[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.21 プリンスリーグ関西1部第3節 興國高 5-0 京都共栄高 阪南大高見ノ里G]
持ち味である50mを6秒2で走る俊足。終盤になってからスピードが伸びるタイプが多いが、最初の5mから10mが速いため、一瞬で相手を置き去りにできる。これまで30人以上のJリーガーを輩出してきた興國高でブレイクの兆しを見せているのはFW安田光翔(2年)だ。
京都共栄高(京都)と対戦したプリンスリーグ関西1部第3節でも残したインパクトは大きかった。開幕戦と第2節は途中出場で1点ずつマークした通り、交代の切り札として重宝されていたが、この日は左サイドのMF水野凪斗(2年)が怪我で戦線を離脱。代役として六車拓也監督の頭に浮かんだのは安田だったという。「安田のスピードはゲーム展開的に相手が伸びてくる後半から出した方が僕らとしては有難い。ただ、練習から凄くギラギラしていたので、タイミング的に彼を使わなければいけないと思った」。
「開幕からの2試合はベンチスタート。点は決めていたのですが、やっぱり自分がスタメンで試合に出て、結果を残したかった」。そう振り返る安田はようやく訪れた先発の起用のチャンスを逃がさない。4-3-3の左ウイングに入ると、序盤から縦と中を巧みに使い分けた突破を果敢に仕掛けて見せ場を作りだす。
速さを活かしたドリブルも魅力だが、「自分のゴールでチームを勝たせたい。常にゴールを意識している」と口にする通り、キャラクター的には根っからのストライカー気質。加えて、「ゴール前で怖がらない。際どい所に飛び込める。なかなか教えてできない部分」(六車監督)という素質も持っている。そうしたガッツは雨でスリッピーになっていたこの日の試合には合っていた。
最初の決定機は前半10分に訪れる。右CKからDF的羽航人(3年)が放ったシュートのこぼれ球を豪快に押し込むと、続く18分にはDF高橋怜生(3年)が自陣左から京都共栄のDF背後にロングフィードを展開。相手GKがファンブルした瞬間を逃さず、奪い取った安田が無人のゴールに流し込んだ。
37分には右サイドを仕掛けたMF久松大燿(3年)がシュート。ゴール前にこぼれたボールをスライディングで押し込み、前半だけでハットトリックを達成した。後半もチームとして2点を加え、興國が5-0で勝利。大量得点の立役者となった安田は「監督が練習から見てくれていて、使ってもらえたのは本当に嬉しかった。結果で応えることができて良かったです」と笑みを浮かべた。
安田はC大阪U-15出身。U-18への昇格を果たせず、プレミアリーグ所属の高校からの誘いもあった中、テクニカルかつ攻撃的なスタイルに惹かれ、興國への入学を決意した。300人近い部員がいる中でもその速さは光り、昨年は1年生ながらもBチームでプレー。今年は満を持してAチームに昇格し、スタメン出場を続けていた。ただ、チーム内の競争は激しく、プリンスリーグ開幕戦から2試合連続でベンチに。「スタメンから外れて、やってやろうという気持ちになった」とゴールへの貪欲さを増す活力になったのは間違いない。
センターフォワードのFW仲谷蓮斗(3年)はフィジカルに長けたストライカーで、ボールが収まるため、安田が前向きでプレーしやすい。右サイドの久松は同じスピードタイプのウイングでよく話をして、プレーを参考にしている。今の状態は安田にとって快適であるため、一度掴んだスタメンの座を手放すつもりはない。前半からでも活躍できると示せたことは今後への大きなアピールになったはずだ。
「これからまた自分の点やアシストで、チームを勝たせられる選手になっていきたい。将来はプロサッカー選手になって海外で活躍したい」。そう話す安田にとって今の活躍は序章に過ぎない。憧れの選手として挙げるパリSGのFWキリアン・エムバペのように世界で活躍するストライカーを目指していく。
(取材・文 森田将義)
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Source: 大学高校サッカー
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