11日の北中米W杯アジア2次予選・シリア戦(Eピース)は欧州組にとってシーズン最後の公式戦。なかでもリーグアンで完全復活を遂げたMF南野拓実(モナコ)にとっては、充実感とともに過ごしてきた長い1年間の集大成の一戦となる。9日の練習後、報道陣の取材に応じた南野は「今季最後の試合というだけでも個人的には燃えるものがある。いい形で終えたい」と並ならぬモチベーションを燃やしていた。
カタールW杯が行われた2022-23シーズンを悔しい形で過ごした南野は今季、リーグ・アンで完全復活。ザルツブルク時代にも師事したアディ・ヒュッター監督の下、2年目を迎えたモナコで主力の座に定着し、リーグ戦30試合9ゴール6アシストの大活躍でクラブを6シーズンぶりのUEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)出場に導いた。
昨季の不調はリバプール時代の短いプレータイム、モナコ1年目での練習負荷に端を発してようだが、今季はトレーニングのリズムにも適応。日々の取り組み自体は「自分として大きな変化はなくて、信じたものをやり続けてきた結果」と振り返るが、そのなかで時速20km以上の走行距離を示す指標「ハイスピードラン」の数値に手応えを感じているという。
「リバプールでは出場時間があまりなく、トップフィットの身体ではなかったことで毎週続けて90分間出られる身体ではなかった。モナコのトレーニングはキツくて最初は大変だったけど、その上でプラスアルファして身体のキレを増すトレーニングであったり、長い距離のスプリントを何本もできるよう高強度ランで良い数字が出るようなトレーニングをしてきた。どの試合でもハイスピードランはチームトップの良い数字が出てきた。そこは自分にとっての強みでもある」
実はアジア杯でもそのスタッツは顕著に出ており、先発した初戦ベトナム戦は948mでMF伊東純也に続くチーム2位、イラク戦はチームでも群を抜いてトップの1185mの数字を記録。近年は走行距離比の数値に注目が集まっており、10%が世界トップ基準だとされているが、イラク戦はそれに迫る9.91%に達していた。
一方、アジア杯ではその奮闘にふさわしい結果は残せず、最後は途中出場が続いて8強敗退。高いラン指標の一方、初戦のベトナム戦で2ゴールを挙げて以降は結果につながる働きができなかったことが悔やまれた。
南野自身もその点にフォーカス。シリア戦に向けて「個人的に思っているのはまず先制点を取って、仕留めるというところが改善したいポイント。(アジア杯準々決勝の)イラン戦は途中から入って何も流れを変えられなかったので、ああいう相手がブロックを敷いてきても、チームとして個人としてどういうふうに崩していくか。そういうところを意識してできればと思う」と意気込んでいる。
またフィニッシュに関わる動きに関しては、日本代表で新たに採用が進む3バックの新システムも前向きに働きそうだ。南野にとって3-4-2-1はモナコで慣れ親しんだシステム。「システムがもし3バックで行くなら2シャドーはモナコでもやっているポジションなので、スムーズに適応できると思う」。出場なしに終わったミャンマー戦(◯5-0)でも具体的なイメージをふくらませながら試合を見ていたという。
「狭いエリアでプレーするのが上手い選手が揃っているので、相手を広げつつ中で勝負するところはチームとしても忘れたくないというのをチーム内で共有している。そこは前の試合でも良い部分があったし、その中で自分が入れば、斜めのランニングでボックスの脇のスペースを突いていけるなというところも感じながら見ていた」
そうしたイメージの具現化が試されるシリア戦は、アジア杯の悔しさを晴らす意味でも重要な一戦となる。シリアはアジア杯決勝トーナメント1回戦で、イランと延長PK戦の死闘を繰り広げた難敵。今回は日本戦の結果次第で2次予選敗退の危機に瀕しているため、高いモチベーションで臨んでくることが予想される。
日本にとっては何もかかっていない一戦という見方もあるが、南野の中にそうした考えはない。「今年最初にはアジア杯で悔しい経験もしし、そういう意味でシリアはすごくいい相手。ああやってシンプルに前にプレーしてくる相手に対して僕らが解決策を出さないといけない。相手も必死にくると思うし、アジア杯では死に物狂いで来る相手にのまれた部分もあった。自分たちにとってただの消化試合ではない。しっかりと勝ちにこだわってやれれば」と並ならぬモチベーションで臨む構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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Source: サッカー日本代表
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