日も今日も自分は点が獲れていないので、そういう結果のところはもっとやっていかないといけないと思います」。今回の活動でもFW小田晄平(昌平高3年)やFW高岡伶颯(日章学園高2年)がゴールを挙げているだけに、結果への渇望感はより高まっているようだ。
昨シーズンの尚志はプレミアリーグEASTでも2位と大躍進。迎えた高校選手権では彼らを優勝候補に挙げる声も多かったが、2回戦で連覇を狙う岡山学芸館高に逆転負けを喫し、無念の初戦敗退。望んだような結末は訪れなかった。
「先制点を獲ってから自分たちの思うようなサッカーができなくて、行くか行かないかもチームの中で呼吸が合っていなかったですね。その中で前半の最後の方で失点して、そのまま崩れていった感じだったので、『チームとして完全に負けたな』という印象があります。自分も何本かはシュートを打ちましたけど、それ以外は何もできなかったので、短い80分間でした」。
「自分たちにも優勝候補だという声は聞こえてきていましたし、『それは外で言われていることで関係ないから』とは話していたんですけど、そう言われることで意識してしまった部分もあったのかなと思います」。選手権をそう振り返る網代は、想定外の敗戦から新たな学びを得たという。
「『3点獲るまで攻めることをやめない』というモットーが尚志にはあったのに、そういうところを選手権の異様な雰囲気の中で出せなかったので、『守りに行ったらやられるな』ということはあの試合で学びました」。常にアグレッシブな姿勢を忘れないこと。それはこれから進学する早稲田大での4年間でも、絶対に忘れたくない教訓だ。
昨年もU-17日本高校選抜に選出され、さまざまなチームの選手と切磋琢磨することの楽しさを経験していたからこそ、今回の選抜活動にも強い意欲を持っていた。「選手権は初戦で負けてしまったのに、自分を選んでもらったことに対しての責任もありますし、『自分にやれることは全部出し切ってやろう』という想いで選考合宿に参加しました。いろいろなチームの上手い選手が集まっているので、良いところを吸収しながら、やっていきたいと思ってきました」。
1年前に一緒にプレーした選手も多く、ピッチ内外で充実した時間を過ごしているようだ。「みんな仲が良いですけど、同じ東北ということで(山本)虎とか(芝田)玲とか青森山田の選手とは仲良くなりましたし、あとは自分は出身が埼玉なので、もともと知っている(長)準喜とか(塩川)桜道とも仲良くしていますね。結局ボールを蹴っていたら仲良くなります(笑)」。
そんなチームメイトと臨むNEXT GENERATION MATCHの会場は国立競技場。昨年12月に開催されたJ1昇格プレーオフ決勝。やはり同じ国立で試合終了間際に劇的なPKを沈め、東京ヴェルディをJ1昇格に導いたFW染野唯月は同じ『尚志の9番』を背負った大先輩であり、網代もその活躍に強く感じるものがあった。
「自分は染野選手の97回大会の青森山田に対するハットトリックを見て、『ここに入学したい』という想いが芽生えたんです。偉大な先輩ですし、動画で確認して『凄いな』と思いました。あそこでPKを蹴ることが凄いですよね。自分だったらたぶん臆して蹴れないです(笑)」。
そう言って笑ったが、おそらく網代に同じシチュエーションが訪れても、きっとキッカーへと名乗り出るはず。ストライカーらしい強気なメンタルは、プレーの随所に顔を覗かせる。
今回の選抜では10番のユニフォームを渡されている。「公式のリリースか何かで見た時にビックリしましたし、『本当に自分がこのチームの10番でいいのか』という気持ちもあったんですけど、そんなことを言っても変わらないので、10番を付けさせてもらうからにはしっかり結果を残さないといけないと思います。10番らしいことはあまりできないかもしれないですけど、自分にやれることを全部やって、点を獲って、チームの勝利に貢献したいです」。
偉大な先輩も躍動したピッチは、果たして『尚志の9番』にとって幸運のステージとなるだろうか。高校のチームメイトたちと3年間に渡って積み上げてきた、努力を形にするための晴れ舞台。国立競技場でのゴールを狙う網代には、その雄姿を見守り続けている数多くの仲間が付いている。
(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー
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