[MOM4640]東京VユースDF坂巻悠月(2年)_腕章も馴染み始めた新キャプテンが攻守に躍動して東京制覇に大きく貢献!

東京ヴェルディユースの新キャプテン、DF坂巻悠月(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.23 東京都CY U-17選手権決勝 東京Vユース 1-0 三菱養和SCユース 味の素フィールド西が丘]

 幸先は最高過ぎるぐらい最高だ。自分のゴールで貴重な勝利を掴み、このグループでの初タイトルを獲得したのだから。ただ、本当の戦いはまだ幕が上がったばかり。2024年がチームにとっても、個人にとっても、まさに勝負の1年になることは重々承知している。

「ずっと目標にしているプレミア昇格というのは、チームの全員が本当に思っていることですし、夏のクラブユースも最近はずっとベスト8止まりなので、もちろんそこも超えて優勝することが目標です。個人としてはまだ代表に入ったことがないので、そこにも絡めたらいいなと思っています」。

 東京ヴェルディユースのキャプテンを託されたニューリーダー。DF坂巻悠月(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)が見せた攻守両面での奮闘が、チームに今シーズンの一冠目を逞しくもたらした。

 2月の東京制覇を懸けた東京都クラブユースサッカーU-17選手権大会決勝。昨シーズンと同じカードとなった三菱養和SCユースとの一戦に、坂巻はキャプテンマークを左腕に巻いて、ピッチへと歩みを進めていく。

「監督に指名されましたけど、『本当に僕でいいのかな?』と思いましたね。自分からやりたいという気持ちはあまりなかったですし、意外でした。まだそんなに慣れないですけど、声掛けとかそういう部分は少しずつできてきているかなと思います」。予想外だったキャプテンの指名。ただ、任されたからにはもうやるしかない。少しずつ馴染み始めた黄色い腕章とともに、ファイナルのキックオフを迎えた。

 序盤こそ相手の勢いを受ける格好になったものの、少しずつ押し返した東京Vユースが最初に掴んだ決定機は前半23分。左サイドからMF仲山獅恩(1年)が蹴り込んだCKがゴール前にこぼれると、「(川口)和也が基本的にはいつも頭で合わせる感じなので、そこからこぼれてくるボールや越えてきたボールを狙っていました」という15番が誰よりも速くボールへ食らい付く。

「コースはあまり意識していなかったですけど(笑)、反応は速くできて、うまく決められたかなって。あまり点を獲る選手ではないので、メチャクチャ嬉しかったです」。ゴールネットが揺れると、チームメイトたちも殊勲のスコアラーへと集まり、笑顔で作られた歓喜の輪。坂巻の先制ゴールでチームは1点のリードを手にする。

 以降は押し気味に試合を進めながらも、なかなか追加点が奪えない時間が続くが、DF川口和也(2年)と坂巻のセンターバックコンビを中心に据える東京Vユースの守備陣は、至って冷静だった。

「早い段階で1点獲れたこともあって、そこまで慌てずに試合ができたのかなと思います。前がちょっとうまく行っていない中でも、そこで後ろが失点してしまったらチームの流れがもっと悪くなってしまうので、まず失点しないことは意識していましたし、相手が長いボールを蹴ってくるのに対して、しっかりチャレンジアンドカバーもできたので、シュートもあまり打たせずに守れたのかなと思います」(坂巻)。

 結果は1-0での完封勝利。「ビックリしました。悠月だろうなと思っていたので」と笑った川口に大会MVPこそ譲ったものの、「キャプテンとしてチームにプラスの声を掛けることだったり、チームを勇気付けるプレーをすることはできたと思いますし、今後の目標のプレミア昇格とクラブユース優勝に向けて良いスタートが切れたんじゃないかなと思います」と口にした坂巻の躍動でタイトルを勝ち獲ったチームは、冷たい雨の中で声援を送り続けてくれたサポーターと、笑顔で東京制覇を喜び合った。

「去年は得点も多かったですけど失点も多くて、先に獲られて苦しくなる試合もあったので、もちろん攻撃のところは継続しながらも、守備のところで『みんなでもっと失点を減らしていかないとダメだよね』ということは全員の共通認識としてあります」と薮田光教監督も言及したように、今季のチームは守備の向上を強調されてシーズンに入っている。

 172センチとそこまで大柄ではない坂巻は、「スピードは速い方だと思うので、カバーだったり1対1の強さには自信があります」と自身の特徴を分析。この日も相手が長身フォワードを投入してきてからは、川口と連携しながら地上戦で威力を発揮し、きっちり無失点勝利を達成。ここで確かに掴んだ手応えを、来たるシーズンに生かしていけるかは、そのままチームの浮沈を大きく握るキーポイントだ。

 個人としてはやはりトップチーム昇格は意識しているものの、戦うステージがJ1へと変わったことで、今まで以上の努力が求められることも理解している。「J1のチームになるとユースからトップに昇格する基準ももっと厳しくなると思いますし、そうなるともっと意識を高く持って、日々の練習に取り組んでいく必要があると思うので、そういう意味では刺激になっていますね」。

 その中でも自分の前を進んでいる“同級生”の存在は、小さくない刺激になっている。「丈偉がもうトップへ行っていて、そこには悔しい気持ちももちろんありますけど、何とか追い付こうという気持ちもありますし、目標みたいな存在でもあります」。U-17ワールドカップにも出場し、今シーズンからのトップ昇格が発表されたMF山本丈偉に少しでも近付くためにも、成長の歩みを止めるわけにはいかない。

 5つ上の兄の坂巻日向も東京Vユースに在籍しており、山本理仁や藤田譲瑠チマたちと同期でプレーしていた。そんな兄弟の名前に込められた意味を、坂巻は笑ってこう明かす。「実はその真ん中にも兄弟がいて、“ソラ”という名前なので、3人で『太陽と空と月』みたいなイメージみたいです」。

 坂巻家のしなやかな最終兵器。月のようにチームを最後方から見守りながら、時には太陽のようにチームをその熱量で明るく照らす。伝統あるヴェルディのキャプテンを託された坂巻悠月の今シーズンには、大いに注目する必要がありそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー

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