[6.16 インターハイ茨城県予選決勝 鹿島学園高 2-0 明秀日立高 ひたちなか市総合運動公園陸上競技場]
鹿島学園が前回全国王者を破って茨城タイトル奪還――。令和6年度全国高校総体(インターハイ)茨城県予選決勝が16日、ひたちなか市総合運動公園陸上競技場で行われ、鹿島学園高が昨年度日本一の明秀日立高を2-0で撃破。2年ぶり10回目のインターハイ出場を決めた。
表彰式後、鹿島学園の選手たちはメーンスタンド前で控え部員、父母たちと記念撮影。その後、大興奮の選手たちはスタンドの黄色いユニフォームと一緒になって喜びを爆発させた。昨年は3連覇のかかったインターハイ予選、4連覇のかかった選手権予選でともに敗退。特に夏は、宿敵・明秀日立が日本一になる姿を悔しさを抱きながら見ていた。
MF濱口聖主将(3年)は、「去年はインターハイも、選手権も取れてなかった中で、自分たちが(今大会)始まる時にも『全国は絶対行くんだ』っていう気持ちがあって、そういう話を何回もしてきた」。その強い思いをぶつけて前回の全国王者を撃破。「明秀日立さんを倒して全国に行くっていうのは、周りの期待の大きさもそうですし、自分たちの波にも乗れるっていうのは話し合ってきたので、一段階目のチャレンジが成功できたのは大きかったです」(濱口)。目指してきた明秀日立撃破とタイトル奪還を全員で喜んだ。
前半、4日前の準決勝同様に風下を取った鹿島学園は、守備を重視した戦い。明秀日立が主導権を握る展開となった。5分、左サイドへの展開からMF尾上陸(3年)が連続でのキックフェイントでマークを外し、クロス。このこぼれ球をMF柴田健成(3年)が右足で狙うが、鹿島学園の注目GK佐藤稜亮(3年)が反応してストップする。
鹿島学園はFW山本葵(3年)、FW中川輝琉(3年)の強力2トップへボールを入れてシンプルな攻撃。押し返す力を持つ2人を活用するが、明秀日立のボールを握る展開が続いた。相手を見ながら攻める明秀日立は、柴田やMF阿部巧実(3年)がマークを落ち着いて交わしてチャンスメークする。
そして、10番の注目MF竹花龍生主将(3年)が1タッチでのシュートやラストパス。だが、17分にカウンターからのチャンスを相手CB齊藤空人(2年)に阻止されたほか、ゴール前で身体を投げ出して守る鹿島学園DFの前に得点することができない。
鹿島学園は前半終盤までのシュート数が0-7。それでも、プラン通りに試合を進めたチームが1チャンスをものにする。前半40分、鹿島学園は右サイドでボールを受けた山本がターンして強引に突破。さらにカバーしたDFのタックルをかわして一気にPAへ侵入する。そして、GKとDFの間へ出したラストパスをMF山入端琉海(3年)が1タッチでゴールへ流し込んだ。
鹿島学園はこれが前半のファーストシュートだったが、鈴木雅人監督も「クロスの上げる場所と入る場所がドンピシャで繋がっていた」と称賛したファインゴール。体調不良で準決勝を欠場していた山入端が、先発復帰戦で大仕事をしてのけた。
鹿島学園は、後半6分にも山本を起点とした攻撃から10番MF松本金太朗(2年)がラストパスを通す。これを中川が狙うが、明秀日立CB菅野一葵(3年)がブロック。逆に明秀日立は7分、10分とゴール前のコンビネーションからシュートへ持ち込むが、鹿島学園CB畠田凉聖(3年)にシュートブロックされるなどチャンスを活かすことができない。
鹿島学園はMF西川大翔(2年)がセカンドボールの回収含めて奮闘。後半13分には個の力で相手エースMF竹花からボールを奪い取った。その西川とダブルボランチを組み、鋭いアプローチを連発していた濱口は、「奪うことができなくても、(2人で)相手に嫌なことをするっていうのは日頃からやってたので、そこは活きたと思います」。また、最終ラインで齊藤が能力の高さを発揮していたのに加え、右SB文平千陽(3年)と左SB清水朔玖(2年)も対人守備で強さを見せる。
明秀日立は21分、左サイドの尾上がDFを剥がして中央へパス。柴田の落としをFW保科愛斗(3年)が狙うが、このチャンスも活かすことができない。逆に後半、攻撃時の距離感が向上した鹿島学園は、25分にスーパーゴールで追加点。左SB清水が左中間で松本からのパスを受けると、ベンチからの「打て!」という声に呼応するように右足を振り抜く。素晴らしい弾道を描いたミドル弾がゴール左上隅に突き刺さり、2-0となった。
明秀日立は昨年のインターハイで後半の飲水後に抜群の強さを発揮。静岡学園高戦や青森山田高戦で決勝点を挙げている。0-2とされた後、前線に高さを加えて反撃したが、この日は相手GK佐藤の好守にあうなど終盤の強さを示すことができなかった。萬場努監督は「ゲーム全体はうまくコントロールしたけれど、(ゴール前の)肝になるところ。そこはもっとやらなきゃいけない」とコメント。鹿島学園は攻められる時間の多い展開ではあったものの、ゴール前の攻守や勝利への執着心で差をつけるなど2-0で勝利した。
鹿島学園の鈴木監督はプリンスリーグ関東1部で東京Vユースや横浜FMユース、浦和ユースなどと対戦してきたことの効果を口にしていた。年代別日本代表選手たちとの対戦による経験値は大。加えて、指揮官は「あとは、(選手たちが)ほんとによく戦術的に言ったことをちゃんと理解していた」と頷いた。
茨城県勢は昨年のインターハイで明秀日立が初優勝。茨城県選抜として鹿島学園の清水、齊藤、MF木下永愛(2年)も出場した国体少年男子の部では、44年ぶりの優勝を果たしている。また、鹿島学園の現2年生は昨年12月のU-16全国大会(ミズノチャンピオンシップ)で初優勝。鈴木監督は「茨城県が今、上昇気流なんで、(インターハイでも)頑張っていきたい」と語り、濱口も「一番は全国制覇することですし、自分たちのサッカーが通用できるかを確認っていうか、チャレンジできる場でもあるんで、そこをチャレンジどんどんしていきたいと思います」と力を込める。
前年度優勝校が所属する茨城県の代表校、鹿島学園はインターハイにシード校として出場する。まずは、プリンスリーグ関東1部の戦いでまた基準を高め、成長すること。そして、1年前、明秀日立の姿を見て刺激を受けたというチームが今夏、全国舞台で躍動する。
(取材・文 吉田太郎)
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Source: 大学高校サッカー
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