[4.20 J1第9節 浦和 0-1 G大阪 埼玉]
ガンバ大阪の若きストライカーが、プロ入り後初の2試合連続ゴールでチームに連勝をもたらした。
トップ下で4試合連続の先発が続くFW坂本一彩は0-0で迎えた浦和戦の後半33分、右サイドを切り裂いたFWウェルトンのパスをペナルティエリア内で収めると、迷わず右足を振り抜いた。「マイナスで受けてとりあえず足を振ることだけ考えて振った感じ。ボールをもらう前からゴールがどの位置にあるかは把握していたので、足を振って枠内に飛ばすことだけ意識していた」。ゴールを見るほどの余裕はなかったが、パワーと精度を併せ持ったシュートをゴール左隅に突き刺さった。
坂本にとっては前節・鳥栖戦(◯2-1)の同点弾に続く2試合連続ゴール。また鳥栖戦のゴールはシュートの当たり損ねがゴールラインを割った形だったため、喜びは控えめだったが、この日はアウェーに集まったG大阪サポーターの前で感情を爆発させた。
「めちゃくちゃ気持ち良かった。前回の試合はボテボテのシュートで、あまり綺麗に入ったゴールじゃなかったけど、今回はしっかりネットに突き刺さったようなゴールだったので嬉しかった」。そう笑顔で振り返った坂本は決勝点の大仕事に「すごく自信になるし、数少ないチャンスを仕留めるのが前の仕事。そこを果たせたのは良かった」と胸を張った。
さらにこの日は得点だけでなく、走行距離もチーム2位の11.674kmを記録。最前線に立つFW宇佐美貴史と連係しつつ、トップ下からのハイプレスとプレスバックで相手の攻撃にも圧力をかけ続けた。「あまり自分では走っている感覚はないけど、そう見えているというのはすごい自信になる。でも走るようには意識しています」。
トップ下の持ち場には「今年の途中から始めたところだけど、自分はライン間でボールを受けるのも得意としているので、そういうところを意識しているし、そういうところで良さが出ていると思う」と手応えを感じているという坂本。またG大阪ユースの大先輩にあたる宇佐美との連係も「意識しているのは距離が遠くなりすぎないこと。僕はトップ下に入る時もあれば先頭に入ることもあるので、お互いのポジションを見ながらポジションを取ることを意識している」と日々深まっているようだ。
そんな坂本だが、目覚ましい成長を支えているのは昨季の経験だという。ファジアーノ岡山での武者修行でJ2リーグ戦24試合4ゴールを記録し、「試合感もついたし、フィジカルも意識的にトレーニングしてきた」とプロ基準を会得。また5〜6月にはU-20W杯にも出場し、「世界で戦っていくにはフィジカルも大事だと思うし、そこの差はすごく大きいと感じた。帰ってきてからトレーニングは増えた」と同世代の世界トップ基準を日々の生活にも還元している。
そうして迎えた今季、J1リーグで初の開幕スタメン入りを果たすと、ここにきて直近4試合連続先発出場で2ゴールを記録。開幕節はJ1昇格組の町田相手にノーゴールに終わり、「ここで結果を残していかないとFWは厳しいポジション。なるべく早く点が欲しいのが本音」と悔しさを口にしていたが、徐々にトップカテゴリの基準にも慣れてきたことで飛躍の時を迎えている。
J1基準への慣れは得点だけでなく、プレーの細部にも感じられている。「相手のディフェンスと体当たりしたら勝つ確率は低いと思うけど、当て方は試合を通じてわかってきた感じがある」「試合を通じてだんだん自分の背後に相手が来てるなという感覚、気配を試合を通じて感じられるようになった。後ろにいることがわかるから冷静に対処できるようになったなと思う」。言葉の端々から手応えをのぞかせた。
もっとも自身が担っているのは、師と仰ぐ大黒将志氏ら数々のレジェンドが在籍してきたG大阪のストライカー。弱冠20歳でそこに定着している姿はすでに頼もしく映るが、自身の現状には満足していないようだ。
「でもまだ2点決めたくらいなので、ここからどうなるかはまだ分からない。そこで大事なのは1点ずつ積み重ねて、チームに欠かせない存在、替えの利かない選手になっていくこと。今日のゴールで満足するのではなく、ここからどんどんレベルアップしていきたい」。いまの活躍を誇るよりも、飽くなき向上心をかき立てられていた。
現在はカタールの地でパリ五輪最終予選にあたるAFC U23アジア杯が行われており、同じU-20W杯メンバーからMF松木玖生が選出されているが、パリ五輪本大会への向き合い方も「少しは意識するけど、あまり考えすぎるとプレーに支障が出る。運良く入れたら良いなくらいの気持ち」と謙虚な姿勢。まずはこのG大阪で結果を出し続け、さらに偉大なストライカーへの階段を駆け上がるつもりだ。
(取材・文 竹内達也)
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