ゲキサカ読者が選ぶ第102回全国高校サッカー選手権のMVP「GEKISAKA AWARD 2023 WINTER 高校生部門」に青森山田高(青森)MF芝田玲(3年=青森山田中出身)が選ばれた。
芝田はプレミアリーグ、選手権の2冠を達成した青森山田の10番を背負い、攻守両面で躍動。中盤で守備強度を発揮する一方、特長であるパス、プレースキックの精度、判断力の高さで青森山田にゴールをもたらした。中でも、特別な思いを持って臨んだ準々決勝・昌平高(埼玉)戦で1ゴール1アシストの活躍。また、抜群のリーダーシップでチームを引っ張った芝田は、大会優秀選手、日本高校選抜にも選出された。
今回の企画は、大会期間中に『ゲキサカアプリ』を使って実施。最も多くのクラップ(拍手=投票)を集めた選手を表彰するもので、芝田にはゲキサカオリジナルトロフィーが授与された。
芝田は将来のプロ入りを目指して名門・明治大へ進学。現在、日本高校選抜としても成長を目指している芝田にMVPの感想や選手権でのプレー、また青森山田での3年間について、そして今後について聞いた。
―ゲキサカの読者が選ぶMVPに選出されました。感想を教えてください。
「今年1年間、自分が凄く目立った試合というのは特になかったと思いますけど、青森山田として、たくさんの勝ちであったり、2つの優勝っていうのを掴み取れたことで、自分がこういうMVPっていう形で選出されましたけれど、まずはチームとして勝ってきたことが凄く大きいことだったと思うので、部員だったり、一緒に試合に出ていた仲間たちに感謝したいなと思います」
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―読者、サッカーファンが選んでくれたということで、また価値があるかなと思うが、その点はどう受け止めている?
「自分自身、特に選手権なんかは、チームのためにできることをやろうっていう気持ちで臨んでいたので、チームの勝利が第一でしたけど、その中で自分のプレーが評価されてっていうのは凄く嬉しいなと思います」
―MVP、「俺かな」っていうのは?
「いや、全然なかったですけど。どこで評価されたのかよく分からないですけど、そういう頑張る姿勢っていうのは報われたのかなと思います」
―改めて、選手権を振り返ってどのような大会だった?
「まずはPK戦も2回ありましたし、圧勝できたような試合もありますけど、本当に難しい試合でも勝ち切るっていう、青森山田らしい戦いが選手権を通してPK戦なんかも粘り強くというか、しぶとくというか、どんな状況でも勝ちに持ってくっていう青森山田のスタイルというか、そういうところは体現できたかなと思います」
―自分のパフォーマンスをどう評価している?
「こういうMVPなんかに選ばれるような、違いを見せれたとは全然思ってないですけど。それこそ、チームのために戦うっていう部分では、チームが勝ったっていうのは全てですし、これでチームが負けて、自分のプレーもっていうのだったら納得いかないような大会になってましたけど、まずは青森山田が優勝できたんで、自分のプレーもそこには少しは貢献できたと思うので、悪くはなかったんじゃないかなと思います」
―日本一を目指して青森へ行き、それを実現することができた。
「今シーズンを通して、勝てて嬉しかったっていう思いよりかは、やっぱり負けて悔しいっていう思いが(強い)。勝つことが当たり前じゃないですけど、青森山田ってやっぱりそういうチームだと思うんで、勝ってなんぼのチームだと思いますし、そういうチームにまたこうやって2つタイトルをもたらして、青森山田っていうチームに名を残す代にもなったと思いますし、自分だけじゃなくて、みんながそういう学年になれて、本当に嬉しいなと思います」
―選手権、特に印象に残っている試合はある?
「全試合印象に残ってますけど、PK戦の2試合なんかも凄いドキドキのゲームでしたけど、やっぱり昌平戦が自分にとっては凄く大きいものだったかなと思います。昌平高校の下部組織(FC LAVIDA)にいた経歴もありますし、その中で、国立をかけて旧友たちと試合ができたっていうところも本当に感慨深いものでしたし、嬉しかったですし、そこでゴールだったり、アシストだったり、結果も残せたんで、あの試合は自分の中で特別な試合だなと思います」
―昌平戦(4-0)は特に自分が結果を残すという意欲も表現したゲームだった。
「後期のプレミアリーグでも引き分け(2-2)。負けに近いようなゲームをしてしまったりしていて、その反省も活かしながら、ほんとに立ち上がりから素晴らしいゲームができたんじゃないかなって思っています」
―改めて、青森での挑戦の日々はどのようなものでしたか?
「もちろん、山田に行ったから成功するなんて保証は全くなかった中で、自分や家族が思い切って決断したことを正解に変えたっていうのは自分だけじゃないですけど、自分の努力っていうのはあったと思うので。山田に行って、自分自身を高めたことは本当に自分の人生において正解だったなと思います」
―もちろん、良かったことばかりでなく、苦しかった時期も。
「たくさん。もちろん、1年時なんかはトップチームに絡めなかったり。本当に強くて、凄い先輩方が試合に出ていたので、そういう人たちにやっぱり憧れもありながらレベルの差っていうのを痛感したような1年目でした。2年目であれば、試合に出場しながらも、やっぱり勝てないっていうような試合がたくさんあって、タイトルも取れずに自分自身にももちろん責任はありましたし、そういう色んな経験を3年目でぶつけることができて。インターハイは優勝できなかったですけど、3冠という目標を掲げながら、一つは落としてしまいましたけど、その後も凄くチームが引き締まった状態で残り2つを取れたっていうことで、『終わり良ければ全て良し』ではないですけど、今はやっぱり青森山田に楽しかったというか、嬉しい思い出しかないですね」
―頑張れた原動力は?
「中学3年生の時に行った時から、青森山田で『10番をつけたい』っていうのは本当にずっと思っていたことであって、そこが自分の中で辛い時も『やっぱり10番をつけたい』っていう気持ちが本当に強くあったので、そこは自分の頑張る原動力になったんじゃないかなと思っています」
―10番のプレッシャーの中での1年だったと思うけれど、相応しい10番になれた。
「いや、もう本当に素晴らしい歴代の10番の先輩方がいて、自分よりも個性があったり、特長があったりっていう、素晴らしい10番の方々がいましたけど、終わってみて2冠した代の10番っていうことにはなれたので。自分のプレーがそういう方々に比べて、凄いプレイヤーだったかどうかは分からないですけど、チームを勝たせるのが10番の役目だとは思ってるので、そこは一つ自分の使命じゃないですけど、そういうところを果たせたかなと思っています」
―「どうだ」っていう気持ちも少し。
「いや、自分の力によって勝った試合っていうのはあんまり記憶になくて、それでも色々なチームメイトがヒーローになりながら、常に精神的にも、ピッチの中でも中心には自分はいたつもりではいるので チームを勝利に導くっていうのは自分の結果だけじゃなくて、色々な面で自分はやってこれたんじゃないかなと思います」
―恩師や家族への感謝も凄く大きいと思うが。
「本当にこの青森山田に行く決断っていうのは、自分よりも家族が主体となって動いてくれた面でもありますし 自分はどちらかというと反対してた側っていうのもありますけど、自分を送り出してくれて、もちろん、色々なお金の面だったりっていうところでもサポートしてもらったりしました。それをしてもらってるからこそ、自分自身に妥協を許さずにやってこれましたし、選手権優勝も家族が本当に喜んでくれて、自分よりも喜んでくれて、一つ恩返しじゃないですけど、苦労だったり、家族にも悩むところはあったと思いますけど、そういうところを喜びの気持ちに変えれて良かったなと思います」
―青森山田のチームメイトの存在も大きかったと思うが、どんなチームだった?
「今年の自分の学年は本当に仲がいいっていうところは一つの特長としてあって、その仲の良さがシーズン中、バラバラになることももちろんありましたけど、プレミアのファイナルや選手権に向けて本当にまとまらないと勝てないっていうところで、(主将の山本)虎だったりを中心にしながらチームが一つになって、より仲の良さが深まって、最後終われたかなって思いますし、今年の学年は本当に最高の学年だったなと思います」
―本当に意識高く、互いに厳しいという面が見えていたけれど、かなり仲が良かった。
「そうですね。オンとオフが本当に今年ははっきりしてて、もうシーズンの最初なんかは、そのオフの状態がチラついた状態で練習に入ってしまったり、そういうチームとしての甘さがありましたけど。それこそ、今言ったようにプレミアファイナルだったり、選手権っていう本当にみんなが目指してるような大舞台を目前にして、練習の緊張感だったりっていうのは良い意味で高まっていって、その中で仲の良さっていう部分を活かして細かいコミュニケーションを取ったり、本当にその学年の色っていうのが良い風に作用した、本当にラストの1か月間だったなと思っています」
―生涯の仲間に。
「そうですね。ピッチ内外で凄く仲良くして、辛いことももちろんありましたけど、それも全部仲間と乗り越えてきたんで、まずは大学サッカーで色々な選手とまたやり合えたら良いなと思ってます」
―もちろん、全部勝つ。
「そこはもうプライドがあるんで、負けずにやりたいなと思っています」
―今回、日本高校選抜に選出。青森山田の仲間たちとも一緒にプレーする機会が増えたが、どういう活動にしていきたい?
「高校選抜の候補合宿の時は、青森山田として来ていましたけど、今、選抜活動から一回離れて、みんなとも離れてからまた来てみて、それぞれが一人間っていう風に自分は見てるんですけど、ちょっと新鮮な感じです。ずっといた選手と一度離れて、もう一回チームで一緒にやるっていう、凄く新鮮な気持ちがありますし、他の選手とも一緒にプレーしていて、凄い楽しいなと思います」
―今日の練習試合(対流通経済大、2-1)を見ていても、一際声も出してたし、プレーでも存在感のあるゲームができた。
「流通経済大学さんなんかは、去年もインカレでも全国3位だったり、関東1部リーグでも上位に確かいたと思いますし、そういう相手に自分はどれぐらいできるんだろうなっていう興味というのもあって、今日の試合に臨みました。凄くモチベーションの高い状態で挑めて、結果もついてきたんで、動きも悪くはなかったと思いますし、そこは自信になりました」
―この活動を、自分のステップアップにどう結びつけていきたい?
「最終目標、日本代表っていうところに設定している上で、大学サッカーの道に進んだ訳なので、大学選抜っていうところに入っていくことも自分の将来に凄く繋がっていくと思いますし、自チームでの活動もそうですけど、こういう選抜の時に、即席のチームで自分がどれだけできるかっていうのは、今後に凄く大きいと思うので、誰よりも目立つ気持ちっていうのを持って、今やっています」
―高校サッカーの代表チームとしてのプライドや責任感もある。
「ここにいるメンバーは全員が進んでいく道の本当にトップレベルのチームと今日はやったので。ここに負けていたら、『じゃあ、大学ではできないじゃないか』っていうところは、自分でも持って、『絶対勝つよ』っていうところで試合にも入りましたし、 『NEXT GENERATION MATCH(対神戸U-18)』は、それこそ下級生の相手になりますし、過去5年、勝ってないっていうことなんで、6年ぶりの勝利っていうのを今年は絶対掴み取りたいなっていう風に思っています(※1-0で勝利)」
―デンソーカップチャレンジ(2月27日開幕)の目標についても教えてください。
「本当に自分たちが進む道の本当にトップレベルの選手たちが集まるのがデンソーカップだと思うので、自分の実力を測るっていうところでは本当に凄く良い機会ですし、自分自身のパフォーマンスにしっかり目を向けながら、その中でチームの勝利っていうところにこだわっていきたい。去年は初勝利ってことで1勝でしたけど、やっぱり1勝、2勝、3勝と、ほんとに全部勝つぐらいの強い気持ちで臨みたいなと思います」
―自分のどういうところを確かめたい?
「スピード感のところは、やっぱり高校サッカーと一つ違うところだと思いますし、判断のスピードだったり、全ての基準、スピードだったり、フィジカルレベルっていうのも確かめたいですし、攻撃も、守備も、どちらもどの大学生にも負けないように頑張りたいなと思います」
―自分が一番上手い、というところも見せる活動に。
「大学生でも本当に『自分が今年戦う相手だ』っていうような目を向けて、負けて良い相手じゃないと思うんで。相手は自分のことを全然知らないと思いますけど、そういう選手たちをあっと驚かせれるようなプレーをしていきたいなと思います」
―大学生活も寮に入ってスタートしている。
「明治大学、凄く厳しい環境ですけど、ここで自分を磨くことによって本当にひと皮、ふた皮剥けてもっともっと素晴らしい選手になれるんじゃないかっていう可能性を感じてますし、まだまだだいぶスピード感っていうのは速いですけど、そういうところにしっかり順応して、より自分の色っていうのを出してやっていきたいなと思います」
―一番厳しい環境を求めて明治へ。
「やっぱり、プロになるなら明治っていうところも考えてましたし、青森山田だったり、厳しい環境を選んで自分自身成長してきたっていう自負もあるので、大学サッカー界で一番厳しい環境だと思いますけど、明治大学は。ここでの4年間で、ほんとにプロ行っても余裕でやれるぐらい成長していきたいなと思います」
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―自分の性格もストイックだなって思う?
「妥協することが嫌いで、人がやってない時こそやりたいぐらいな性格なんで。そういう強みを4年間継続して、大学っていうのは自由な時間っていうのも増えてくるとは思う。やっぱりサッカーしに明治大学に行って、素晴らしい環境で揉まれて、自分の成長につなげたいなと思います」
―4年間の目標は?
「大学生活の間に大学選抜もちろんそうですけど、やっぱり日本代表に入りたいっていう気持ちは強くあるので、明治大学に進むってことで、明治大学の全てを吸収して、全てを自分の力にして、何回も言ってますけど、もっともっと凄い選手になりたいなと思います」
―最後に、ゲキサカ読者へのメッセージをお願いします。
「読者MVPってことで、自分に投票してくれた皆さん、本当にありがとうございます。自分の力だけではこういう賞はもらえなかったと思いますし、凄く仲間に感謝してますけど、こういう賞を頂けて、本当に自分の自信になりました。ありがとうございました」
(取材・文 吉田太郎、取材協力 日本高校選抜)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
Source: 大学高校サッカー
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