2026年「J1主審全員プロ化」案も浮上! 強化育成改革進めるJFA審判委の危機感「仕組みを作らないと日本からW杯審判員が出てこない」

日本サッカー協会(JFA)の扇谷健司審判委員長
 日本サッカー協会(JFA)の扇谷健司審判委員長が23日、東京都内のJFAハウスでメディアブリーフィングを開き、今後2年間に向けた審判員の育成・強化プランを発表した。Jリーグでは2026年夏からシーズン制移行が予定されている中、J1リーグ担当主審全員のプロ化を目指していく方針だという。

 扇谷委員長はブリーフィングで「日本のサッカーがこれだけハイインテンシティになっている中、プロフェッショナルレフェリーを増やす必要がある」と指摘。現状では主審14人、副審5人とプロ契約をかわしているが、シーズン制移行が行われる26年夏をめどに「ここを拡大していくことで、サッカーに集中していける審判員を増やしたい。そうしたことで質が上がってくる」と力説した。

 改革を進めようとしている背景には、世界やアジアにおける日本人審判員の立ち位置が変わりつつあるという危機感がある。

 日本人審判員は1998年のフランスW杯で岡田正義氏が主審を務めて以降、7大会連続でW杯に出場。2006年のドイツW杯では上川徹氏が3位決定戦、14年のブラジルW杯では西村雄一氏が開幕戦の大役を担った。ところが直近2大会では18年のロシアW杯に佐藤隆治氏、22年のカタールW杯に山下良美氏が派遣されたものの、試合の割り当てを得られなかった。

 扇谷委員長はW杯における日本人主審の歩みについて「ここまで続けてW杯に出場している国はアジアに他にない」と前向きに捉えつつも、「W杯で(選ばれるだけでなく、)主審を担当するというところを目指さないといけない」と強調。エリート審判員の育成も通じて「そこ(W杯)につながるように国内リーグでの判定精度をもっと高めていかなければならない」と力を込めた。

 扇谷委員長によると、今後2年間でプロフェッショナルレフェリーの大幅増員を目指すほか、海外との交流機会の創出や、審判員評価のためのデータ活用も積極的に進めていく構えだ。今季は審判交流プログラムでイングランド、アメリカ、ドイツ、ポーランドからJリーグに審判員の招聘を行っている一方、海外にも日本人審判員を派遣することで「学ぶ機会を増やしたい」としている。

 加えて扇谷委員長は、審判員のクオリティー向上のため、20代の若手審判員を積極的に抜擢していく必要性も訴えた。その背景には、W杯などの国際大会に審判員派遣を決めるアジアサッカー連盟(AFC)の変化があるという。

 AFCは近年、エリート審判員を育てる「AFC審判アカデミー」の取り組みを強化しており、そこで4年間のプログラムを修了しなければ、W杯などの主要な国際大会に派遣されないという流れを強めつつある。しかしアカデミーに入るためには25〜32歳という年齢制限が設けられ始めたため、有望なレフェリーは早期に抜擢されておく必要がある。

 ところが日本国内の審判員は通常、4級審判員からスタートし、1級審判員にステップアップした後、JFL担当からJ3・J2・J1を順に目指し、プロフェッショナルレフェリーや国際審判員に選抜されるという流れ。トップレフェリーでも「1級になってからプロになるまでは約8年間かかる」(扇谷委員長)ため、国際的な若年化の流れに乗るのは難しいのが現状だ。

 こうした状況を受けて扇谷委員長は、エリート審判員育成には「別の枠組みを作っていかないといけない」と指摘。「選手だと上手い選手であれば、一気にW杯に選ばれるということもあるが、審判員はそうではない。仕組みをきちんと作っていかないと日本からW杯審判員が出てこない」と危機感をあらわにしつつ、改革の必要性を訴えた。

 すでにJ1未経験の長峯滉希主審が2019年度スタートのAFC審判アカデミーを修了するなど、一部でプロジェクトは進行中。扇谷委員長は「非常に大きなチャレンジだと思っているが、我々だけでは当然できない。地域、都道府県から審判員が育ってくるので、そこの方々にも理解していただきながら進めていきたい」と国内全体への理解を求めた。

(取材・文 竹内達也)
Source: サッカー日本代表

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