[3.13 サニックス杯予選リーグ 近江高 2-3 大津高 グローバルアリーナ]
少しずつ自分にできることの範囲が増えてきていることは実感している。それゆえに欲張りたい。求められている役割を全うするのはもちろん、それを超えていくだけの力を身に付けるため、とにかく攻守にチャレンジし続けることで、絶対的な選手になってやる。
「去年は守備で結構目立っていたのかなと思うんですけど、個人としてはゴールを獲る回数を増やしていきたいですし、守備も攻撃もどっちもできるような選手を目指していきたいです」。
184センチの体躯を誇る、スケール感あふれた大津高(熊本)の大型ボランチ。MF兼松将(2年= F.C.Volaest Miyazaki出身)は貪欲にチームと個人の結果を追い求めていく。
それは圧巻の一撃だった。『サニックス杯国際ユースサッカー大会2024(福岡)』の初戦。高校選手権で旋風を巻き起こした近江高(滋賀)と対峙した大津は、立ち上がりから攻勢を強めていく中で、前半25分にセットプレーのチャンスを得ると、右から10番のMF嶋本悠大(2年)が蹴り込んだCKに、長身の6番が飛び込んでいく。
「セットプレーはチームの武器ですし、その前に2本ぐらいコーナーのチャンスがあったんですけど、全然決められなかったこともあって、『ここは自分が流れを変えてやろう!』と思って、突っ込んだら良いボールが来たので、あとは自分の高さを生かして決めるだけでした」。高い打点のヘディングで兼松が合わせたボールは、鮮やかにゴールネットを揺らす。
チームを率いる山城朋大監督も「去年のセットプレーはほぼほぼ碇(明日麻)と兼松がゴールを挙げていましたからね」と言及する“得意の空中戦”を制しての1点。「感覚的には高さも大事なんですけど、どっちかと言うと『自分に付いているマークの相手には絶対に負けない』という強さと気持ちは意識しています」という言葉も頼もしい。
31分には“地上戦”で魅せる。左サイドを運んだサイドバックのDF大神優斗(2年)が中央へ折り返すと、兼松はダイレクトでスルーパス。抜け出した嶋本がGKとの1対1を制し、チームは華麗に追加点を叩き出す。
「自分がトラップしてしまうとテンポが上がらないですし、大神からボールが来る前に、チラッと前を見たら悠大が前に行くアクションをしていたので、そこに通しました」。さらっと振り返ったものの、難易度の高いアシストに攻撃センスも滲む。試合は3-2で勝利。兼松の1ゴール1アシストの活躍が、チームの勝利を力強く手繰り寄せた。
2年生だった昨シーズンはボランチの定位置を確保し、プレミアリーグでも19試合に出場。「球際の部分でユースのいなしてくるような相手に対しては強く行けるようになったかなという想いもありますし、スペースを見つけてサイドの背後へ出すパスもそうですし、自分も背後へ走ったりと、そういうことが増えたかなと感じています」と成長している手応えを掴んだという。
ただ、同時に攻撃面での課題もより明確になった。「山城先生からも指摘されるんですけど、パスを受けた時に後ろを向くことが多いので、フォワードが後ろを向いてバックパスした時には、自分は後ろを向かずに前を向いて、どんどんチャレンジしていきたいですね」。シビアなシーンでも、まずはベクトルを前へ向ける。その積極性は失いたくない。
その想いを強くさせてくれたのは、プロの日常を垣間見た貴重な機会だ。2月中旬から行われていた北海道コンサドーレ札幌の熊本キャンプに、兼松は数人のチームメイトとともに2週間近く練習参加。トレーニングのサポートメンバーという形ではあったが、日本のトップレベルに触れることで、小さくない刺激を受け取った。
「自分と同じボランチのポジションの荒野(拓馬)選手は、どんどん前を向いて縦パスを刺していましたし、縦パスを受けた選手も全然ボールを奪われなくて、荒野選手が前を向いたら全員がアクションを起こしていたので、自分もボールを持ったら『絶対に前を向いてプレーしてくれる』と周りに思わせるぐらい、どんどん前を向いてプレーしていきたいなと思いました。荒野選手は守備も本当に強度が高いですし、アドバイスもいっぱいもらえたので、それは良かったです」。
「プロは強度も質も高校生とは全然違いますし、ゲームに参加してもプレスのスピードもプレースピードも速くて、周りを見てパスを出すような時間は全然与えてくれないので、2週間参加させてもらった中でプロのスピード感にも慣れたことで、高校生とやってみるとボールを受けてからボディフェイクで相手を剥がせたりして、『プロの練習に参加すると余裕が出てくるな』というのは凄く感じます」。
この日の試合ではMF畑拓海(2年)とドイスボランチを形成。「去年はどっちかと言うと後ろ気味のポジションが多かったんですけど、今年は畑が後ろ気味にいるので、自分が前目気味でチャンスメイクに関わっていくというのを意識してやっています」と“相方”とのバランスも考えながら、今まで以上に攻撃的な姿勢は打ち出していく腹積もりだ。
プレミアリーグでの“ノルマ”は、指揮官からも少し高めの数字を設定されているが、それぐらいの発破は望むところ。「山城先生からも『オマエが10得点ぐらい獲らないと残留できないぞ』とは言われているので、ゴールにはどんどん関わっていきたいですし、そこまでの攻撃の形にも自分がどんどん関わって、フォワードがゴールを獲れないような試合でも、自分が獲って勝てるような試合を多くしていきたいです」。せっかく高いレベルで戦えるのだから、目指す場所だって高ければ高いに越したことはない。
ダイナミックな守備力に、ダイナミックな攻撃力を兼ね備えた、何でもできる選手への大いなるチャレンジ。兼松が攻守両面で進化を遂げていくことが、大津が期す2024年の快進撃へと繋がることに、疑いを挟み込む余地はない。
(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー
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