[4.6 プレミアリーグEAST第1節 市立船橋高 0-2 青森山田高 千葉県フットボールセンター]
新生・青森山田にとって、自信となる1勝だ。“高校年代最高峰のリーグ戦”高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2024 EASTが6日、開幕した。昨年度優勝の青森山田高(青森)がアウェーで市立船橋高(千葉)と対戦。MF川口遼己(3年)とFW大沢悠真(3年)のゴールによって2-0で勝った。
青森山田の正木昌宣監督は、試合直後のフラッシュインタビューを終えると、クールダウンをする選手たちの下へ歩み寄り、一人ひとりとがっちり握手をしていた。そして、「今年、『オマエたちは雑草だ』って言ってるんで。雑草魂で不安と戦ってた部分でいくと、この勝ちっていうのは自信に繋がるので、大きいかなと思います」と微笑んだ。
青森山田は23年度にプレミアリーグと選手権の2冠を獲得した。だが、主力の大半が卒業。新チームは1月の東北高校新人大会準決勝で敗れ、春遠征の1か月間も思うような結果を残すことができなかった。「彼らは多分、『オレら、大丈夫かな』っていう不安の中で戦っていた」と指揮官。まだ昨年のように、多彩な戦いをができるようなチームではない。それでも、この日は立ち上がりから相手を押し込むことやゴールを隠す守備、シュートを打たせない守備を徹底するなど、今、自分たちにできることをやり切って18年から続いている開幕勝利を継続した。
両校は1月の全国高校選手権準決勝で対戦。青森山田が1-1からのPK戦を制している。因縁の再戦は序盤、青森山田が前からの攻守でプッシュ。3月のサニックス杯では押し込みながらも不用意な失点をすることが多かったため、「整理しながら飲み込む形」(正木監督)で危なげなく試合を進めた。
そして、MF小山田蓮(2年)のドリブルシュートやセットプレーから相手ゴールを脅かすと14分、選手権優勝メンバーのU-17日本高校選抜候補左SB小沼蒼珠(3年)がロングスロー。混戦から小さなクリアを川口が右足ダイレクトで狙う。グラウンダーの一撃は、ゴール前を抜けてそのままゴールイン。指揮官の“直感”で急遽先発起用されたという小柄なMFのゴールで、青森山田が先制した。
リードされた市立船橋はボールを大事に保持しながら、ポゼッションして反撃。19分にはCB岡部タリクカナイ颯斗(3年)が縦パスを差し込み、前を向いたFW伊丹俊元(3年)が左足を振り抜く。ボールを保持しながら、CB鶴岡寿咲(3年)と岡部の両DFがMF峯野倖(3年)らへグラウンダーの縦パス。市立船橋は昨年のインターハイ以来との公式戦出場となった峯野がボールキープ、ターン、セカンドボール回収と一際目立つ動きを見せていた。DFラインが踏ん張り、中盤でも優位性を保つと、31分には伊丹の左FKから岡部が決定的なシュート。だが、青森山田GK磯村颯(3年)が阻止する。
市立船橋は0-1の後半開始から、選手権の青森山田戦で同点弾を決めているU-17日本高校選抜FW久保原心優(3年)とMF桑原理統ナーテ(3年)を同時投入。7分には、MF山本一誓(2年)のボレーシュートがゴールを脅かし、直後にも峯野の突破を起点とした攻撃からチャンスを作る。
青森山田は前半、セカンドボールの攻防で苦戦する時間帯も。それでも、後半はベンチからの指示で相手攻撃時のスライドが向上した。連続した守備で相手の攻撃を封鎖。市立船橋は相手のファーストDFを剥がすも、次のパスやスピードアップしたいところでのパスを青森山田DFに次々と引っ掛けられてしまう。
青森山田はDFラインも堅かった。この日、ボランチを務めてきた10番MF谷川勇獅(3年)を右SBとして起用。相手が2トップへのロングボールを増やしてくる中、谷川と小沼の両SBとDFリーダーのCB伊藤柊(3年)、CB福井史弥(2年)の4バックが安定した守りを続けていた
市立船橋は41分、左サイドから仕掛け、PAで折り返しを受けた久保原がマークを外して右足シュート。だが、ボールは右外へ外れてしまう。すると45+2分、青森山田は中盤でのルーズボールから交代出場のFW大沢悠真(3年)が思い切り良くミドルシュート。GKの意表を突く一撃がゴールを破った。「多分、プレミアって苦しい時間、ラストの時間って出てくるんで、あそこで変化つけられるのが大沢」(正木監督)と“切り札”起用されたFWが値千金のゴール。青森山田が2-0で勝利した。
市立船橋の峯野は「青森山田はやっぱり決めるところしっかり決めて、守備もしっかり守れてたので、ああいうチームがやっぱ勝ってくのかなと思って。ほんとに悔しかったです」と語る。一方、青森山田のキャプテンマークを巻いた小沼は、「ペナ(PA)の中での隠す守備だったり、シュート打たせない守備っていうのが、自分たちは春遠征終わってからずっと練習の中でもキーワードとしてやってきたんで。それが今日の試合に出て良かった」と頷いた。
新チームはなかなか結果が出ず「危機感しかない状況でずっと練習していた」(小沼)という状況から、まず守備を構築して勝利。小沼は「ほんっとに大きいと思います。 個人としても、チームとしても、これからの山田としても、ほんとに安心した勝利です」と喜んでいた。ただし、選手たちは試合後の整列前には「次があるぞ!」の引き締めの声。自信となる白星だったが、高い目標を持つ選手たちに満足感はない。
この日はセカンドチームもプリンスリーグ東北1部開幕戦で勝利した。正木監督は「競争っていうのが出てくると思うから。指導者としては嬉しいですよね。どんどん出てくるというのは」。“雑草”の青森山田はまだまだこれから。昨年の経験者や新戦力、そして青森に残った選手たちによる競争を経て、次は開幕2連勝を目指す。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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