Jリーグの野々村芳和チェアマンが23日、理事会後に記者会見を行い、今季から完全トーナメント性に生まれ変わったルヴァン杯に手応えを語った。原則的には下部カテゴリのクラブがホームゲームを開催する仕組みとなっており、下部カテゴリの運営経験、集客などのビジネス面、カテゴリ間の対戦機会という競技面でのメリットがあったという。
ルヴァン杯は今季から全60クラブが参加し、完全トーナメント性での実施。J2・J3クラブが登場した1回戦では17試合が行われ、9試合でJ3クラブがJ2クラブを倒す波乱が起きた。またJ1クラブが新たに登場した2回戦は20試合中11試合がすでに開催。番狂せは長崎が磐田を破った1試合にとどまったが、9試合でJ3クラブの本拠地でJ1クラブが試合を行う機会がつくられた。
野々村チェアマンによると、八戸対鹿島(4844人)、YS横浜対FC東京(4083人)では平日ナイターにもかかわらず、ホームゲームの史上最多観客数を記録。また八戸対鹿島では、J3最下位の八戸がJリーグ史上最多タイトル実績を持つ鹿島に終盤までリードするという熱い展開に持ち込んでいた。
野々村チェアマンは「下のカテゴリにとってはクラブにとっての経験値を上げることができるし、過去最高の売り上げているのでビジネス面でも良かった。理事からは『普段見られないトップカテゴリのクラブが来て、子どもたちが楽しんでいる様子が印象に残った』という声も挙がった。ゲームの内容も接戦が多く、ほとんどJ1クラブが勝ったが、うちのクラブもできるんじゃないかという明るい未来を見せることができたのは下のクラブにとっても意義のあるものだったと思う」と手応えを口にした。
加えて野々村チェアマンは「J3クラブは一回勝つとJ1クラブと試合ができるということで、勝つことの重要さを示すことができたのも重要。下のクラブが勝つと、もう一回チャンスがあるという点で、健全な競争の中でクラブを競争させる良いトライができているのが良かった」と競技面にも手応え。「選手目線で言えば、下のカテゴリの選手からすると、『俺も上で』という思いをしっかり表現できる場所があるという点でモチベーションは高くできていたと思う。ビジネス的な面、フットボール的な面、双方にとって良かったと思う」と総括した。
2回戦の残り9試合は24日に実施。大観衆の来場が予定されている鳥取対浦和の他、長野対京都、奈良対広島、琉球対G大阪と4試合がJ3対J1の対戦となる。野々村チェアマンは「鳥取がレッズとやる中で6000人以上が来そうだということで、平均で3000人以上の方が足を運んでくれそう。ゲームの内容もいいものを見せていただきたい」と期待を示しつつ、同じく24日には横浜FMがACL準決勝第2戦を戦うことに触れつつ、「大事なマリノスのゲームがある。60クラブで獲得したいものはそれぞれ違いはあれど、大事なゲームということで、ぜひ多くの人に注目してもらいたい」と所感を述べた。
なお、今季のルヴァン杯ではベンチ入り枠が昨季までの7人から9人に拡大。リーグ戦では遠征費の確保、遠征帯同外選手の練習人数確保などの観点から導入が見送られているが、ルヴァン杯では攻撃的なオプションを多く採用できるなど、大きなメリットが見られた。
野々村チェアマンはリーグ戦でのベンチ入り人数については「今年は現場に寄り添った方法でトライしている」と背景を述べつつ、来季以降の拡大の可能性に「難しい理由はない」と断言。「ルヴァン杯で試してみて来年以降どうするか。これだったらいつもと変わらずにやっていけるとなれば、当然ながら人数は増やしたほうが僕はいいと思っている。その納得感が得られるか、大会を見ながら各クラブの方の感想を聞いていく形になる」と前向きに話した。
(取材・文 竹内達也)
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