[5.19 J1第15節 FC東京 1-1 横浜FM 味スタ]
欧州挑戦前ラストマッチで決めたスーパーゴールから14年後、37歳になったFC東京のDF長友佑都が味の素スタジアムで5118日ぶりの得点を挙げた。後半から攻勢に出ていたチームに、さらなる活力をもたらす同点弾。ゴールの直後にはファン・サポーターに向かって大きく吠え、この日一番の大歓声を一身に浴びた。
0-1で迎えた後半10分だった。左サイド起点のカウンターでMF松木玖生が攻め込むと、長友は右SBの持ち場から「あそこに入るのはチームとしても練習している」というペナルティエリア右外に侵入。最後は横パスを右足アウトサイド寄りのトーキックでそのまま合わせ、シュート回転させたボールをゴール右隅に突き刺した。
「ダイレクトでいいインパクトでシュートを打とうと。結構、無心に近かったと思います。しっかりとボールに当ててという、変なことを考えなかったですね。僕が変なことを考えると常に力んじゃうので(笑)。無心というのが良かったです」
そう冗談まじりにゴールシーンを振り返った長友にとって、味スタでのゴールは南アフリカW杯直前の2010年5月15日に行われた清水戦以来5118日ぶり。浮き球を右足ダイレクトで合わせるという驚異的なロングボレーシュートだったが、W杯直後にイタリア挑戦が決まった長友にとっては、結果的にJリーグラストマッチでの得点になったという点でも思い出深いゴールだった。
試合後、長友は「(5118日ぶりのゴールは)大きい声で言わないでほしい」と苦笑いを浮かべつつも、「僕が旅立つ前にあのスーパーボレーを決めた以来だということで、サポーターも僕が得点を取ることを忘れているんじゃないかなと思う部分もある。今季は2得点できていて、アシストもいくつかできているし、攻撃に絡めているところはこの歳でも成長していっているなと思う」と14年前に重なるゴールに胸を張った。
この一戦にかける特別なモチベーションもゴールにつながっていた。この日は3試合ぶりの先発復帰という状況に加え、17日にはFW岡崎慎司(シントトロイデン)、18日にはMF長谷部誠(フランクフルト)が現役生活ラストマッチに出場。日本代表で長年共に戦ってきた盟友がスパイクを脱ぐ姿を目の当たりにしていた。
「やっぱり寂しさはありますよね。ただ自分も示し続けないとスパイクを脱ぐ時がいつか来るという危機感は出てくる。示さないと僕もベンチ外になるんじゃないかという競争がありますし、そういう意味でも今日の試合は気持ちが入っていた」
自らはまだ身を引くつもりはない。「寂しい思いが強いけど、僕も彼らの戦ってきた思いも含めて、しぶとくこのピッチの上で躍動したいなと、生き続けたいなと、そういう覚悟が芽生えた」。そんなメンタリティーも示すゴールとなった。
それでもゴール後の歓喜に話が及ぶと、複雑な表情が浮かんでいた。「勝ってないからね。吠えたのは吠えたんだけど、勝ってない。吠えただけって感じ。悔しいですね」。長友のゴール後、スタジアムのボルテージはさらに高まったが、猛攻実らずにドロー。長友自身も得点につながりそうなクロスはあったが、DFバングーナガンデ佳史扶の右足ボレーがGKに阻まれるなど、もう1点を生み出すことができなかった。
「結構クロスは狙いどおりだったけど、佳史扶に言っときましたよ。決めてくれって。右足じゃねえだろって(苦笑)」。愛弟子への注文も忘れなかった長友は、自身の好パフォーマンスにも「勝っていないので素直に喜べない」ときっぱり。「チャンスもあった。あそこを決め切れなかったのは自分たちの実力もあるし、もう一つ自分たちで、雰囲気も含めて、厳しさも含めて作っていかないといけない」と力を込めた。
(取材・文 竹内達也)
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