4か月の模索を経て痛感した「1勝することの価値」。鳥栖U-18は名古屋U-18を2-0で撃破して8試合ぶりのリーグ戦勝利!

MF池末徹平(19番)の追加点もあってサガン鳥栖U-18はリーグ8試合ぶりの勝利!
[9.10 高円宮杯プレミアリーグWEST第13節 鳥栖U-18 2-0 名古屋U-18 佐賀市健康運動センター]

 ある者はピッチに倒れ込み、ある者は両手の拳を突き上げ、感情を爆発させる。無理もない。昨シーズンは日本一を経験した彼らがリーグ戦の勝利を味わうのは、4か月ぶりの、8試合ぶりのことなのだから。

「ホッとしましたし、メチャメチャ嬉しかったですし、もう何て言ったらいいかわからなかったですけど、ホームゲームということも凄く大きかったですし、ここで全員が本当に走り切って、チームが1つになれたことが勝てた要因かなと思います」(サガン鳥栖U-18・先田颯成)。

 全力で走って、全力で競って、全力でやり切った末に、全員で掴んだ勝ち点3。10日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第13節、サガン鳥栖U-18(佐賀)と名古屋グランパスU-18(愛知)が激突した一戦は、前半20分にDF内丸寛太(2年)のプレミア初ゴールで先制した鳥栖U-18が、後半17分にもMF池末徹平(2年)のこちらもプレミア初ゴールで突き放し、2-0で勝利。5月7日に行われた第7節の横浜FCユース戦以来となる久々の白星を手にしてみせた。

 オープニングシュートは必勝を期すホームチーム。前半3分。右サイドを抜け出したMF堺屋佳介(3年)が左足で枠内へ。ここはトップチームへの昇格が内定している名古屋U-18のGKピサノアレクサンドレ幸冬堀尾(3年)がキャッチしたものの、10番が滲ませる先制への意欲。10分は名古屋U-18に決定機。MF西森悠斗(2年)を起点にFW野中祐吾(1年)が右へ振り分け、FW西森脩斗(2年)のシュートは鳥栖U-18のGK小池朝陽(3年)がファインセーブで阻止。いきなりやり合う両者。漂う好ゲームの香り。

 20分の歓喜は「このポジションを言われた時は『あれ?間違っているのかな?』と思いました」と笑った“新・右ウイングバック”によって。中盤アンカーの池末が右へ展開したボールを内丸がクロス。ファーで収めたFW與座朝道(2年)のシュートはピサノがファインセーブで凌いだものの、こぼれ球に詰めた内丸のシュートがゴールネットを揺らす。この夏のシステム変更で3-5-2にトライしているチームに、新しくできたポジションでスタメン抜擢の2年生が大仕事。鳥栖U-18が1点のアドバンテージを奪う。

「前節の敗戦という結果を受けて、今週1週間は『もっともっと高めなくては』ということで、今年一番ぐらいに熱いトレーニングができて、凄く良い充実感の元でこのゲームに臨めました」と古賀聡監督も語った名古屋U-18は追いかける展開に。30分にはキャプテンマークを巻くDF大田湊真(3年)の攻め上がりから、DF伊澤翔登(2年)の丁寧なパスを叩いたMF松嶋好誠(2年)のシュートは枠の上へ。40分にもトップ昇格内定のMF鈴木陽人(3年)が仕掛け、マーカーを外した野中のシュートはゴール右へ外れるも好トライ。お互いに攻め合った前半は、1-0でハーフタイムへと折り返した。

 後半は両チームの守護神が魅せる。5分は名古屋U-18。MF内田康介(3年)のパスを受けたセンターバックのDF長田涼平(3年)が、きっちり枠へ収めたミドルは小池がファインセーブで回避。直後のCKから、こぼれをシュート気味に打ち込んだ鈴木のクロスも、小池が再びパンチングで凌ぐ。

 11分は鳥栖U-18。中央を単騎で抜け出したキャプテンのMF先田颯成(3年)がシュートまで持ち込むも、ピサノは冷静な対応で圧巻のビッグセーブを披露すると、13分にも今度は左サイドを突破した堺屋の1対1も、ピサノが絶妙の飛び出しでファインセーブ。GK同士のハイレベルな意地の張り合いが、ゲームのテンションを一段階引き上げていく。

 すると、次の得点を記録したのも鳥栖U-18。17分。左サイドでボールを持った與座が鋭いクロスを放り込み、エリア内のこぼれ球にいち早く反応した池末が押し込んだシュートは、ゴールネットへ到達する。前節でプレミアデビューを飾ったばかりの2年生が、2試合目で記録した初ゴール。2-0。ホームチームがリードを広げる。

「新たな選手も入る中で、アクションの数も増えてきましたし、相手を変化させるところは何度か出せていたと思います」と古賀監督も話した通り、決して悪い流れではない中で2点のビハインドを負ったアウェイチーム。23分には西森悠斗のパスから、途中出場のFW大西利都(1年)が枠内シュートを放つも、ここも小池がファインセーブ。31分にも鈴木のパスから内田が打ち切ったミドルは、わずかに枠の左へ。どうしても1点が遠い。

 終盤の43分。名古屋U-18は右サイドをDF森壮一朗(1年)が思い切り良く仕掛けるも、対応したDF林奏太朗(3年)が懸命に身体を張ってオフェンスファウルに。右からDF黒木雄也(1年)、DF松川隼也(3年)、林と並んだ3バックを中心に、鳥栖U-18の集中力は途切れない。

 そして、タイムアップのホイッスルが耳に届く。「何かきっかけを掴もうということで、『もう1回後期は頑張るぞ』と言ってここまでやってきたので、後期の2試合目で勝ち点3を獲れたことは本当に選手たちの自信に繋がったと思いますし、選手たちがやってきたことがしっかり出せたと思います」と田中智宗監督も安堵の表情を浮かべた鳥栖U-18が、8試合ぶりの勝ち点3を奪取し、“でんぐり返し”でサポーターと喜びを共有する結果となった。

勝利を手にした鳥栖U-18の選手たちはサポーターの前で“でんぐり返し”を披露!

 近年の鳥栖のアカデミーは、各年代で目覚ましい結果を出し続けてきた。ゆえにここまで勝てない日々が続く時間が、誰もが味わったことのない苦しい経験だったことは想像に難くない。

「今までもずっと勝ってきたので、周りの人からも『こういう経験も大事だよ』とは言われましたし、確かにそういう経験も大事だと思うんですけど……」と口にした先田は、「今年はだいぶ悔しい想いをしてきているので、今ここで味わえたことを『良かった』と言っていいのかわからないですけど、これを良い踏み台としてやっていければいいかなと思います」と言葉を続けている。

 さらにキャプテンは指揮官が、この試合を前にして語ったことを教えてくれた。「今日の試合前に田中さんが言っていたんですけど、『サッカーは勝利で人を笑顔にさせられるし、恩返しもできるんだから、それを体現しよう』と。今日も皆さんに挨拶に行った時も、サポーターの皆さんも保護者の皆さんも、友達も来てくれていたんですけど、笑顔と拍手で迎えてくれたので、田中さんの言うところはできたかなと思います」(先田)。

 もちろんその想いは他のチームメイトも同様だ。殊勲の先制弾を叩き出した内丸も「もう久しぶりの勝ちということもあって、泣きそうでしたね。勝った時には歓声も聞こえてきて、サポーターの方々の笑顔も見られたので、それを見て感動したというか、『次も頑張ろう!』と思いました」と自身も笑顔で口にする。改めて勝利を挙げることの難しさと、それを手にした時の喜びを体感してきた彼らだからこそ、ここからのリーグ戦で巻き返してやろうという気持ちも今まで以上に高まっている。

「残留はマストなので、ここからしっかり勝ち続けて、上の方にどんどん上がっていって、1位を目指していきたいと思います」(内丸)「次もホームですし、今日みたいなゲームができればいいかなって。ここでまた負けてしまうと今日の勝利の意味がないですし、これを今後に繋げていきたいと思うので、しっかりここからどんどん勝って、勝って、勝って、もっと上位争いをしていきたいと思います」(先田)「ここまででもう十分負けてきたので、あとはもう勝つだけかなと」(田中監督)。

“1勝”することの価値を痛感してきたからこそ、ここからの日常でも彼らだからできることは必ずある。浮上の兆しをようやく自らの力で引き寄せた鳥栖U-18は、まだまだ何も諦めていない。

(取材・文 土屋雅史) 


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Source: 大学高校サッカー

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