[3.9 J1第3節 町田 1-0 鹿島 Gスタ]
J1初昇格のFC町田ゼルビアが9日、首位に立っていた鹿島アントラーズを1-0で破り、今季無敗のまま3位に浮上した。青森山田高を常勝軍団に導いた黒田剛監督のもと、昨季のJ2リーグを席巻した堅守速攻スタイルで正面からぶつかり、Jリーグ史上最多20冠を誇る常勝軍団に今季初黒星をつけた。
この日の町田は試合開始から猛烈なロングフィードで押し込み、一度も主導権を渡さないまま前半13分にカウンターから先制点を奪取。その後は怪我人のアクシデントに見舞われるも、ハーフタイムを挟んで両サイドハーフを入れ替え、守備強度を高めて難局を乗り切った。そして最後は鹿島の猛攻をDFチャン・ミンギュら守備陣が完封。まさに町田らしいプラン通りの形で勝ち切った。
かつての鹿島の代名詞であった“勝負強さ”のお株を奪うような白星。試合後、黒田監督は「過去20冠を取っていて、歴史的に名高い鹿島に対し、リスペクトの気持ちをしっかり出しながら我々もそれに負けないだけの奮起をしようということで臨んだ」と振り返りつつ、“相手の土俵”に立っての勝利に胸を張った。
「J1初参戦ということで多少相手に飲み込まれるシーンがあれば一気に持っていかれるし、鹿島は立ち上がりから強いので、そういったところで飲み込まれないように相手の長所、ストロングで上回っていこうと考えた。そこをしっかりやれた際には必ず、相手がちょっと怯んだり、または一歩停滞したりということが出てくるだろうと。我々がやりたいことは相手の勢いを完全に潰し、相手の得意な土俵で競り勝っていこうと。それを彼らに勇気づけながら練習してきた」
先制後も数多くの決定機を作っていたが、FWオ・セフンのシュートがことごとく枠を外れ、追加点は奪えなかった。そうしたクオリティー不足は時に試合の流れを変えるもの。しかし、町田が崩れることはなかった。
「オ・セフンのところで2本、3本の決定打を外してしまったところでちょっと流れは嫌な感じはしていたが、我々としてはクリーンシートで行くこと、どんな状況でもブレず、自滅することなく時間をうまく使いながら、この1点をしっかり保持しながら2点目、3点目を狙っていこうということを彼らに意識づけをした」
「何回かチャンスはあったし、2点、3点と取れて2-0、3-0がベストでしょうけど、最低でも1-0で勝ち切るところを彼らがしっかり示してくれた。後半に関しても特に大きく修正することなく、しっかりゴール前も弾き返してくれたし、決定機をつくられることなく、町田のペース、町田のリズムで最後まで全うしてくれた。首位だった鹿島に勝つことによって、我々が順位を上げていく、上に食らいついていく志向をみんなで共有し、パワーを持っていけたことがよかった」
開幕節はG大阪を相手に終了間際に追いつかれてドローに終わり、第2節・名古屋戦のJ1初勝利はアウェーだったため、これがJ1でのホーム初勝利。黒田監督は「J1のホームで初めての勝利ということで、ファン・サポーターに明るい話題を提供できたことをすごく嬉しく思うと同時に、ここまで無敗ということで2勝できていることは大いに自信になる」と手応えを口にした。
この3試合で特に際立っているのは、3試合1失点という堅守だ。開幕節ではG大阪のFW宇佐美貴史に直接FKを決められ、悔いを残したが、その後の2試合はクリーンシートによる1-0勝利が続いており、いまだにセットプレーを除く流れの中での失点はない。
指揮官は「前からのプレス、規制によって制限できているところもあるし、クロスの本数を減らすこと、クロスの守備というところでフリーにさせないこと、背中に潜り込まれないところをかなり細かく調整している」とその要因を指摘。「変にフリーな状態で打たれることがなかなかない、そういうシチュエーションを作らせないぶん、そういった決定打になっていないと言えると思う。これはキャンプからしっかりと積み上げてきたこと、去年から志向してきたことが高いレベルの中で順応し、実践してくれている成果だと思う」と選手たちを称えた。
この勝利によって順位は3位に浮上したが、2勝1分の勝ち点7は首位の広島、2位の柏と並ぶ戦績。黒田監督は「練習試合を通じてもJ1と数々の試合をしてきたが、その中でもかなりの手応えを感じている。選手たちにも苦手だとか、変な気持ちがマイナスになるような部分もない。そのことも確信に変えて、自信を持ってぶつかっていこうとしている。我々にとって失うものは何もない。開き直って思う存分サッカーができるという点に関しては、ある意味、精神的に優位に立ちながらできているのかなと思う。今日の1勝はそれに輪をかけてさらに嬉しいものになった」と充実感をにじませた。
(取材・文 竹内達也)
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