[6.2 インターハイ鳥取県予選決勝 米子北高 3-2(延長) 境高 どらドラパーク米子陸上競技場]
令和6年度全国高校総体(インターハイ)鳥取県予選決勝が2日に米子市のどらドラパーク米子(どらやきドラマチックパーク米子)陸上競技場で行われ、米子北高と境高が対戦。延長戦にもつれ込んだ激闘を米子北が3-2で制し、16大会連続19回目の出場を決めた。
境は開始直後にFW相見蓮(3年)が左サイドからドリブルで突破し、キックオフから1分もたたないうちにCKを獲得。このCKから惜しい場面を作るなど良い立ち上がりを見せたが、徐々に押し返した米子北が前半12分(35分ハーフ)に均衡を破る。右サイドで得たFKをMF柴野惺(3年)が中央に送ると、両チームの選手が交錯して流れてきたボールの落下点にいたFW鈴木颯人(3年)が右足ボレーで合わせて蹴り込んだ。
米子北は14分にも波状攻撃を仕掛け、ゴール前のこぼれ球をFW畑中大河(2年)が右足で狙ったが、境守備陣のブロックに遭う。20分にもFW西尾潤星(3年)のセンタリングからMF山崎涼(2年)がヘディングシュートを放つも、境GK波多野隼哉(3年)にセーブされた。
最少失点でしのいだ境は30分、同点に成功する。米子北DF浜梶優大(2年)にボールが渡ったところにプレッシャーをかけ、GKへのバックパスを選択させると、米子北GK広川武寛(3年)との連係が乱れ、ゴールに向かって飛んだボールを広川が処理できず、オウンゴールとなった。
そのまま1-1で迎えた後半、米子北はサイドアタックや中央突破で勝ち越しを狙うが、12分に右からのセンタリングを鈴木がダイビングヘッドで狙ったシュートはゴール左へ外れる。境は自陣に押し込まれる時間が長いながらも粘って反撃に転じ、15分には右サイドまでボールを運んでMF黒岩賢斗(3年)がセンタリングを送ると、相見が蹴り込んで2-1とした。
米子北は昨年度までインターハイは15大会連続、高校選手権は14年連続で出場しており、2009年11月の新人戦で優勝して以来、県内3大会で15年近く負けていない(※20年に、コロナ禍で中止となったインターハイの予選代替大会となる西部地区大会準決勝で米子東高に敗戦)。そんな『絶対王者』を追い込む逆転ゴールに境の選手たちや応援団は歓喜を爆発させ、会場も騒然とした雰囲気に包まれた。
それでも米子北は失点直後から反撃を続け、20分に同点ゴールを奪う。中央突破からFW佐野聖也(3年)がヘッドでつないだボールを鈴木がエリア内で収めると、振り向きざまに右足で蹴り込み、この日2点目を決めた。
ここから両チームに決定機が訪れる激しい展開に。21分、境は相見が抜け出してドリブルで運び、GKと1対1のチャンスを迎えたが、「やるしかないと思ったので、行き切ることを意識してスライディングした」という米子北DF藤原大空(2年)が懸命に戻り、相見のシュートコースに先回りして滑って止める見事な対応で防いだ。
ピンチをしのいだ米子北は25分、右サイドを突破した鈴木がセンタリングを送ると、MF山下一圭(2年)がゴール前で完全にフリーとなっていたが、左足シュートはクロスバーを越えてしまう。後半終了間際の35分にはエリア内のこぼれ球を鈴木が左足ボレーで狙ったが、左ポストに当たって決まらず。そのまま2-2で決着がつかず、10分ハーフの延長戦に突入した。
延長前半6分、境は左サイドを突破した相見が左足で狙ったが、ゴールに右に外れる。7分にはロングパスが相手最終ラインの背後に落ち、戻ってきた米子北の藤原が頭でGKに戻そうとしたが短く、追い抜いた相見が右足で狙ったが、間合いを詰めたGK広川に防がれた。
勝ち越しを許さなかった米子北は9分、左サイドを突破した山下が左足でセンタリングを送り、相手にクリアされて戻ってきたボールを拾うと、今度は右足でシュート。「あの場所は自分の角度。足を振ってチームを勝たせたかった」と振り返る一撃がGKの頭上を越えて逆サイドに決まり、3-2と逆転した。
延長後半は、米子北が2分過ぎからコーナーアーク付近にボールを運んでキープするなど、今度こそリードを守るべく時計の針を進めていく。境も何とかボールを奪い返し、相見のドリブル突破などでチャンスを作りかけたが、再度の同点・逆転はならず、米子北が3-2で逃げ切った。
21年度の高校選手権以来となる全国大会の予選決勝に進んだ境は、長く続いている米子北の『一強時代』に終止符を打つかと思われたが、惜しくも及ばず。序盤の失点からオウンゴールで息を吹き返し、小椋研監督が「こぼれ球や、サイドを使ってクロスで得点する形を練習してきた」という狙いどおりの形で逆転ゴールを奪って勝利に近づいた。
今年度のチームは「試合で負けたら、ここを変えようとか、自分たちで意見を言い合い、我々指導者にも提案してくることができる」(小椋監督)との特徴があるという。敗れはしたが「その意見を大事にしながらやってきて、自分たちでやる、その場で判断する、といったことを試合の中で出せたと思う」と小椋監督は語り、試合後は選手たちに「もっと成長できる。しっかり反省して、課題にして、選手権予選で勝てるようにしよう」と声を掛けたことを明かした。
米子北は冷や汗をかきながらも、何とか勝利を手にした。逆転された後にゴールをこじ開けて力のあるところを見せたが、中村真吾監督は「スキがあったんじゃないか。こういうときにプレッシャーを重く感じるのか、力に変えられるのか、というところで重く感じてしまったんだと思う」と指摘した。
インターハイは昨年度は3回戦敗退も、22年度は3位、21年度に準優勝と上位進出が多いだけに、苦戦を成長へのエネルギーに変えたいところ。中村監督は「たくさんの人に応援してもらっているので、元気や勇気を与えられる試合をしたい」と本番を見据えていた。
(取材・文 石倉利英)
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Source: 大学高校サッカー
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