[6.15 インターハイ神奈川県予選準決勝 相模原弥栄高 1-2(延長)東海大相模 等々力]
“上手いだけじゃない”東海大相模が全国切符獲得! 令和6年度全国高校総体(インターハイ)神奈川県予選準決勝が15日に川崎市のUvanceとどろきスタジアム by Fujitsuで行われ、東海大相模高が3大会ぶり4回目の全国大会出場を決めた。公立の相模原弥栄高と対戦した東海大相模は延長戦の末、2-1で逆転勝ち。決勝進出と2枠の全国大会出場を果たした。
東海大相模は後半終了直前までリードされる苦しい展開だった。だが、繋ぐことを徹底して相手の足を止め、勝つために身に着けてきたタフさも表現。難敵を乗り越え、全国切符を勝ち取った。
相模原弥栄は、3回戦でプリンスリーグ関東1部の桐蔭学園高を撃破するなど公立勢で唯一の4強入り。インターハイ出場歴を持つ弥栄西高、関東高校大会に出場した弥栄高の歴史を受け継ぐ公立校は、コンパクトな陣形で相手のビルドアップを引っ掛けて速攻を繰り出した。
前半17分には、10番レフティーMF桑本暖(3年)のDF背後を突くパスでFW西村駿(3年)が抜け出したが、前へ出た東海大相模GK一坂新(2年)が阻止。だが、25分、相模原弥栄はスーパーゴールで先制した。中央の桑本が判断を変えて左サイドを展開。そして、FW橋爪櫂(3年)の落としを西村が右足ダイレクトで狙うと、ボールは鮮やかな弧を描いてファーサイドのネットへ吸い込まれた。
スタンドの同級生たちにも後押しされた相模原弥栄が、見事な一撃でリードを奪った。一方の東海大相模は、攻撃時に右SB森安南翔(3年)が中盤でビルドアップに参加。「中盤で話し合って、もっとしっかり受けて、距離感を近くしてっていうのは話し合ってました」という司令塔のMF長井隆之介主将(3年)やMF深澤蒼(2年)、森安が距離感近くボールに係わり、MF高畑旺崇(3年)の展開含めて相手を押し込む。失点後、ビルドアップのテンポを上げ、ゴール前では1タッチパスを交えた崩しにチャレンジした。
だが、長井が「(相模原弥栄は)僕たちが繋いでくるのにもしっかりついてくるし、左右に揺さぶるんですけれど、しっかり全部ついてくるんで、こじ開けるのはすごい大変でした」と振り返ったように、相模原弥栄はMF光安櫂里(3年)らが運動量を維持しながら対抗。相手の脅威になっていた西村やFW北村恒晴(3年)が奪い返しから、鋭くゴールへ向かってFKを獲得するなど、ストロングポイントを活かしながら2点目を目指した。
東海大相模は後半12分、CB石井龍翔(2年)の縦パスで交代出場の左SH小林正樹(3年)が一気に抜け出してシュートへ持ち込む。また、中央からサイドへ開いていずれも推進力のある左SB佐藤碧(3年)や右SH辻将輝(3年)、小林正がサイドから仕掛け。両ウイングは相手DFラインに並ぶような形で構え、背後を狙うような素振りを見せる。
だが、一本のロングボールに頼るのではなく、石井とCB塩田航央(2年)から丁寧なビルドアップを徹底。有馬信二監督は「(スペースのある)前に出たいんでしょうけど、『それを絶対するな』『徹底的に下でやるぞ』って言っていました」。サイドから中への崩しを読まれてクリアされるシーンが増加。それでも、グラウンダーで繋いで崩すことにこだわった。
相模原弥栄は後半20分、交代出場FW松本泉爽(3年)が左サイドを突破。クロスを西村が合わせるも、東海大相模GK一坂が阻止する。相模原弥栄は後半半ば以降、足を攣らせる選手が増えてしまう。その中でCB原田泰地主将(3年)ら4バックや交代出場選手を含めて各選手が身体を張って守っていたが、東海大相模はFW小林晄也(3年)をボランチへ落としてシンプルにボールを動かしながらプレッシャーを掛け続ける。
サイド攻撃やセットプレーからゴール前のシーンを増加。そして、終了間際にゴールをこじ開けた。後半40分、交代出場FW戸川昌也(2年)が左サイドからロングスロー。ゴール方向へ向かったボールを小林晄が頭で合わせて同点に追いついた。相模原弥栄は現校名で初の全国大会出場直前で痛恨の失点。桑本を中心にとした攻撃で再び勝ち越しを狙ったが、次の1点も東海大相模が奪った。
延長後半5分、東海大相模は、攻守両面で存在感を放っていた沖本が中央でキープ。延長後半から投入されたFW佐藤瞭成(3年)へパスが渡り、縦突破を図る。これがDFのファウルを誘い、PKに。このPKを沖本が右足で左隅へ流し込んだ。有馬監督が「(怪我人が出ていたこともあって)B1(チーム)から一番のスピードスターを上げて。(起用した理由は)ここで仕掛けたら何かあるかなと。ですから、『絶対に仕掛けろ』と。(結果に結びついて)良かったです」と評した佐藤瞭の活躍によって2-1。東海大相模がタフなゲームを制し、3大会ぶりの全国大会出場を決めた。
これまで技術力、判断力で勝負してきた東海大相模だが、今年は以前と異なる取り組みにチャレンジ。有馬監督は「今までやったことのない走り込みをやって。ボールトレーニング、ウエートやってボールトレーニング、 それをもう徹底的にやったんです」と説明する。年明けには遠征を行わず、空いた学校グラウンドで1日中トレーニング。また、金曜日に茨城県の波崎へ移動して土日の朝7時から砂浜を走り、広いコートでの1対1など強度の高いトレーニング後にまた走るといったことも行ってきたのだという。
有馬監督は「タフになんないと。上手いだけじゃ絶対勝てないと思ったんで」。血液検査も実施。父母にも協力してもらって不足しているエネルギーを補い、食事量も増やした。中には7kg増量した選手も。指揮官は「上手い選手が走れて、タフになればというのが今年のチームのほんとに目標というか。変えたかった」。県1部リーグでは決定力不足で開幕5連敗。それでも、今大会は強化の成果を発揮した。
4月のキャプテン就任から少しずつチームをまとめてきたという長井は、インターハイの目標に「優勝」を掲げた。そして、「自分たちのいいところって言ったら、繋ぐところなんで。綺麗なサッカーを見せつつも、そういう走り合いでは負けないっていうことを意識してやっていきたいなと思います」。16日の決勝(対桐光学園高)も勝って、神奈川1位になることも目標。“上手いだけじゃない”東海大相模が全国大会で過去最高成績の2回戦を大きく更新し、上へ勝ち上がる。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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