絶対王者・青森山田相手の惜敗で感じた「小さいところの差」。八戸学院野辺地西は大きな“のびしろ”を信じてリベンジを誓う

惜敗の八戸学院野辺地西高は前を向いて絶対王者にリベンジを誓う
[6.3 インターハイ青森県予選決勝 青森山田高 1-0 八戸学院野辺地西高 カクヒログループアスレチックスタジアム]

 今回こそは勝利できる手応えを十分に感じていたから、余計に悔しい。あのゴールを防ぎ切れていれば。あのシュートを決め切れていれば。あのワンプレーをやり切れていれば。ここから先はもう、『こうしていれば』を1つずつ潰していく段階。とにかくディテールを突き詰め続けるしかない。

「今日は1本どっちかが決めれば流れが変わるという試合だったと思うんですけど、その1本を決め切れなかったところに自分たちの力不足を感じましたし、山田はどんな形でも1本を決めて勝ち切るという強さは、僕たちもピッチで思い知らされました」(八戸学院野辺地西高・堀田一希)。

 県24連覇という記録を阻むべく、絶対王者へ果敢に立ち向かったオレンジの戦士たち。八戸学院野辺地西高(青森)は今まで以上に自分たちへとベクトルを向け、最後のリターンマッチへと歩みを進めていく。

「試合に入る前に、『初めの15分は無失点で』というプランで行った中で、みんな守備を頑張っていましたし、チャンスも作れたと思います」とFW成田涼雅(3年)が振り返ったように、前半は八戸学院野辺地西の出足が青森山田高を上回る。7分にはボランチのMF木村隆太(1年)を起点に、成田のパスに抜け出したFW堀田一希(3年)のシュートは枠の左へ外れたものの、「今年はそこが我々の武器ですから」と三上晃監督も言及した成田と堀田の2トップでいきなり惜しいシーンを創出する。

 際立ったのはボールアプローチの速さだ。中盤で生まれたセカンドボールは、1年生の木村とMF阿部莞太(2年)のドイスボランチが拾い続け、相手に主導権を渡さない。また、「サイドハーフがサイドバックのところまで吸収されなかったので、セカンドを拾ってそのままサイドに展開したり、トップにボールを入れられましたね」と三上監督も話したように、右にMF小笠原聖那(3年)、左にMF千葉日向(3年)を配した両サイドハーフも果敢に高い位置をキープし、攻守に効果的なプレーを繰り出していく。

 ディフェンス面の奮闘も語り落とせない。前半はほとんど青森山田に決定機を作らせず、「後半は山田さんの出足のところがワンランク上がりましたね」と指揮官も口にしたその後半も、右からDF開坂高雅(3年)、DF中野渡琉希(2年)、DF奈良良祐(3年)、DF藤田真翔(3年)が並んだ4バックに、GK島川侑大(3年)も加えた守備陣は高い集中力で、相手の鋭いアタックに対抗。最後の局面では身体を張って、ゴールに鍵をかけ続ける。

 さらに特筆すべきは、単騎で勝負できる成田の存在だ。前半31分には千葉のパスから左サイドを抜け出すと、左ポストにぶつけるシュート。後半14分にも堀田が繋いだボールから、素早く打ち切ったシュートは相手GKのファインセーブに遭い、クロスバーを越えたものの、19分には中央から寄せてきた3枚のマーカーを1人で切り裂き、枠内シュート。「山田の試合も見た中で、どこでボールを受ければフリーになれるかは自分の中で掴めていたところがあったので、そこは通用しましたし、試合をやる前から自分はスピードでは絶対に勝てると思っていました」という言葉にも納得のパフォーマンスを披露する。

個の力を発揮した八戸学院野辺地西高FW成田涼雅

 だが、勝負はワンチャンスで決した。25分。青森山田に左サイドを完全に崩され、失点。「山田さんはやっぱり綺麗にあの1本を決めるんですよね。ウチにもチャンスは何本かあった中で、ああいうのを決め切る力は山田さんの強さだと思います」(三上監督)。ファイナルスコアは0-1。タイムアップのホイッスルを聞いたオレンジの選手たちは、ピッチに次々と崩れ落ちた。

「今日は全員がやり合えていた中で、決定機も山田より多かったんじゃないかなと思っていますし、今年の野西はシーズンが始まってからみるみる成長していて、山田に勝つ自信も凄くあったので、本当に悔しいです」。試合後。取材エリアに出てきた成田は唇を噛み締める。

 八戸学院野辺地西は昨年11月の県新人大会でも、決勝で青森山田と対戦している。その試合は後半に入って千葉のゴールで先制したものの、結果は1-2で逆転負け。2度に渡って王者に突き付けられた『1点差負け』について、キャプテンの堀田が口にした言葉が興味深い。

「新人戦の時と比べて、自分たちも着実に成長している実感はあるんですけど、逆に言えば山田も成長していますし、それぞれの小さいところの差が積み重なって、1点の失点で負けるというところは新人戦から変わっていないなって。今回はチャンスを作るという意味では自分たちのサッカーができましたし、今年のテーマにしているディフェンスの面でもチーム全員で戦うというところはできていたんですけど、やっぱり守っているだけでは勝てないですし、点を決めないと勝てないなと思いました」。

 1点を守ることと、1点を決めること。かつてないほどに青森山田から勝利を奪う可能性を感じたからこそ、小さいところの積み重ねの差が、より実感を伴って迫ってきたということだろう。

 ただ、彼らにはもう1回だけ挑戦するチャンスが残されている。冬の全国出場を懸けた高校選手権。3年生にとっては高校生活最後の晴れ舞台だ。「ここからもっと練習から頑張って、もっと成長していければ、選手権は絶対に勝てるんじゃないかなと思います」(成田)「去年の選手権で山田とやった時は0-9だったんですけど、そこから着実に自分たちが成長していることは感じていますし、本当に小さな差だと思うので、明日から切り替えます。もっと成長していかないといけないですけど、自分たちにはのびしろしかないなと思っています」(堀田)。

 信じるべきは、自分たちに残されている大きな“のびしろ”。再び青森山田と激突するまで、八戸学院野辺地西はこの日に感じた小さな差を埋めるため、日常の努力をひたすら積み重ねていく。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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