日本サッカー協会(JFA)は24日、千葉市内の高円宮記念JFA夢フィールドで記者会見を行い、6月の北中米ワールドカップアジア2次予選2試合に臨む日本代表メンバー26人を発表した。森保一監督と山本昌邦ナショナルチームダイレクターが登壇した。
●山本昌邦ナショナルチームダイレクター
「9月から始まる最終予選に向け本当に重要な2試合になる。代表活動の限られた日程の中で、この6月の準備が最終予選のスタート。本当に重要な準備になる。W杯本番から逆算して、しっかり準備してそこにたどり着けるようにこの2試合をしっかり活用したい」
●森保一監督
「今回のアウェーでのミャンマー戦、ホームでシリアと闘うアジア2次予選だが、すでに2次予選の突破は決めているが、山本さんがおっしゃったとおり、良い形で2次予選を連勝して締めくくると同時に、9月から始まる北中米W杯アジア最終予選を戦っていくうえで良い準備につなげられるように6月シリーズの2試合を戦いたい。この2戦で選手を試す部分、そしてシステムを試すこと、戦術的に全体的に浸透度を上げていき、最終予選につなげていけるように活動したい」
―これまで多く出場していた選手が多いが、選考で重視したポイントは。
「選手を試すというか、コンディションの部分などを見させてもらうところ、個々のところを見つつも、これまでやってきたところの再確認とさらに積み上げていく部分、選手とともにチームでさらにレベルアップしていけるようにやっていきたい。戦術的にもこの2試合の中、実際に戦って見ないと分からないことがあるが、戦術の幅を広げるトライは1試合1試合の中で2試合を通してやっていきたい」
―U-23日本代表の活動もあるが、23歳以下の久保建英と鈴木唯人をA代表に招集したのはどういった理由か。
山本「A代表が最優先であることは基本中の基本になる。今回は久保、鈴木唯人をこちらに招集したが、A代表が最終予選に向けて良い準備をする中で、そういう力がある選手は招集するべきだと思っている。鈴木唯人、久保の2人に関しては長い時間かけてU-23の招集に関してクラブとやり取りを継続的に、時間をかけて丁寧にやってきた。鈴木、久保に関してはFIFAルールでIW(国際マッチウィーク)以外は招集できない。クラブで招集はできないという結論に現状至っている。こちらに専念して、9月の最終予選に備えるという流れになった」
森保「実際に交渉してくださっている山本さんの言葉にすべて質問の答えはあったと思うが、シンプルだと思う。まず活動においてはA代表優先のところから招集させていただくことと、パリ五輪に出場可能な選手を含め、A代表で招集できるかどうかの候補の選手が入っている中、五輪に出られる年齢の選手もFIFAルールの中で、五輪に参加できるかどうかは常に交渉してもらっている中で、現在のところ出られるだろう、出られないだろうというところで決めさせていただいた。大岩監督との話についてはしっかりできていると思っている」
山本「大岩監督と森保監督は本当によく話はしている。影山(雅永)技術委員長が4月から就任して、これまでは五輪の専用の部屋はなかったが、そこを影山委員長が用意してくださって、A代表のスタッフと五輪のスタッフが隣の部屋で常に会話できる雰囲気になっている。昨日もA代表からU-15まで全コーチングスタッフが集まってミーティングしていた。コミュニケーションは十分取れている。監督から良い言葉が出ていたが、『1チーム全カテゴリー』だと。全カテゴリが1チームでW杯の頂点を目指すんだと、みんなで協力してやっていこうという雰囲気を感じられた。森保監督と大岩監督のことはまったく心配していない」
―ここにいるメンバーはA代表に選ばれない選手なのか。
山本「全く決まっていない。現段階でも森保監督に伝える状況ではないと考えていただければ。今日はA代表の最終予選に向けた大事な2試合の話なので、U-23の話は来週30日にまた発表会見を開くので、そこでしっかりお受けできればと思っている」
―鈴木唯人の選出理由は。
「招集は一度したことがあるが、試合の出場には至っていないということで、彼のことはJリーグでプレーしている時もフランスでプレーしている時も、現在のデンマークでのプレーも継続して、彼の成長を見させてもらっている中、デンマークでより海外でのまた日本とは違ったサッカーの中で、国際試合でより力を発揮できるという力をつけているところを見させてもらっている。彼の良さでもある得点に絡む、攻撃の良さを局面局面激しく戦う中でも発揮できているというところを見させてもらい、招集させていただいた。今の実力でも戦力になってくれると思うが、6月の活動を経てさらに成長してもらえることを期待している。
―谷晃生の選出理由は。
「谷晃生選手も私が監督をしていた東京五輪でも招集させてもらい、A代表でも招集していて、キャップがついているというところで、継続して見させてもらっている中、今年は町田の躍進を最後尾から支えている。彼がチームの勝利に貢献しているところを見させてもらっている中、攻守にわたってA代表の戦力になってもらえるところを評価して招集させていただいた」
―呼ばれていない選手で申し訳ないが、伊東純也が選ばれていない理由は。
「結論から言うと、私の知っている限りでは3月から状況は変わらない。3月と同じで彼を守るため、彼のために今回も招集をしなかった。スタッド・ランスでのプレーも日頃から確認はしていて、代表でも確実に戦力になるというところは評価している。ただ3月と状況は本当に同じで、代表としてプレーする場合、また彼にプレッシャーがかかることが起こりうるということと、彼の大切にしている人たちにもまたいろんな影響が出るということで招集を控えた。彼についてはこれまでの代表で実績を残してくれているし、その時々で彼のコンディションが良ければ、チームで存在感を発揮してくれていれば、代表にいつ入ってきても機能する選手だと思っている。そこは慌てず、彼が落ち着いてプレーできるよう、彼の大切に人にしている人が落ち着いて過ごすことができるようになれば、チームも落ち着いて活動できるようになれば招集させてもらえればと思っている」
―遠藤航や南野拓実のレベルアップなど、欧州組全般に関してどう感じているか。
「欧州組全員が成長しているということは確認させていただいている。自国リーグで非常にタフな戦いを1年通して続け、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出て、連戦を戦いながらシーズンを過ごしてきて、選手たちも疲労が溜まっていると思う。ここで少し休みを入れてもらって、いろんな選手を招集させてもらうことも選択肢の中では持っていた。選手たちはこれまでも自国リーグと欧州の戦い、さらに日本代表として長距離移動等々も含めてシーズンを通して戦ってきた中、タフにずっと戦い続けることで成長してきている。休ませてあげたい気持ちもあるが、彼らも日本のために戦う気持ちを非常に強く持っている。6月シリーズもフラットな状態で招集を考えて、これまで招集してきた選手を継続して招集させていただいた。ただ競争がある中、そうではない選手は残念ながら選ばれないということで、ベストなメンバーということで招集させていただいた。シーズンをタフに戦っていく中、ボロボロの状態になりながら成長を遂げてくれているし、選手たちの日頃のハードな戦いでそういった成長があるんだなということを多くの日本代表サポーターの方々にも見ていただきたいと思う。海外組ということで、国内とは別みたいな感じで捉えられる認識になっているのは私としてはすごく悲しいというか、寂しいところがある。彼らが欧州の舞台で世界のトップトップで活躍しているが、日本で育った選手というところと、日本やJリーグの育成も含め、日本でいろんな指導者の指導を受けながら育ってきて、本人たちが努力をした上でさらに世界に羽ばたいているというところで、世界の中でもまれている。日本でやっているJリーグの選手も実際に選んでいるし、そこが特別なところだという認識はない。世界で選んでいると思っていただければありがたい。ただ日本が世界を追い越していくためには、急成長の中でもさらに成長していかないといけない。日本代表の活動を通して、日本人として、日本人指導者として、国内の方々と世界を追い越していくための共有をしっかりとしていきたい」
―広島にようやくできたサッカースタジアムで監督を代表戦を迎える思いは。
「新スタジアムで代表戦ができることを非常に嬉しく思っている。今季、Jリーグでは2度、広島の新スタジアムで視察させていただいたが、ピッチ上の選手とスタンドのサポーターが一体感になれる、一体感を持って、エキサイティングな空間を作れる素晴らしいスタジアムだと感じている。新スタジアムで素晴らしい雰囲気を感じながら試合ができることを想像してワクワクしている。そして広島で戦うところ、代表戦を行わせていただけるということで、非常にサッカーとは違った部分でも発信することはあると思う。新スタジアムでピッチとスタンドが一体となって、エキサイティングな状況を作れることはサッカーのみならず、スポーツ全般の良さを発信できると思っている。また平和についても考えていただけると思う。平和記念公園の近くに新スタジアムはできている。エディオンピースウィング広島に日本全国からサポーターの皆さんが集まって来られるし、対戦相手がシリアで世界から、アジアからもサッカーを見にきてくださることも考えられると思う。現在世界中にはまだまだ戦争や紛争が起きている中、平和だからスポーツができるということと、平和を考えて世界中の人たちが言動をしてくれることで、世界中で穏やかに幸せな暮らしができることにつながっていることにつながる。サッカーを見ていただきたいが、平和公園等々、過去の悲しい歴史、悲惨な歴史を見ていただいて、平和について考えることもできると思う。意義のある代表活動になると思っている」
―つい最近まで怪我をしていた浅野拓磨、毎熊晟矢が選ばれていない。三笘薫も怪我を考慮されていると思うが、彼らの選考方針は。
「まずは競争があるということ。皆さんもほとんどの方がご存知だと思うが、レターはすでに先日の時点で出している。その中でコンディションを見て決めさせていただいているところがある。ただ代表で常連だということ、そしてコアな選手であるということは、もちろん招集の中で自然と出てくるところはあるが、代表は約束された絶対の場所ではない。選手たちは競争の中で掴み取っていくことをこれまでもやってくれている中、今回も我々スタッフが心身のコンディションを日頃から情報収集した上で、今回の活動でベストだということでメンバーを選ばせていただいている。2人は代表の戦力に今後もなっていく選手だと思っているし、それだけ能力の高い選手だという評価もしている」
―3月はアウェーの北朝鮮戦ができなかったが、3月にできなかったことも含め、6月シリーズでやりたいことは。
「3月にできなかったということでは、すでに時は過ぎているし、振り返ってということは考えていない。6月の活動がより内容が濃くなること、よくなるということを考えると同時に9月の最終予選に向けてどうつなげていくかということを考えている。実際にどれだけの選手を起用していけるかはわからないが、より多くの選手をこの2試合で起用させてもらいながら、戦術の浸透を図っていく、さらにレベルアップしていくということを考えている」
―鎌田大地の選出理由は。
チームの中でチームを勝たせる存在感を発揮してくれていると思うし、本人の良さでもある攻撃も守備もチームに貢献しながらチームのリズムを生み出す、得点に絡んでいくところをできていると思う。試合に出続けているということで、コンディションも非常に上がってきていると思う」
―現役引退を決めた長谷部誠、岡崎慎司への思いは。
「長谷部については非常に素晴らしい選手だったし、人としても本当に素晴らしいところをロシアW杯で一緒に活動させてもらいながら、オフザピッチでコミュニケーションを取らせてもらう中で強く感じている。自分自身を律して、極めていくところは本当にサッカー選手として、世界の中でお手本になるような生活とピッチ上での姿勢を見せてくれていたし、世界のトップトップのクオリティーを見せてくれていて、日本人に夢を与えてくれた存在だと思う。彼が選手としてJリーグ、ヨーロッパ、日本代表の舞台で見せてくれたことは、日本のサッカーの発展に大きく貢献してくれたと思う。本当に大変な現役生活の中、彼がやってきたことに敬意を表したい。いまは少し休んでもらいながら指導者として日本サッカーの発展に貢献していただきたい。岡崎にも同様のことが言えると思う。日本でもヨーロッパでも彼が持っている貪欲に上手くなりたい、少しでもいいプレーをしたい、どんな形でも点を取る、泥臭くチームに貢献することなど、いろんなことをサッカー選手として、人として気付かせてもらえることを示してもらった。彼も長谷部同様、夢を見させてもらった。プレミアリーグで優勝の経験を見せてくれて、レスターで中心選手として日本人でもやれるんだ、世界のトップトップでやれるんだという勇気と希望を与えてくれた選手だった。所属クラブで見せてくれた彼のプレーや姿勢、日本代表で彼が築き上げてくれた日本サッカーへの貢献に改めて感謝を伝えたい。敬意を表して、、今は少し休んで、また指導者として日本サッカーに貢献していただきたいと思う」
―東京五輪の直前はオーバーエイジが五輪活動に合流していたが、今回はオーバーエイジが定まっていない。どのような違いで現状のメンバー編成になっているのか。
「冒頭でもお伝えしたFIFAルールがある。所属チームとのやり取りの中で、招集できるどうかというところが非常に大きい。所属チームに派遣義務がないという部分で難しいところはあると思う。そこは東京五輪の時には所属クラブが自国開催の五輪ということで、いろんなクラブが非常に協力的にしてくださった中、今回は状況が変わっているところがある。あとは選手がよりヨーロッパで価値を高めて、そこで大切にされているということが大きい。日本のサッカーと五輪に向けてのチームづくりもたくさんのお選手がヨーロッパの舞台でプレーしている中、強化の仕方等々も変わって、変化に対応していかないといけないところに来ていると思っている」
―鈴木唯人の特徴をどう評価しているか。どういうイメージでプレーしてほしいか。
「まず期待する特徴としては攻撃の起点になる、得点に絡むところ。ブレンビーでやっているプレーを期待したいし、評価させていただいている。日本代表でプレーする時は攻撃的なポジションを担ってもらいたいと思っている。4-2-3-1ならばトップ下のポジションであったり、4-1-4-1であるならインサイドハーフ、3バックで3-4-3で戦うのであればシャドーのポジション等、いま彼はシャドーのポジションをやっているのでそういうところを見せてもらえればと思っている。トレーニングから起用も含めて考えていきたいが、想定としてはそのあたりの答えになる」
―久保の五輪不参加について「現段階」と強調していたが、移籍の可能性がある中で、最終メンバーを決めるタイムリミットはあるのか。
山本「素晴らしい質問というか、私たちもそこが一番の難しさ。FIFAルールの中で移籍の可能性があるということはもちろん承知しているし、難しい状況の中、クラブ、代理人、私もそうだし、ヨーロッパオフィスのメンバーがいるので常に確認は取り合っている。具体的に何が決まっているかといえば何も決まっていないという答えしかできない。期限が来るので、期限まで鋭意努力はするが、極めて難しい状況というのが今回の鈴木唯人、久保建英。そういう状況だということはご理解いただければと思っている」
―ミャンマーの政情が不安定な中、アウェー遠征で普段に比べてセキュリティレベルを上げるという考えはあるか。3月シリーズもアウェーゲームが行われなかったが、またそのようなことが起きる可能性は。
山本「セキュリティの件だが、事前にJFAスタッフが現地に行って、さまざまなものを視察して、現地関係者や大使館を含め、サポートしていただける体制はしっかりとやっていただいていると思っている。さまざまな情報は持っているが、ここであえてお話をする必要はないと思う。ただ最善の努力をしている。最終予選に向けて、アジアの移動、準備、ヨーロッパ組がこれだけ多い中、時差との戦い、気候も全く違う中での難しさはピッチの外側の仕事としては、我々が世界のトップを目指す上でもっと上げていかないといけないと思う。選手は厳しい日程のなかで移動も伴い、怪我のリスクもあり、監督からも話があったように世界のトップトップのレベルでプレーしている選手が増えてきた中、それに我々も追いついてしっかりとサポートしていかないといけないと感じている。皆さんに難しさも理解していただきたい。全てが我々の大きな挑戦であり、大切名ことだと思っている。W杯の頂点を諦めないことが大切だと思うし、頂点に行くための準備を本当にもっとやっていって、やったからこそ見えてくるものがそういう一つ一つの話だと思う。覚悟を持って準備する。ミャンマーだから試合はこうだよねではなく、ミャンマーに行く過程でスタッフが育つと思うし、スタッフが育たないといけない。U23アジア杯は体調不良を一人も出さなかったが、シェフがいたからだし、メディカルのサポートがあったからだと思う。そういう準備をA代表もしていきたい。そのなかでセキュリティーもしっかりしていきたい」
(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集
Source: サッカー日本代表
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