[2.18 東京都CY U-17選手権決勝L 三菱養和SCユース 3-1 FC東京U-18 三菱養和会巣鴨スポーツセンターグラウンド]
縦へと突き進む強烈な推進力が、この世代でも有数のレベルにあることは着々と証明されつつある。どれだけ相手が立ちはだかっていようとも、あえてそこをぶち抜いていってやる。それこそがここまで貫いてきた自分の絶対的な武器を生かすための、最適な方法だから。
「もう残留争いみたいな厳しい戦いはしたくないですし、ワクワクする戦いがしたいので、みんなでもっとチーム力を上げて、FC東京としてクラブユースでもプレミアでも優勝争いできるようにしていきたいですし、個人としては悔いのない年にしたいです」
右サイドを力強く駆け上がっていくFC東京U-18の鋭利な槍。DF金子俊輔(2年=FC東京U-15むさし出身)が携えている突破力は、目の前の相手が築く守備網も、ここから目指すべきステージも、逞しく撃ち抜いていくはずだ。
「最初の入りが良くて、『このまま波に乗れば』というところで、決めるところを決められなかったですし、最後のところも集中できていなくて、前半の最後に自分が気を抜いたせいで1失点してしまいましたね」(金子)。
三菱養和SCユースと対峙した、東京都クラブユースサッカーU-17選手権決勝リーグの最終戦。得失点差の関係で、決勝へと進出するためには勝つしかないFC東京U-18は、立ち上がりから相手を圧倒。前半9分にはFW山口太陽(2年)が先制ゴールを叩き出すなど、幸先良くゲームを立ち上げる。だが、少なくないチャンスを生かせずに時間を過ごすと、43分に失点を献上。同点に追い付かれてしまう。
「試合の最初からクロスまで行けたりして、自分の良いところは出せたかなと思うんですけど、集中力というところでボールが来なかった時にイライラしたり、切り替えが人より全然遅かったので、そこは良くなかったと思います」とゲームを振り返る金子も、自ら言及したように周囲と意図が合わず、苛立ちを隠せないシーンも。チーム全体にも焦りが広がっていく。
どうしても1点を奪いたいFC東京U-18を尻目に、戦況を見極めながら一太刀を狙う三菱養和ユースは、後半31分と41分に続けてゴールを挙げる試合巧者ぶりを発揮し、ファイナルスコアは1-3。「オレらが前に前にと焦って、カウンターで2点目を決められて、どんどん焦ってもう1点決められてという感じで、前の試合までに得失点も考えるべきだったとも思いました」と話した金子は悔しさを抑え切れず、ピッチへ倒れ込んだ。
「本当に良かったこともありますし、逆に悪かったこともあって、ゼロか100かみたいな感じで、波がある1年でした」と昨シーズンを総括した金子は、7月にプレミアリーグの流通経済大柏高戦でスタメン起用されると、そのままレギュラーポジションを確保。夏のクラブユース選手権では全7試合にスタメン出場を果たし、準優勝という好結果の一翼を担ってみせる。
「あそこが“100のところ”でしたね」という夏の全国を終えた金子には、サプライズが待っていた。フランスで行われたリモージュ国際ユース大会に臨むU-17日本代表へと追加招集されたのだ。
「未知の世界で何もわからなかったですし、まずは選ばれたことにもビックリして『オレが?』って。ずっと周りからもヘタクソだと言われてきたので、代表に入るなんて思っていなかったです」。それでも想定外の代表活動で、その後のU-17ワールドカップにも出場したような選手たちと過ごした時間は、今まで以上に目線を上げるには十分な経験だった。
「みんなシュート練習も上手いですし、クロスの質もオレとは全然違いました。だけど、通用したところもあって、自分の武器のスピードはこの世代の中でもたぶん結構良いところまで行けると思うので、これからも常連の人たちと争っていけるように、その武器を磨き続けていきたいと思います」。異国の地から確かな自信と明確な課題を持ち帰ってきた。
だが、そこからのバイオリズムは徐々に下降線を辿っていく。「代表に選ばれたことは自信になったんですけど、『代表だから自分がやらなきゃ』みたいな気持ちというか、ちょっと初心を忘れている感じになってしまったので、今は気持ちを入れ直して、反省してやっています」。なかなかパフォーマンスも上がらず、難しい時期を強いられる。
プレミアリーグの最終節、青森山田高戦からも大きな学びを得た。「自分としては持ち味を出せたと思うんですけど、2失点とも僕が絡んでいて、そこは身体で負けていたところもあったので、そこからは山田の選手にも絶対に身体負けしないように、筋トレは意識してやるようになりました」。目の前でリーグ優勝の歓喜を見せつけられた悔しさを、自分の中に刻み込んだ。
U-18の最高学年として臨むアカデミーラストイヤー。新しく指揮官に就任した佐藤由紀彦監督の元で、個人としては相変わらずの推進力を発揮しながら、少し内側にポジションを取って、そこから斜めにスプリントしていくシーンも披露している。
「そこは練習からやっていて、作りの部分で中に入ったらオレがもらって作っていくんですけど、今日はグイグイ行く試合だったので、後ろで繋ぐよりもアグレッシブな動きが大事かなと思ったので、そこを意識しました」とは言いながら、動きの幅を広げる新たなプレーにも取り組んでいるようだ。
本人も言及しているように、感情が表に出やすいタイプであることは間違いない。だが、そのエネルギーをプラスに生かすことができれば、好きな選手として挙げている菊池流帆のように、チームにも大きなパワーをもたらすことができるはずだ。力強く口にした今年の目標も頼もしい。「自分のプレーをしっかり出して、人の心を揺さぶれるようにしたいです」。
右サイドを力強く駆け上がっていく、若き青赤の鋭利な槍。金子俊輔がアグレッシブなプレーに滲ませていくパッションで、見る人の心を揺さぶる回数が多ければ多いほど、チームも自身もさらなる高みへと昇っていくことに疑いの余地はない。
(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー
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